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2013.03.15
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カテゴリ:宗教
一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第659話 「魔女の大鍋」

 小説や映画などの影響か、魔女といえば何かを大鍋でぐつぐつと煮込んでいる印象があり、魔女の家の暖炉には、大鍋が吊されていると書いてもさほど違和感を持たない人の方が多いかも知れません。

 しかしながら、冷静に考えれば、魔女に限らずスープやシチューの類を根気よく煮込んだりするために暖炉に大釜を吊している家の方が主流だった地域の方が欧羅巴では多いわけですから、大釜を暖炉に吊していれば魔女の証拠というわけでは無いと言えます。

 今となっては、電子レンジや電気調理器など火を使わない調理器具も普及していますし、そもそも自分で料理を作らない人が都市部を中心に珍しく無くなって、台所には鍋に限らず調理器具の類が無く、食器にしても珈琲カップかガラスのコップがある程度という状況が珍しいとは言い切れなくなっていたりしますから、暖炉や囲炉裏に吊された大鍋で何かをコトコト煮込む光景の方に違和感を持つ人も珍しく無くなっているかもしれません。

 奇妙なもので、大半の人間は自分こそが世界の中心で、自分の日常生活や主義主張、価値観といったものは世間一般と比べてさほど異端では無いと考えていることの方が多く、いつの間にか世間の流れに取り残されて少数派に転落しているとか、大半の人が自分の主義主張に同調しないとかはあまり考えないか、かって多数派を形成していた自分の方が少数派に転落していると認めたがらないところがあります(笑)。

 ちなみに、魔女達は大釜を使って、魔女の秘薬というか毒薬や媚薬の類を作っていたとか、魔神や悪魔の類に生け贄を捧げるときに犠牲者の喉を掻き切ったり腹を裂いてから鍋に放り込んで煮たり、生きたまま鍋に入れて溺死させたりするときにも使われたという説もあります。

 魔女達の夜会であるサバトにおいても、魔女達は持参した鍋で乳幼児を煮た ・・・ という話があるのですが、乳幼児は丸焼きにされて皿に盛られて食されたたという説もあって諸説紛々としていて、実際のサバトではどうだったのかというのは定かではありません。

 ソモソモ論で言えば、魔女裁判などで被告人なった女性に拷問などを駆使して自白を強要し、それも自分たちが書いた物語に基づいて自白を誘導していったところがあるため、サバトの実態がこうだったというよりも、サバトはこうでなければならないという当時の聖職者の観念論的な思考が産み出した光景と言えなくもないわけです。

 もっとも、大鍋で人を煮る行為そのものは、基督教が欧羅巴で普及する以前の紀元前1世紀頃には行われていたようで、1891年にデンマークで発見された銀製の大釜などに犠牲者が大釜に投げ込まれている(としか思えない)装飾が施されていたりします。

 そう考えていくと、魔女と大釜の元になる話は、ケルト民族やゲルマン民像などの宗教や風習に遡ることになるのですが、その場合は、ケルトの伝承に登場するケリドウェンが所有する魔力を持つ大釜の話あたりが該当することになるようです。

 ケリドウェンが魔女なのか女神の類なのかは立ち位置によって異なってくると思いますが、彼女が所有している大鍋で、1年と1ヶ月の間、根気よく材料を煮立てると”智恵”と”霊能”と”学識”を得ることができる秘薬が調合できるとされています。

 彼女は醜い外見で産まれてきた息子のために秘薬の調合を思い立ったとされ、鍋をかけている火を絶やさないことを盲目のモルダに、鍋を定期的にかき混ぜることを小人のグウィオンに命じるのですが、完成したか完成間近だった秘薬が数滴ほどグウィオンの指にかかってしまい、それを舐めたグウィオンは智恵などを得て逃げ出してしまいます。

 鍋をかき混ぜる役が逃亡してしまったこともあって、鍋はまっぷたつに割れてしまって秘薬は駄目になってしまうのですが、当然のようにケリドウェインは激怒して逃げたグウィオンを追いかけて落とし前を付けようとします。

 そこから先は、西遊記における孫悟空と天界軍との闘争に似ていなくもないのですが、グウィオンが野兎になって逃げるとケリドウェンは犬になって追いかけ、グウィオンが魚になって逃げるとケリドウェンは獺(かわうそ)になって追いかけ、グウィオンが小鳥になって逃げるとケリドウェンは鷹になって追いかけ、・・・、最終的にグウィオンは小麦に擬態してやり過ごそうとするのですが、それを見破ったケルドウェンはグウィオンが化けた小麦を食べてしまいます。

 もっとも、この話にはオチがあって、しばらくするとケルドウェンは身に覚えのない赤ん坊を産むことになり、産まれた赤ん坊がグウィオンの生まれ変わりだったということになっていたりします。

 宗教を問わず、糸を紡いだり機を織ったりするような被服関係の作業をしている女神の話は珍しく無いのですが、神様というのは食事というか調理をしない存在と考えられていたようで、意外と、どの神様が調理を司っているのかがはっきりしない神話体系が珍しくありません。

