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2011.04.19
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カテゴリ:植物
一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第083話 「金 果」

 西遊記(さいゆうき)は、中国の明代の小説で、1570年頃に呉承恩によって執筆というか書き留められたというのが定説ですが、当然のように異説もあれば内容が多少異なるバーションが複数存在します。

 その理由として考えられるのは、庶民で文字が読めない人が珍しく無かった時代に、欧羅巴でいえば英雄譚や恋愛の話などを語りながら旅をした吟遊詩人、日本で言えば平家物語などを語りながら旅をした琵琶法師のように、物語を何幕かの寸劇にしたてて旅をした人達がいたことと無縁では無いようです。

 そうした寸劇の最高峰が京劇なのかもしれませんが、やはり京劇を見に行くとなるとお金も時間も必要なため庶民にとっては敷居が高く、村の広場などで旅芸人がしばらくの間滞在して連続活劇を演じては次の目的地に向かったわけです。

 西遊記は100話の連続する小話の集合体になっていますから、好きな人が多い地域では3~4ヶ月かけて演じることもあったのでしょうし、その中から人気のあるハイライトだけつまんで演じることもあったと考えるとわかりやすいかもしれません。

 西遊記の話の内容は、こんなところで書かなくても既に御存知の方の方が多いとは思いますが、唐の時代に三蔵法師玄奘(さんぞうほうしげんじょう)が、仏教の経典を求めて印度まで三匹の従者と一緒に旅をするといったことになります。

 そして、その三匹の従者というのが、石から産まれた猿の孫悟空(そんごくう)、前身は天の川の天蓬元帥で仙女の色香に迷って下界に落とされた猪八戒(ちょはっかい)、近衛兵の大将で天帝の身辺警護のために身近に控えて御簾の上げ下げをしていたことから捲簾大将(けんれんたいしょう)と呼ばれていた沙悟浄(さごじょう)ということになります。

 ある意味、一番可哀想なのが沙悟浄で、天帝の側近中の側近がなぜに河伯(流沙河の水怪)と化して旅人を襲って食べ、当初は三蔵法師御一行にも襲いかかるところまで身を落としたのか?というと、天界における蟠桃会のおりに、天帝の宝である玻璃(るり:ガラスですな)の器を手を滑らせて割ってしまったというだけの罪で天界を追われたからだったりします。

 逆に言えば、天帝にとって、長らく天帝警護の最後の盾として職務に励んでいた沙悟浄には玻璃の器ほども価値が無かったということで、日本で言えば皿一枚と命が引き替えになった番町皿屋敷のお菊さんの話を連想しないでもありませんが、三蔵法師御一行に加わって天竺を目指すことで沙悟浄と猪八戒は最終的に救済されることにはなります。

 ちなみに、3匹の従者の中では、主役の孫悟空の人気はわかりやすいところですが、日本人には意外なことに、中国では猪八戒が怠け者で食いしん坊で異性に目がなくて失敗する人間くさい欠点から失敗を繰り返すことで、下手をすると主役の孫悟空よりも人気があるのですが、そうした孫悟空と猪八戒の舎弟コンビに対して、エリート崩れでも元来、堅物の沙悟浄の人気は今ひとつだったりします(笑)。

 もっとも、3匹の怪物従者にとって、本来の能力を使えばその日の内に天竺に着いてしまう計算になるのですが(笑)、単なる人間である三蔵法師は途中から馬(といっても竜王の息子の変化ですが)に乗って移動するようになるものの、基本的に徒歩で移動しますから遅々として進まず、旅の途中で81匹の妖怪・怪物などを退治するロードムービーの要素も含む大河ドラマになってしまいます。

 冒頭に書いたように、1570年頃に呉承恩によって定本が出るのですが、それ以前から、時には天帝さえ脅かすほどの圧倒的な戦闘力を持つ3従者でさえ時には神仏などの助けを借りないと勝てないような、(中には実在する地域や地名もある)各地の怪物退治をしながら旅を続ける話は、元の頃には既に民間説話として広まっていたものが元ネタになっていることが多いそうで、それらが次第に一つの物語に集大成されたわけです。

 中国の四大奇書の一つですが、日本では江戸時代に”通俗西遊記”として(何しろ長編ですから)ダイジェスト版が読まれるようになったのですが、完訳本は1960年に太田辰夫、鳥居久靖によって世に出ることになります ・・ が、全編を読んだことのある日本人は意外と限られるようです ・・・ かなり説教臭い仏教説話みたいな気が私はしましたが。

 ちなみに、中国の四大奇書は明清時代に流行した通俗小説から選ばれる事が多いのですが、清の李漁が選んだ”西遊記”、”三国志通俗演義(三国演義)”、”水滸伝”、”金瓶梅”というのが定番になっています。

 が、元代だと”三国志通俗演義”、”水滸伝”に戯曲版の”西廂記”、”琵琶記”で元代四大奇書ということになりますし、選者によって何を四大奇書とするかには諸説あります。

