晴　陶　句　読

[俳句＆本紹介] カテゴリの記事

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  かんな　／　『けむりの居場所』

  あらあらと背丈抜かれし花カンナ －－－－－『けむりの居場所』 　　　・野坂　昭如　　　・幻戯書房 ～昭和４０年から今も続いている、ＪＴ協賛『週刊文春』の「喫煙室　くつろぎの時間」に寄せられた各界著名人のタバコにまつわる珠玉のエッセイを、闘病中の野坂氏が編集｡野坂氏は２００３年断煙しているが、今も現役で喫煙中の方もいれば、もともと喫わない方、すでに故人となられた方（が多いが）たちが、時代背景のなかでの喫煙経験を綴っている｡開高健・市川崑・杉浦日向子・東海林さだお・岩城宏之・サトウハチロー・吉行淳之介など３２名｡野坂氏のまえがきから「煙草はまさに人間の営みそのもの｡喜怒哀楽、それぞれにつきまとう｡行間からたちのぼる紫煙を追えば、これぞ至福の時｡煙草はすばらしい｡この本は、煙草に捧げるオマージュである｡」・・・祈、健康回復！

  2007.07.19

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  のうぜんかずら　／　蜂飼耳　　　

  定家より狂気の色濃き凌霄花 －－－－－『空を引き寄せる石』 　　　・蜂飼耳　　　・白水社 ～ハチカイ　ミミと読むのですね！　書名の「石」と著者名から中国か台湾のひとで囲碁の本かと 思ってしまいました｡　さらに１９７４年生の妙齢の女性であり、読み進むうちに、この若さでの文学への入り方とその造詣の深さ、そして繊細な筆使いというか、若さのなかに老練さが混じったような詩的表現に、参りました｡　しかも、先日の『うつつ・うつら』の著者と同年生・・・・・「若い人たち」をイッショクタにしてはいけないのだ｡ 身辺雑記のエッセイ集だが、中勘助・深沢七郎・木山捷平・石原吉郎・一茶だのが出て来るうえ多方面の本が引用されての博識ぶり、はたまた「薄荷味」なんて・・・ホントニ　７４年生？？

  2007.07.17

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  台風の被害はありませんでしたか？

  颱風に酔ふアオスジアゲハ楠に生ふ・・・好きな表現方法ではありませんが「颱風」～「かぜ」と読んでやってください・・・－－－－－『うつつ・うつら』 　　　・赤染　晶子　　　・文藝春秋 ～「初子さん」と「うつつ・うつら」の小説ニ篇｡ 日々”事実は小説より奇なり”の日常となってこのかた、小説はトンと読まない者が言うことでは ないのだろうが、今の世でいう小説というのは、この本のようになっているのだろうか｡ 　ショーセツの世界にまでヨシモトが入り込んでいるのか！と思ったのだが、きっと読む側の浅で、きっと底流に深いものが流れているのにリカイフノウなのだろう・・・・｡プロフィールに「本書が第一作品集となる気鋭の新人」とあるのだが・・・｡

  2007.07.15

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  落（楽）書き　／　『回り灯篭』

  梅雨曇り道路のチョーク絵通りゃんせ －－－－－『回り灯篭』 　　・吉村　昭　　　・筑摩書房 ～これまでの著作エピソードや、作品の背景となった土地や生まれ育った下町・学習院・夫人の津村節子さんとの日常までもが描かれたエッセイ集、巻末には故城山三郎との対談も｡その対談から吉村　「・・・今や、朝起きるといつも幸せだなと思うようになった｡」（中略）城山　「なんかもう宗教みたいだね、しあわせ教だね｡」芥川賞が決まったと伝えられたのに、ニ作受賞不可ということになり受賞できなかったことに対しても、吉川　「選考会で評価されたんだから、ありがたいなと思った｡幸せだなと思ったよ｡」（笑）城山　「偉いねぇ｡何か、ありがたい人のお話をきいているような気がしてたな｡やはり、しあわせ教つくって、教祖らしいことしてよ｡僕も入るから（笑）」と、言っていた城山さん、しあわせ教ができなかったからなのか、鬼籍に入ってしまった・・・・