 オリエントというかアラブ圏の文化が欧羅巴に伝わる際には、文字だとアレキサンダー大王の東征の頃から(大王が征服した地域の多くで公用語とされた)ギリシャ語に翻訳されることが多く、後に羅馬帝国が世界帝国になって以降はギリシャ語だけでなくラテン語に翻訳されて欧羅巴に広まることも多くなっていきますというか、次第に(当時の欧羅巴人にとっては)国際的な公用語としてラテン語の方が主流になっていったのは御存知の通り。

 羅馬帝国が滅んだ後もラテン語が生き残り、学問の分野などで未だに影響力を残しているのは不思議な気もしますが、広い範囲で異なる言語を母国語とする人達が知識や情報を共有しようと思えば共通言語というか公用語があった方が便利なのも確かな話で、さまざまな軋轢を考えれば、既に滅んだ国家の言語を使い続けるという選択もある意味では無難な選択なのかもしれません。

 話を戻すと、ギリシャ神話の中で大鍋に関係がありそうな高位の神となると、オリンポス12柱の一柱でゼウスの姉であるヘスティア(Hestia)あたりに辿り着くのですが、ヘスティアは一度も下界に降りたことのない女神でゼウスの館で炉の番をしているとされる程度で、さほどエピソードは多くありません。

 ただ、古代ギリシャにおいて炉は一家の中心というか家の中心にあり、その炉を司る神とされたことでヘスティアは家族の守護神という神格も付与されていったようで、子供が産まれると彼女の前へ連れて行くことで家族の一員と見なされるようになり、食事の前後にヘスティアへの供物を捧げていたとされています。

 ヘスティアは男嫌いだったのか結婚を嫌い、ギリシャの神様らしくポセイドンやアポロンなどから求愛されたという話もありはしますが、ゼウスに”永遠に処女であること”を願い出てゼウスが許可して以降は色恋沙汰からも遠ざかっているようです。

 まあ、下手に旦那を持たなかったことで聖母の立ち位置を手に入れることになったと考えられなくもないですが、ギリシャ神話が成立する頃のギリシャにおいては、それぞれの”家”の延長上が”国家”ですから、家族の守護神が国家の守護神になることにさほどの違和感も無かったようで、ヘスティアの神格には国家安泰の女神という側面を加えられていきます。

 実際、オリンピックでお馴染みの聖火も、本来は新しい植民地が建設された際に、本国で政治的な会議が行われていた場所でヘスティアに捧げるために絶え間なく燃やしていた炉の火を聖火として移すのが常だったあたりが起源という説もあり、大半のギリシャの町ではヘスティアに捧げる炉を作って炉の火が絶えないように管理していたとされています。

 ちなみに、ヘスティアにまつわる炉の火を絶やさない風習は、羅馬だとベスパ信仰に継承されたようですが、基督教を国教とした際に、従来の多神教の宗教集団への財政援助を止めたり、基督教徒による他の宗教や宗教施設などへの迫害や破壊を黙認したことで羅馬が建国されてから絶えることが無かったベスパの炉の火が絶え、その直後に羅馬は建国時に”ベスパの炉の火が絶えるときに羅馬も絶える”と預言されていた通りに、東西に分裂した後、それぞれ滅んでいったという話は以前に少ししたことがあります。

 逆に言えば、炉の火を信仰することは基督教側からすれば異教の宗教儀式の象徴でもあったわけで、魔女と大釜がセットにされるようになったのも、国家の守護神という立ち位置だったヘスティア信仰やベスパ信仰をいかに貶めるかという策動と無関係だったとは考えにくいところがあります。

 もちろん、火を崇拝し信仰するということでは、拝火教(ゾロアスター教)あたりが辿り着ける中では最古の宗教になるのですが、黎明期の基督教にとってゾロアスター教は、欧羅巴で信者を獲得する際に既存の宗教から信者を切り崩す最大の対象であり、かなり際どいやり方で侵食していったのではないかと考えられます。

 まあ、庇を貸して母屋を盗られたのかどうかは定かではありませんが、ファン倶楽部程度だった当時は新興宗教に過ぎない基督教勢力にとって、既存の宗教団体の中で最大級となっていたゾロアスター教の体制を参考にして自らの組織を整備し拡大していたとしても不思議は無いと(私は)思います。

 不思議なくらい、ゾロアスター教と初期の(特にカトリック系の)基督教の関係に関しては口を濁す人が多いのですが、当時の情勢を考えると良くも悪くも無関係であったわけが無いだけに、邪推の苗床としては興味深いことになっています。

 なお、魔女の大鍋とされるものには丸底ではなく脚が付いているタイプもあり、それこそ竈の中に直に置いて調理していた鍋もあると考えられますが、日本で大釜とか大鍋といえば、海水を煮詰めて塩を採取する際に用いたのが始まりというか主要な用途で、奈良時代の頃には直系が1メートル60センチを少し越えるような製塩用の鉄釜が用いられていたようですが、遡れば縄文式土器の中に海水を煮詰めて製塩するために用いられたと考えられるものが出土していたりもします。

 もっとも、塩は聖なるものだから、魔女達は料理に塩を使わないという話もあるのですが(笑)。

(2013/02/28)





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Last updated  2013.03.15 07:25:22
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