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ヨインヘルム大陸を出てレテ大陸に向かい始めてから数日目。
最初はみんなで交代しながら船の舵を取ってたんだけどね・・・・クレッシルはその力で舵を壊しそうになったり…… アセトが舵を取るとさ、変な方向に進んでいっちゃったんだよねぇ。 そんなわけで、舵取りは私。ミハイルは私の隣で航海士の代わりを。そしてクレッシルとアセトがその他の雑務を行うという形に自然と落ち着いていた。 「う~ん。今日も良い天気だねぇ」 「そうですね、ヨインヘルム大陸を出てから数日、特に問題もなく進んでるのでこの分なら、あと数日もすればレテ大陸に着きそうですね」 「こうやって、自分たちの船で旅するっていうのも何か楽しいね」 「しかし、最初クレッシルとアセトが料理をすると聞いた時は、慌てましたが意外にも食べれる物が出てきてびっくりしました」 「あはは、そうだね。二人ともそういうのに無縁そうだったから不安だったけど、美味しいよねぇ♪まぁ、海の漢が作りそうな簡単メニューだけどさ」 「そうです、セラ。少し甲板に出て潮風でも浴びてきませんか?」 「あ、いいねぇ♪それじゃ、クレッシルとアセトの様子を確認しがてら、風にでも当たってこよっか」 早速舵取りをオートモードに切り替えて、ミハイルと一緒に操舵室から甲板に出てみたんだけどね…… 二人は船の縁に寄りかかって、ぐたぁ~って、寝てたよ・・・・ 「二人とも、な・に・し・て・る・の・かなぁ?」 まさかの二人の体たらく(?)に私とミハイルが表情を引きつらせながら、声をかけるとクレッシルとアセトはビクッ!って反応して慌てて立ち上がったよ。 「ち、ちちち、違うんだ!!」 「そ、そそそ、そうですわ!決してさぼってたわけじゃありませんのよ!?」 「何が違うんですか?どう見てもさぼってましたよね?」 背中から下げてるグングニルを手に持ってその矛先をクレッシルとアセトの方に向けると、二人は少し脅えたようにしながら私達の方を見てくる。 「掃除とか雑務は終わったのですわよ?ただ、こう毎日毎日、何もないと気が揺るんでくるんですのよ」 あ~・・確かに、海の上って何もないしねぇ・・アセトのその気持ちもわかるんだけど…… 「確かに、魔物も襲ってこないし、特に問題もなく順調に進んではいますが、だからと言ってそうやってダラダラとしてていいわけないですよ。まったく・・いつ魔物が襲ってくるかわからないんですから、もう少し気を張ってて下さい」 ミハイルの言葉に二人は「は~い・・」何て、元気なく答えてから辺りを警戒し始めた。 そんな二人の様子を見た後、私は縁の部分から身を乗り出し、下の方を覗きこむと船が水を切り、前へ進んで行るのが分かる。 その後、辺りをぐるりと見まわしてみたんだけど、私のようすを見たミハイルが声をかけてくる。 「どうしたんですか?セラ」 「あ、うん。別にどうって言う事はないんだけどさ、何か周りに何もないと本当に進んでるのか不安になってくるなぁ、って」 「大丈夫ですよ。私が太陽や星の位置を確認した限りでは、ちゃんとレテ大陸に向かって進んでいますから」 「ミハイルがそう言うなら安心だね♪」 「べ、別にこれくらい出来て当然ですよ」 私に安心だって言われて少し照れたのか、頬を軽く赤く染めながらそんな事を言ってきたんだけど・・当然って・・・・当然って・・・・そんな星の位置とかで現在地を確認するなんて芸当、ミハイル以外に出来ないような気がするんだけどね…… その後、私達は話をしながら辺りを警戒してたんだけどね、その時、ゴン!っていうか、プニョン。っていうか、まぁ何かにぶつかったのか、船が大きく揺れた。 「な、何々?今の衝撃!?」 「何かにぶつかった・・よな?」 「岩・・というには、何か不思議な感触でしたわよね?」 「とりあえず、見てみましょうか」 私達は急いで船の先端部分に行って、そこから身を乗り出して下を覗いてみたんだけどね・・そこには、大きなイカの魔物が、こぶを作って倒れてたよ・・ 「今の衝撃の原因はこれのようですわね。しっかし、大きいイカですわね。これ、何人前あるんですかしら?」 「えぇ!?こんなの食べるつもりなの!?あんまり美味しそうじゃないよ?」 「確かに大味かもしれねぇけどよ、ここ数日魚と乾物ばっかだったし、久々に他のもんが食えるぜ」 クレッシルが何か思いついたのか、手をポン、って叩いてからミハイルの方に振り返る。 「なぁミハイル、ちとパルチザン貸してくんねぇか?」 「別にいいですけど、何に使うつもりですか?」 訝しげな表情をしながらもクレッシルにパルチザンを手渡すと、クレッシルはそれを船の前でぷかぷかと浮かぶイカの魔物に突き刺して船の上に持ち上げようとしてるよ・・ 「う~ん、う~ん、こりゃかなりの大物だな」 「あの・・私のパルチザンは銛じゃないんですけど……」 その時、急にイカの魔物が起きて暴れ始め、突き刺さってたパルチザンが抜けて海にポチャン、って落ちてしまった。 「あ、あぁ・・私のパルチザンが……」 がっくりと肩を落として恨めしそうにクレッシルを見つめるミハイル。 「まぁ、どうせミハイルにはグングニルがあんだろ?別にこれくらいいいじゃねぇか」 その言葉を聞いたミハイルは、キッと睨みつけてから、クレッシルの鳩尾に肘鉄をお見舞いする。 「う、うぉぉおおおおおおおおおおおおお……ひ、久々に来たぜぇえ・・」 ミハイルの鋭い肘鉄を受けたクレッシルは、お腹を押さえながらしゃがみ込んだんだけど、何かこの場面懐かしい感じがするなぁ・・え~っと、確かハルトでこんな事あったよねぇ。 「ちょっと貴女達!今はそんな事してる場合ではありませんことよ!」 あ、そうだった。今はこの目の前にいるイカの魔物をどうにかしないとね。 第25話 船旅も楽じゃない その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年11月14日 01時03分24秒
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