  2007.07.13

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  初蝉　／　『おしゃれに｡男』

  蝉掴む少年の掌に戻りけり★７／８の夕方から”ひぐらし”が鳴き始め、にいにいぜみが屋根に墜ちていました｡－－－－－『おしゃれに｡男』 　　　・内館　牧子　　　・潮出版社 ～今や、「ダンディ」という言葉さえ色褪せてきた感がするが、著者が挙げる「ダンディな人」１５人との対談集｡ 著者のことだから、花田勝・北の湖とか相撲関係が多いのはやむを得ないが、アトは舟木一夫・見城徹・いとうせいこう・古橋広乃進等に加え、橋田寿賀子・北斗昌の女性二人も｡ 　まぁ､人間誰もがそれぞれの人生の中で耐えながらも、今があるのであろうが、著者の眼にかかった「長く生きて来た男にのみ漂う精神的深さ、渋み、たたずまい」に惹かれた代表であろう｡逆にその正反対とは「知性というものがまるで感じられない｡場の空気がまったく読めず、自分の社会的地位や経済力や学歴や、いかに女にもてるかなどの自慢」するオトコと断ずる。それって、男からみてもサイテーでしょ｡　「ダンディズムとは知性である｡」・・ソノトオリ！村松友視との対談では、非日常に日常を持ち込んでしまう風潮もヤリダマにあげていて喝采！

  2007.07.11

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  タチアオイ　／　『デザイン　サーカス』　／休業

  なにくはぬ顔して待つや立葵 －－－－－『デザイン　サーカス』　　　　・文と絵　梶本博司　　・ラトルズ～「ただただ母親が寮母として住み込みで働いていた」宝塚で、生を得て「デザインにすくわれた」自分史｡（１９５５年生）　「発明的なことが好きで、デザイン的なことが好きなのでこうしているけど、今のところデザインが発明を背負い込むのが自然と思っている｡」という姿勢で「デザインという炭鉱」を「枯れる不安も抱え」つつ「掘りつづけている」・逆開きの傘　・テトラパッカー　・くしゃ缶　・吹きメジヤー　・ど根性発電など等の「知恵デザイン」にカンシンするというかアキレル、まぁデザインの原点だろうが｡★★明日から1週間ほど、山での作陶にはいりますので、勝手乍ら「開店休業」させていただきます｡

  2007.06.28

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  夏雲　／　『からだのままに』

  スタンデイングオベーシヨンなり夏の雲 －－－－－『からだのままに』 　　　・南木　佳士　　　・文藝春秋 ～カンボジア難民の医療支援中に、第５３回文学界新人賞受賞し、その直後の処女作品集『エチオピアからの手紙』の「あとがき」から「最終行は西暦と季節、それに、信州佐久平にて、著者，というスタイルを墨守してい」る著者｡　その「信州佐久平」こそが、陶窯の在所であり当峠を下りれば、著者の「佐久総合病院」があり、作品中の自然を共にすることができることから、一層の親しみを持たざるをえない｡「この小さな本に収録したエッセイはここ三年間に発表したものだが、読み返してみるとおなじ題材のくり返し使用が目立つ」が、「いまではくり返しを恥ずかしいは思わなくなった｡ほとんどがおなじ行為のくり返しである日々の生活を書くので、妙な虚構をたくらむほうがよほど不自然ではないかと、なかば開き直っている｡」　多くの患者の死にかかわりながら、自身のパニック障害ともたたかいながら、医師と作家の両立させながら「まだなんとか生き延びている｡」著者の目にこれから何が見えてくるのか・・・｡

  2007.06.27

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  青葡萄　／　『ひたすら』

  あをぶだうここまできてもこれからが－－－－－『ひたすら』 　　　・福井　友栄　　　・講談社 ～１９８１年ノーベル化学賞受賞の福井謙一氏（1998年死去）夫人の「これはごく内輪の自分史的なものであり、いわば私の家族のための覚え書のような」日記風記録｡　　受賞前後の「騒動」から「ノーベル・ウィーク」のいきさつの中で、ふたりの普段が活写されていて、ほほえましくもありそのタイヘンさが伝わってくる｡　さらに、著者の「ローマの休日」や禅との出会いと教えにも触れ「事実を正確に書き留め」ている｡　「きれいな数式のために」のエピソードは、『博士の愛した数式』を地でいくような生活ぶりが描かれていて「夫が常に安定した雰囲気の中で、いつでも、考えを集中持続できる土台がいちばん重要だと感じ、それを作ろうとしていた｡」そんな「家庭運営」をし「リビングの一隅では夫は自分の世界に自在に没入していた｡それは生涯変わることがなかった｡」とまで打ち明けている！

