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突然の私の来訪に驚きながらも快く家の中へ招いてくれたアザゼルおじさん。
「久しぶりだね、セラちゃん。前に会った時は、まだこんなに小さかったのに、随分大きくなって」 アザゼルおじさんは、右手を自分の腰の位置に持ってきて、あのころのセラちゃんは、本当人見知りが激しくて、困ったもんだよ。笑いながら、そう言ってきた。 「アザゼルおじさんは、その恰幅の良い体は、昔のままだよね。本当お変わりなく元気そうで」 「わっはっは、ここには妻の愛が詰まってるからね」 豪快に笑いながら、お腹をポンポンと叩いた後、アザゼルおじさんはほほ笑みながら私の方に問いかけてきた。 「それでセラちゃん、今日はどうしてここに来たんだい?もしかして、おじさんに会いに来てくれたのかい?」 「あ、うん。実はキャメロット王からアザゼルおじさんが、魔よけの鈴を持ってるって聞いたから」 私のその言葉を聞いたアザゼルおじさんは、笑うのをやめて真剣な眼差しを私達の方に向けてきた。 「確かに魔よけの鈴は我がグレゴリ家で護っているが、それが必要ということは、セラちゃん……」 「実は私達、今から魔王サタナエルと戦うために、リヴェラ大陸に渡ろうと思っているのですが、そこは悪しき瘴気が蔓延していまして、上陸するには是非その力を借りたいと思い、こうして訪ねさせていただいたのです」 鋭い眼光で私達を無言で見つめるアザゼルおじさんと、それに対して私達もじっと無言でアザゼルおじさんを見据えた。 「なるほど、嘘を言ってる目ではないようだな。しばらく待っててくれ」 アザゼルおじさんが席を立ち奥へ行き、そして戻ってくるとその手には小さな古びた宝箱が握られていた。 椅子に腰かけ、その古びた宝箱をテーブルの上に置いてその宝箱を開けると、そこには天使の装飾がなされ、紐のついた4つの鈴。 「これが魔よけの鈴だよ。この鈴にはオーディンの力がこめられていて、これを身につけていれば、悪しき意思に惑わされる事はないだろう」 アザゼルおじさんから魔よけの鈴を受け取った私達はそれをマジマジと眺める。 「これが魔よけの鈴・・何だね」 「何か、思っていたモノと少し違いますね」 「でも、確かにこの鈴からは強い魔力を感じますわ」 「その鈴を身につけていれば、リヴェラ大陸に渡っても瘴気に惑わされないだろう」 「ありがとう、アザゼルおじさん♪」 「何、セラちゃんの頼みだ、これくらいは別にいいよ。それよりも、リヴェラ大陸はとても危険な場所だと聞く。皆、気をつけていくんだよ」 「もとより死ぬ気なんてのはサラサラねぇぜ」 「えぇ、そうですわ」 「そうです、忘れないうちにこれを各自身につけておきましょう」 魔よけの鈴を各々好きな場所につけた後、私達はアザゼルおじさんにお礼を言ってから、家を後にして自分たちが乗ってきた船が停まってるハルトへと向かった。 ハルトへ着いた私達は、早速船着き場へ行ったんだけど、私達の船の所にディードリッヒさんの姿を発見、そして私達の到着に気付いたディードリッヒさんは、にこやかな笑顔でそれを迎えてくれた。 「おや、皆さん。キャメロット城での用はもう終わったんですか?」 「うん、ディードリッヒさん、今まで船を見てくれてありがとね♪」 「皆さんにはお世話になりましたしね、これくらいは別に。あ、そうそう!船の整備もしておきましたから、いつでも出発出来ますよ」 「を!わりぃな、そこまでやってもらっちゃってよ」 「それで皆さん、次はどちらへ行かれるのですか?」 「次はリヴェラ大陸に行こうかと思っておりますのよ」 「リヴェラ大陸!?まさか皆さん、サタナエルを倒しに!?いくら皆さんがお強いと言えど、そんな無茶な!絶対にやめた方がいいです!」 心配そうに私達にそう言ってくれたディードリッヒさんだったけど、だからと言って、行くのをやめるわけにはいかないよね。 「それでも、これはいつか誰かがやらねばならない事です。そして、それが出来るのは七大英雄の血を引く私達だけです」 「あぁ、もう誰かが悲しむ顔を見たくねぇしな、皆が笑顔で暮らせる、そんな世界を取り戻す為に、私達は行ってくるぜ」 「大丈夫だよディードリッヒさん。私達は絶対に死なないよ。サタナエルを倒して、ここにまた皆で戻ってくるね」 「それが彼女たちの最期の言葉であった・・その後、彼女たちの姿を見たモノは誰1人としていなかったのだった」 「アセト……何不吉な事を言ってるんですか?刺しますよ?」 「いたた、いたたたた!痛いですわ!既に刺さってますわよ!」 いつもより低めのナレーション風の声で物凄く不吉な事を口走ったアセトに対して、ミハイルは汚物を見るかのような目でアセトを睨みつけながら、グングニルでチクチクとアセトのお尻を軽くさしてたよ。 っていうか、本当・・今から向かうっていうのに、そんな不吉な事言わないで欲しいよ…… 「ちょっとした冗談ですわよ!わたくしだって、負けるつもりなんてサラサラないですわ」 「はぁ・・言っていい冗談と悪い冗談があるというの、知ってますか?アセト……」 深くため息をついてから、アセトを刺してたグングニルを納めるミハイル。 「それじゃ、私達は行くぜ♪ディードリッヒ、色々とあんがとな」 「僕からは、何もしてあげられませんが、皆さんが無事戻ってこれるように祈っています」 船に乗り込もうとした私達をディードリッヒさんが止めてきたから、何かと思って振り返ると、にこやかに私達に話しかけてきた。 「利き手を突き出して、お互いの手を叩き合わせるハイタッチという船乗り同士の挨拶何ですが、最後にやっていきませんか?」 そう言いながら、自分の右手を天に向かって高々と上げるディードリッヒさんに、私達は右手を突き出して、パーン!と、心地よい音を立ててハイタッチを交わした。 「それじゃあね、ディードリッヒさん」 ハイタッチを交わした後、私達は船に乗り込み、そして甲板からディードリッヒさんに手を振りながらハルトの船着き場から、ここより南にあるリヴェラ大陸へ向けて船を出したのだった。 第31話 魔よけの鈴 その2.終わり 第32話 それぞれの想い その1.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年12月26日 01時05分03秒
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