『句集 遅日の岸』
『句集 遅日の岸』・村上鞆彦 ・ふらんす堂 〜1979年生の俳人。2015発行 「中学校のころに俳句を知り、以降、十代、二十代、そして三十五歳の 現在に至るまで、俳句を手放さずに続けてきた。その間の作品より325句を自選』しての一巻。「はしめての句集」で【水尾の端遅日の岸に届きけり】から採り「深い安息といくらかの郷愁とが生 まれ帰るべきところに帰ってきたような懐かしい気持ちになる。ー (しかし)私のなかに潜む古さや感傷的なものへの甘えに因るところが大きいようだ。そのことを自覚した上で、これから新たな歩み を勧めてゆきたいと思う。ー」〜 「光を映した水が静かにたゆたう岸辺」のような句、好きだ。中でも「鳥』などの句を〜・水鳥の水尾のうしろになにもなし ・六月の風に楽譜が落ちてある ・裏山に小鳥着てゐる講義かな ・鳰の岸ジーンズの紺褪せて立つ ・どの実にも色ゆきみちて実むらさき ・あんぱんのあんのつめたし百千鳥 ・春近し人形に敷く小座布団 ・口々にもの言ふ雀 雛祭 ・きさらぎの鳥まつすぐに木へ入りぬ ・降ってきて雀なりけり春の土 ・われにかへりて 葭切のこゑのなか ・笹鳴きの止みたる笹の葉擦れかな ・鶺鴒がとぶぱつと白ぱつと白・雀みな梢を下りて梅雨夕焼 ・あたたかや川面に鷗岸に鳩… この位に、他の句集にも比して鳥の 句が目をひきます、、、そうそう、装幀は 間村俊一氏。 もう少し〜・鳥の恋蝶ネクタイの運転手夏欅その下蔭の日曜日・日曜も反日過ぎし ・こぼれつつえごは5月を送る花 ・どくだみの花 もそよぐといふことを ・半夏生水にふれつつ白蛾とぶ ・水尾消えてまたさざなみの小春かな(読了・24/1)