  2007.06.26

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  孑（ぼうふら）　／　『さいでっか見聞録』

  『ぼうふり』といふ句集届く夏座敷 －－－－－『さいでっか見聞録』　　　・富安　陽子　　　・偕成社～「オビ」→「爆笑エッセイに　書下ろしエッセイが加わり　おかしさおもしろさが大増幅｡」「小さいときの思い出などを語りながらも　関西在住の作家ならではの　一人二役のぼけとつっこみコントがちりばめられています｡」　小学４年生頃、書く側に目覚めて２５年、メアリーポピンズの物語と「現実の境界をこえ」ることなく「自分の立っているところから歩いていける物語の世界」を歩みつづけている著者｡「わたしにとっていつも」「物語はいつだって、日常の中から始まり、日常とともにある｡」　「ぼけとつっこみ」などとオビでは言っているが、その筆致はやさしさにあふれ、詩情ゆたかでさえある｡　たとえば「絹の雨降る頃」での最終行では、「昔を思い、祖母を思い、あたりまえの毎日がちょっぴり愛しくなる｡　雨の季節である｡」と結んでいて、全編通してこころがなごむ楽しい本である｡

  2007.06.25

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  どくだみ

  十薬や咲ゐて香月の絵の深き ・・「香月」～香月泰男－－－－－『上田暮らしは　明日もきっとにぎやか』 　　　・北澤　チヨ甲　　　・文芸社 ～当窯のある地元の隣、上田市在住の著者が綴る日々のつれづれ｡ ・山は楽し　・山は美味し　・上田暮らし　の中で、近隣の登山の道行きや近隣の仲間と蕗採り、 ワラビ狩・きのこ採りなどのエソピソードが元気に楽しく語られる｡－－－－－★6/19～映画『ゾディアック』・・６９年？米国での未解決連続殺人事件｡　この事件に最も引き込まれてしまった者は？？人間ドキュメントでもある・・・

  2007.06.24

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  ねじばな　／　団鬼六

  文字摺草恋のほつれの避雷針 －－－－－『快楽なくして　何が人生』 　　　・団　鬼六　　　・幻冬舎新書 ～幻冬舎らしい、「新書」起用と書名｡「現在、私は７５歳、末期の腎不全を患っていますが、人工透析を拒否して、もう処置なし、病院から見放されています｡」というのだが、どうしてどうして、「そこで今一度、快楽について考えてみよう」というのだから！ ・快楽教団の構想　・怠惰、放蕩は遺伝　・変質者第一号　・女性の純潔と魔性　・不倫天国と愛人論　・堕落の美学・・と「章」を挙げただけでもその意気や今だ盛んで「変態の館」を夢見る｡ 　兼好法師の「徒然草」を引用しつつ、青年時代から病気の現在のなかで貫いてきた快楽主義を語る「自叙伝」｡ 　「私は文学なんて嫌いだから快楽的自叙伝でなければなりません｡」と、言いのけて憚らない｡

  2007.06.16

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  石榴咲く　／　『愛犬幸福論』

  何喰ふて人の肉とや花ざくろ －－－－－『愛犬幸福論』 　　　・ＰＨＰ ～”犬を愛する名文家　３５人の私的エッセイ” 名文家は、小川洋子・高橋三千綱・落合恵子・浅田二郎・夢枕獏・野坂昭如等々の愛犬家たち｡ 亡くなった諸井薫や久世光彦氏などもふくまれていての、犬バカぶりが展開されるが、作家達の人間関係図もところどころ明らかになって、案外狭いツナガリを知ることにもなった｡

  2007.06.13

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  花卯木　／　『戦争をくぐり抜けたおかっぱ少女の　ごきげんよう　パリ』

  卯の花を腐し大雨注意報－－－－－『戦争をくぐり抜けたおかっぱ少女の　ごきげんよう　パリ』 　　　・福岡　澄子　・講談社出版ｻｰﾋﾞｽｾﾝﾀｰ ～１９３６年大連で生まれ、１９３８年父親の転勤でフランスに旅だつた著者が”戦争”から逃げ 延びて行く経過と時代背景が、当時の少女の視線と日常から淡々と綴られる｡ 　その間、フランスからドイツ、ドイツからロシア大陸を横断し、１９４６年日本に帰り着くが、各国のふつうの人々との労わりあいや生活ぶりから、「三つの祖国」の目を持つにいたる｡ 戦争が「自然」の顔をして、日常の生活にしのび寄ってくる様子とどのように”作られて”いくか、戦争から逃げることの苛酷さと惨状が”分かりやすく”語られている｡　パリへの憧憬も！「この大戦で多くの人々の人生が失われたり歪められたしたが、幸運にも私は今もこのように生きている｡人は一人では生きていかれない｡」「少しでも役に立つ人間として人生を全うしたく」「体験を書き残したく思った｡」という一冊｡

