これからはしばらく鳩について、書き進めて生きたいと思います。

　　鳩、もともとは兄がどういうわけだか、夢中になって始めたもの
　　です。鳩の専門の雑誌があるのですが、『鳩友』だか『鳩の友』
　　だか、そんなような名前です。

　　たぶん兄の友達に、鳩を飼っている人がいたのでしょう。
　　きっとレース鳩にあこがれたんだと思います。

　　さてその、なんと言う名前だか忘れてしまった雑誌、そこには鳩
　　の愛好家たちが、投書するスペースがあります。
　　そこには譲ります、探していますような情報が書かれてあって、
　　そこに鳩を譲りますのコメントが載っていました。しかも、ヨー
　　ロッパで優勝した血筋を引いている鳩だそうです。

　　そして何よりも兄を興奮させたのが、その愛好家の家が近かった
　　のです。近かったと言っても、まだ車の免許とか持っている年で
　　はありません。当然自転車での行動がせいぜいです。

　　その自転車で一時間くらいでしょうか？
　　と言うことで鳩を譲ってもらうことになりました。
　　譲ってもらうと言っても、ただではありません。
　　当たり前ですね、由緒ある血統つきの鳩なのですから。いくらし
　　たのかは知りません。

　　兄とわたしともう一人、わたしの友達だったような気がしますが、
　　その３人でその愛好家のところに行きました。
　　愛好家と言っても、年はたぶん２０歳くらいではないでしょうか？
　　もしかしたら、高校生くらいかもしれません。

　　色々な説明を受けて、もちろん血統書も見せてくれました。
　　鳩も見せてくれて、そして多分２羽だったと思うのですが、もら
　　ってきました。

　　どうやって持ってきたのか覚えていません。鳥かごとか持ってい
　　ませんでした。
　　でも覚えていることが一つ。

　　帰るときになって、いきなり雨が降ってきたのです。
　　しかもかなりの量です。
　　しばらく雨がやむのを待っていたのですが、なかなかやみそうに
　　もありません。

　　そうしたらそこのお父さんが、農機具小屋みたいな所にわたし達
　　を連れて行きました。いい忘れましたが、このお宅は農家です。

　　そして中から、紙袋を持ってきました。
　　大きさは、２０キロ入りのお米の袋と同じくらい。

　　なんの袋かとよく見てみると、何とか肥料と書いてあって、どう
　　やら化学肥料か何かが入っていた袋のようです。
　　その袋の横の部分を切り開き、底の部分も真ん中辺を切り開いて、
　　わたし達に底の穴から、首が出るようにかぶせました。腕は横の
　　穴から出します。

　　あんまり遅くなると、暗くなってしまうでな。

　　と言いながらかぶせてくれます。心配してくれているのでしょう
　　が、その袋の内側には、まだ肥料の粉みたいのが付いていて、鶏
　　の餌のような匂いがします。

　　こんなのかぶって、大丈夫かしらん、と不安に思いながらも断る
　　わけにもいかず、されるがままでした。
　　さらに頭には、多分畑で使うビニールでしょう、その古くなって
　　ちょっと色が変わってしまっているのを、それぞれつけてくれま
　　した。

　　そしていよいよ出発です。
　　本当は外したいけれど、親切を踏みにじるわけにはいかないし、
　　それに雨はまだ降っています。
　　なんだかんだいっても、その即席の雨合羽は役に立ちました。

　　それによく目立ったみたいです。
　　横を通る車が、みんなこちらを見ていきます。
　　そりゃあそうでしょうね。

　　自転車に乗った３人組が、雨の降りしきる中、大きな茶色の紙袋
　　をかぶって走っているのですから。
　　しかも頭には、変な風に色が変わってしまった水色のビニール袋
　　を巻きつけています。
　　ウルトラＱだと思うのですが、それに出てきたジャミラそっくり
　　だったのではないでしょうか

　　こうして無事に、我が家へと鳩を連れ帰ることができました。



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