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アクロディーテを出た私達は途中キュロス城下町を経由して4日程かけてカサンドラへとやってきていた。
そこはとても静かで時間がゆったりと流れてるように感じる町並み。町の中央部分には大きな噴水が見え。その周りでは町の人達が数人集まって話をしているのも見える。 「ここがわたくしの住んでいたカサンドラですわ、静かでよい所でしょう」 「確かに落ち着いた感じで過ごしやすそうな町ですね、とてもアセトが住んでいたとは思えないほどです」 「う~ん・・確かにのどかな感じで良い所だとは思うんだけどよ・・私はやっぱり城下町とか港町みたいに活気あふれた場所の方が好きだな」 「私の住んでたヴァイデヴィレッジも田舎~って感じの所だったけど、ここも随分と素朴というか、何というか・・」 「ヴァイデヴィレッジ・・行った事はありませんけどセラが住んでいたような場所ですわ、大体想像がつきますわね」 「あ~・・何か普通に牛とか馬とかそういうのが放牧されてそうだよな」 「そ、それ・・どういう意味かな?」 「特にこれと言って意味はありませんわよ?」 「うぅ~・・何か馬鹿にされてるような気がするよ・・・・」 「それで、アセトの家はどこにあるんですか?」 「お~っほっほっほっほ、あそこですわ!」 右手を口元に持ってきて大きく高笑いをしながら村の奥の方を指差すアセト。 私達はアセトが指差した方を見てみたんだけど、そこには物凄く大きく外から見ただけでも入るのをためらってしまいそうなお屋敷と、その横には小さな平屋建ての家が数件並んでたよ。 アセトの様子を見る限り、あっちのお屋敷のようにも見えるけど、まさか・・・・ねぇ? 「あのでっけぇ家の隣にある小さな家がそうか?」 「アセト、そうですよね!?そうだと言って下さい!!」 「ま、まさか・・あのおっきいお屋敷・・・・な、わけ・・ないよね?」 私達の反応を見ると、アセトはむすっとした表情をとってくる。 「貴女方の目は節穴ですの!?その横の大きな家に決まってますでしょ」 「あぁ、あのでっけぇ屋敷の一部を間借りしてんのか、それなら納得だぜ」 クレッシルの言葉に私とミハイルは頷き、そんな私達をみてアセトは、はぁ・・と大きくため息をついてからこっちをじ~っと見つめてきた。 「貴女方はどうしてもわたくしがあそこの家のお嬢様だということを認めたくないみたいですわね・・いいですわ!それなら直接行って驚くといいですわ!」 私達はアセトに連れられて町の奥にあるその大きなお屋敷の入口まで来ていた。 「な、なぁ・・アセト・・・・いくらこの町出身だからって、他人の家に入るのはどうかと思うぞ」 「まぁ、顔見知りなら怒られるってことはないでしょうけど・・」 「まだそんな事を言ってますの?まぁ、見ててなさいな」 アセトは一呼吸おいてからその大きな入口を手でコンコンと叩き、しばらくするとギギギッと音を立てながら扉が開き、そこには数人のメイドさんが出迎えてくれていた。 うわぁ、私メイドさんなんて初めてみたよ・・・・ 出迎えてくれたメイドさん達はアセトの姿を見ると「お帰りなさいませ、お嬢様」最敬礼をしながら、そう言ってたよ・・ 「ただいま戻りましたわ。お父様とお母様は今日は在宅してますの?」 「旦那様と奥様は今自室におられます」 「そう、ありがとう。少し挨拶をしてきますわ。さ、セラ達もどうぞおあがりになって下さいな」 アセトに勧められて私達も屋敷の中に入って、グルグルと中を見回して見た。 「うわぁ・・外から見ても凄く大きいと思ったけど、中はもっと広く見えるよぉ。アセトって、すっごいお嬢様だったんだねぇ」 「ぷっ、くくく。アセトが、アセトがお嬢様って、そりゃねぇぜ!お嬢様ってぇか、女王様だろ」 「アセトはもうお嬢様って歳でもない気がしますけど・・・・」 「何か、カサンドラに来てから失礼な事ばかり口にしてますわね、そろそろ認めたらどうなんですの?」 