  2007.06.10

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  花栗　／　『文学の花しおり』

  栗の花大波小波過去の波－－－－－『文学の花しおり』 　　　・森　千春　　　・毎日新聞社 ～「豊かで美しい自然に育まれて、多くの名作を生み出してきた」近現代の日本の作家や詩人６３人の作品とその心情、作品にまつわる花を採りあげ、作者の人柄にも迫る｡ 　例えば、・大岡昇平と百合　・庄野潤三と薔薇　・水上勉とアケビ　・瀬戸内寂聴と蘭　・南佳士とススキ　・鷺沢萌と桜　・中上紀とハイビスカス・・・・など。 　松尾芭蕉と合歓木では、【象潟や雨に西施がねぶの花】が結びつく｡ 　”わが”立原正秋には、『白い罌栗』からケシをあげてくれているが、小生としては何が何でも、”水仙”としたいところ｡　李朝の壺に百本の水仙・・・・｡ しからば、林真里子だったら、あなたは何の花をとりあげますか？

  2007.06.08

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• ころもがえ　／　『花　四季の詩想』

  かうやってこのままおはる更衣－－－－－『花　四季の詩想』 　　　・饗庭　孝男　　　・幻戯書房 ～「大津、彦根、湖西と移り住」んだ幼少期、パリ留学の日々、奈良・京都への旅や現居住地界隈までに出会った花の数々のうち２４の花にまつわる讃歌、詩・短歌・俳句も交えつつ、格調高い珠玉の文章に圧倒される！　～写真もその花の真髄と雰囲気を捉えて｡「不死の花　-水仙-・ネーデルランドの花　－クロッカス－・無の充溢　－薔薇－・・・・」など｡　「重要なことは花を見、花を賞でて、花に耐えることなのだ｡　生きることとは無限に惹かれてもそれに耐えることなのだ、と西行は言っているように思われる｡」「花の姿は変わらないけれど眺めている人の心や身体は変わってゆく｡　自然はそのように私たちの心をとらえ、かなしませるのである｡」などのことばに魂は揺さぶられ続けてしまう一冊！

  2007.06.06

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• 蝙蝠　／　『いっぽん桜』

  かうもりに嘘をついたのなぶられる－－－－－『いっぽん桜』 ・山本　一力　　　・新潮社 ～最近の若い作家や新人たちの”ショーセツ”にウンザリしていたので、これでスッキリ！ いっぽん桜・萩ゆれて・そこにすいかずら・芒種のあさがお　の４篇｡ 山本周五郎に通じる下町・人情・時代もので、現代ものに通じるところでは内海隆一郎を彷彿とさせる｡　ささくれだつ心の襞が解きほぐされていく”一力ワールド”が嬉しい！

  2007.06.03

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  緑雨　／　『うたの　おくりもの』

  あじさいや雨のうぶ声滲み入る－－－－－『うたの　おくりもの』 　　　・姜信子　　　・朝日新聞社 ～「果ての島」・辺境の地に被差別者たちがひっそりと歌いつづける”うた”を探す旅で見たものは｡ 　今の日本が隠し意識的に葬り去ろうとしている過去の事実を露わにし、「人と人の信義」によっ てこそ「止まった時間を温かく溶かす術を知」る事になる｡　サハリンで西表でタイペイ・豆満江・・で｡ 　「アリラン　アリラン　アラリヨ・・・」「それは民家を借りあげた急ごしらえの慰安所で、兵隊たちが入れかわり立ちかわり、わたしの飢えに乗っていきました｡　ヒトリ、フタリ、サンニン、ヨニン、ゴニン、ロクニン・・・、数えることをやめた時、わたしの名前は消えてなくなり、そのうち命の火もかき消えて魂が抜け出た体は荒地に無造作に埋められ」やがて日本の敗戦「軍人たちは、都合の悪いものを隠すようにこっそりと、無人の離れ小島にわれわれを捨てた｡　われわれは飢えて病んで息絶えた｡」　そんな小島に、「天皇の軍隊により人間の尊厳を奪われ　無念の死をとげたアントン丸の人たち　慰安所で汚辱にまみれ死亡したばばはるさん（中略）人間の尊厳を脅かす一切の権力を永遠に許さない為　この碑を建立する」と書かれた、「留魂之碑」があるという・・・｡

  2007.05.25

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