 日本では孫悟空の人気が圧倒的で、渡来して以降、さまざまな劇や映画、ドラマなどになったり、元ネタとして流用されるようになるのですが、漫画の”ドラゴンボール(鳥山明)”の元ネタになったことで、”ゆとり~君”世代でも断片的には知っている子が珍しく無い古典ではないかと(笑)。

 ま、実のところそのあたりはどうでもいい話で、今回のお題と絡むのは、沙悟浄が下界に追放されることになった蟠桃会って何?というあたりの話で、早い話、歌舞音曲を楽しみながら、蟠桃という桃を食べて楽しむ(天界のお偉いさん達の)宴会とでもいったことになります。

 一応、蟠桃(ばんとう)は下界にも存在する中国原産の桃ですが、その形状から座禅桃と呼ばれることもあり、日本ではポピュラーな丸い桃ではなく、美しく言えばハート形のような、あっさりかけばひしゃげたような独特の形状をしていて、樹で完熟させると確かに天界の食べ物という説に説得力があります。

 西遊記において、天界に役職を求めた孫悟空は馬の番人が嫌だとごねて蟠桃園の管理人となり、園の中でも9000年に1度だけ実る蟠桃の大半を食い散らかして(本人は単に美味しそうで暇だから食べただけですが)不老長寿になり、一つ食べただけでも寿命が延びる貴重な蟠桃の大半を盗み食いされたことに激怒した天帝側と大乱闘を繰り広げるのが冒頭のハイライトになります ・・・ 冷静に考えると天帝が一番修行が必要な気が私はしますが(笑)。

 人間界における蟠桃は、幾つかの系統があるようですが、日本に伝来して主流になっている蟠桃は上海水蜜桃を起源とする品種が多いようで、その形状などから一般の市場流通に乗せにくいため、農家が身内で食べるために少量栽培したり、産直で販売する程度なのですが、”知る人ぞ知る美味さ”だと私は思っています。

 天界においては、そもそも西王母が住むとされる崑崙山で栽培されている桃とされることから、王母桃、仙桃も蟠桃を意味するのですが、普通は(十分に普通でない気もしますが)三千年に一度だけ実を結ぶとされ、食すと千年の長寿が得られるともされるのですが、それ故に、九千年に一度だけ身を結ぶ蟠桃はレアでプレミアが付く更なる長寿を得られるようですが、それを孫悟空に3つ程盗み食いされて激怒した天帝たちは ・・・ そもそも、不老不死の連中なだけに、やはりオトナげない(大笑)。

 以前に、1-88”桃”の回で少し触れたことがありますが桃は薔薇科の落葉果樹で、樹高は3メートルくらいになる(日本の果樹園では、作業がしやすいように2メートルくらいに押さえる矮化栽培が主流)で、桜の花よりも少し前の3月中頃から4月初旬に淡紅色の花をつけて、6月中旬~8月下旬に成熟します。

 日本にもやや小粒な野生種の桃が古くからあり(日本の野生種は丸いのですが)、黄泉の国へ死んだ伊耶那美を迎えに行った伊耶那岐が、約束を違えて後を振り返って妻の変わりようを恐れ、黄泉平坂(よもつひらさか) で伊耶那岐が縋って追ってくる伊耶那美と黄泉軍に桃を三つ投げてを追い返し、石で道を塞いだ壮大な夫婦喧嘩の話は有名 ・・・ というか何度か収録していますから常連さんは御存知の通り。

 この世で栽培されている現在の日本の栽培種は、明治になって中国から輸入された水蜜桃と日本の野生種などをかけわせたり、突然変異を選別しながら改良したものが多く、大久保、白桃、倉方早生などの有名品種は日本原産種と中国の水蜜桃とのハイブリッドという品種も珍しくありません。

 ただ、陶淵明(365~427)の”桃花源記”で知られる桃源郷の伝説は日本には伝播することが無く、中国特有の奇譚と日本ではされているのですが、中国の仙境といわれて連想する代表格でもあり、地続きで一般人でも何かの偶然で到達可能と考えられるあたりが中国らしいといえば中国らしい楽園かもな~と思わないでもありません。

 で、金果ですが、陰陽五行の金気の結集したものという解釈でもいいのですが、桃の異称として知られ、特にだらだら書いてきた天界の蟠桃を意味することが多いようですが、厄除け植物として古来愛用され、鬼門の方角に植えると災厄から逃れることができるという説に人気があります。

 中国古典では、”左伝”だと”桃(とう:逃避の逃に通じることから)は凶から逃れしむ所以なり”だそうですし、”周礼”の”桃氏、剣を為る”から”桃(とう)=刀(とう)”に通じて厄除けの効能を期待できるとしたようですが、俗説では、蟠桃の色や形状が女性の(自主規制)に似ているところから、下の毛の護符に見られる危難除けの効能を期待し、桃という漢字が兆を含むことから発展運などを期待したようです。

 例によって、知っていても何の役に立つのか我ながら良く分からない話ではありますが、今回はここまで。

初出:一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第083話:(2011/04/13)





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Last updated  2011.04.19 00:25:16
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