「ま、まぁ・・百歩譲ってアセトがここのお嬢様だって事は認めてやるか」 「えぇ、まさか本当にアセトがここのお嬢様だったなんて、思ってもいませんでした」 お屋敷の中には高そうな壺や絵画、彫刻が沢山並んでるよ・・私達は感嘆の息をもらしながらその中の一つに近寄ってみたんだけど・・ 「あぁ、家の中にある壺とかにあまり触らないようにして下さいまし、ここに飾ってあるモノはどれも美術的価値の高いものばかりですから、多分貴女方が一生働いても稼げない位ですわよ。ちなみに、その壺の値段は・・・・」 私達はその値段を聞いてドン引きしたよ・・・・そ、そんなに高いモノなんだ・・こんな壺一つで20万Gって、ありえないんだけど(汗) 私達小市民はそこに飾ってある壺とかを壊さないように気をつけながらアセトの後をついて歩き、しばらくすると1つの部屋の前にたどり着いた。 「お父様・お母様、わたくしですわ。ただいま戻りました」 アセトがドアを叩いてから、そう言うと中から男性の声で「アセトか、開いてるぞ。入れ」と返事があったから、私達はドアを開けて中へと入ってみた。 中に入るとそこにはタキシードを着た優しそうな中年男性とその横にはドレスを着たとてもモノ静かそうな婦人が部屋の奥のソファに座っていた。 「アセト、無事帰ってきてくれて嬉しく思うぞ」 「長旅で疲れたでしょ。そこに座って・・って、あら?そちらの方たちは?」 「こちらの方々はわたくしが魔法の山を登っていた時に知り合い一緒に旅をしてる仲間ですわ。皆さんあの七大英雄をご先祖に持つ方ですわ」 「それはそれは、娘が世話になっている。私はここの家の当主スルト=シジルという」 「娘がお世話になっています。私はアセトの母でフレイ=シジルと申します」 二人は立ち上がり娘よりも若い私達に対して、丁寧なお辞儀をしながら自己紹介をしてきてくれたから、私達も各々自己紹介をしてお辞儀を返した後、スルトさんとフレイさんの前に対面するような形でソファに腰掛けたんだけど、スルトさんは部屋の中でも全くマントやターバンを取らないクレッシルに気付いて、にっこりとほほ笑みながら声をかけてきた。 「クレッシルさんと言ったか、そんな格好をせずとも、どうせ今ここには我々しかいない、その顔を覆ってるモノとマントをとってくつろいでくれ」 「いや・・でも私は……」 「キメラだから、常人とは違う見た目を持つから・・ですかな?そんな事気にする必要は全くないぞ」 そこまで言われてマントをとらないのは失礼だと思ったのか、クレッシルはその体を覆っていたモノを外し、ソファにかけそれを見たスルトさんは満足そうにうんうん、と頷きこっちを見てくる。 「さて、ここに戻って来たということはアセト。グリモアは見つかったのか?」 「いえ、まだ完全には見付けてないですわ」 「完全・・には?」 「魔法の山にあったのは、グリモアの片割れ、闇の書だけでしたのよ。それでグリモアが真の姿・力を取り戻すには、もう一つ対になった光の書を探し出さないといけないそうなんですの」 「なるほどな。グリモアは二つに分かれていたのか。実はアセトが旅に出た後、私の方でも色々と調べてみたんだが、アセトが調べに行った魔法の山の他に、ダークエルフ達がいる集落の近くにある洞窟にもグリモアがあるという事がわかったんだ」 「ダークエルフ達がいる集落・・・・ですの?」 「うむ、そうらしい。しかし、これで納得がいったな。最初私は、どうして魔法の山以外の場所にグリモアがあるのか不思議に思っていたが、なるほど、二つに分かれていたというのなら、そっちに光の書があるのかもしれんな」 「それでお父様、そのダークエルフの集落というのはどこにありますの!?」 「すまない、そこまではわからなかった。だがここの大陸ではない事は確かだ」 「何ですのそれ・・お父様ったら肝心の所で役に立たないですわね」 「まぁそう言うな、それがわかっただけでも充分だろ」 「そうだよアセト、今まで全く手掛かりがない状態だったけど、ダークエルフってキーワードがわかっただけでも十分だよ」 「そ、そうですわね・・そう言う事にしておきますわ」 そして、その後私達は旅であった事とかを話しながら時間を過ごしていた。 第16話 忍び寄る大きな影 その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年09月12日 10時26分26秒
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