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カテゴリ:ベリルのドタバタ冒険記~五宝石編~(完)
天の村雲を握り、身構えてると。チャンの全身から淡いオーラのようなものが見えてきた。
「喰らえ、気孔弾!!」 叫びながら、右手を前に勢いよく突き出してきたもんだから、横へすっと避けてみたら、だな? 俺の元いた場所の後ろ側にある壁に大きな衝撃音と共に穴があいたんだよ。 「な、なんだぁ?」 「ほぇえ‥‥遠当てとか初めて見たよ」 「流石ですチャン先生!」 「へぇ・・・遠当てねぇ。だが、見たところ今の攻撃は何度も連発出来る代物でもなさそうだな」 「ふふん、俺の気孔弾は威力を落とせば、別に力を溜めずとも放つことが出来るぞ。このようにな」 不敵な笑みを浮かべながらそうチャンが口にして拳を前に突き出した瞬間だった。 「いってぇ・・・・・」 うん、いきなりの攻撃に回避なんて間に合うわけもなくてな?俺の腹にズシン、と衝撃が加わったんだわ。 だが、溜めなしでちょっと弱めボディブロー程度の威力か・・ちと厄介だな。 「どうだ恐れ入ったか。尻尾巻いて逃げるなら今のうちだぞ」 「は、誰が逃げるかよ」 「遠当てがある限り俺は無敵!つまり貴様は愚か、魔王サタンですら余裕だ」 「は?おめぇ何言ってんだ?サタンがどれくらい強いのか知って・・・いや、知らねぇんだろうな。そうじゃなきゃぜってぇそんな事言えねぇよ」 「ふん、魔族と戦ったことはないが、わかるぞ。俺にはわかる。俺が本気を出せば簡単に倒せるということくらいな」 何だコイツ・・・多少は腕が立つようにも見えるが・・・自分の強さに驕りすぎすぎだな。 こういった奴、俺イライラしてくんだよなぁ‥‥ どうせ、実際魔族達の前に出ると何も出来ねぇんだろうな。 ちとコイツにはキツイお灸を据えてやらねぇといけないかもな。 「お前は俺に近づくことは出来ん!!」 そう言ってから遠当てを連続で繰り出してきたチャンだったが。そんなに威力が強くないって分かってれば臆することはねぇだろ。 ちょっといてぇがそこは我慢だ。 遠当てを無視して一気に間合いを詰めてチャンの懐に入って入ってから、躊躇することなく俺は奴の首元へと一直線に天の村雲を振り上げた。 「ひ、ひぃいいいいいいいいいいい」 だが、俺の天の村雲は奴の首をはねることはなかった。ピタリと本当ギリギリの場所で寸止め。 チャンは自分の首筋に刃が突きつけられてるとわかると、顔を真っ青にそめあげガクガクと震えながらその場に腰砕けになった。 「おめぇは殺す価値もねぇよ。ほら、逃げるならさっさと逃げろよ」 天の村雲を鞘に収めて見下ろすと、チャンは小さく悲鳴を上げながらこの場からはいずるように逃げ出していった。 「さて、頼みの先生は逃げたみてぇだが、お前はどうすんだ?って、ありゃ?」 あれ、右目を眼帯で隠した男がいないんだが? 「さっきの人ならもうとっくにこの場から逃げてったよ」 「なんだそりゃ・・・」 「もうクリソプレズも盗ってあるから、後はエリーと合流しておさらばしよっか」 「ん、そうだな。そうすっか」 部屋から出て最初、俺達がこの屋敷に来た時に通されたアマンダラの部屋までやってきたんだがな? ん・・・・何か中からアマンダラの悲鳴が聞こえる気がするんだが・・・・キノセイか? 「はぁ・・・だよなぁ……こうなってると思ったんだよなぁ……」 「う~ん・・・あんまり中入りたくないなぁ‥‥絶対今中入ったらエリーのファイアボールとかの流れ弾を喰らうことになるよ」 「はぁ……そうも言ってらんねぇだろ。ほら、入るぞ」 恐る恐る扉を開けてみたんだがな?そこには目を疑う光景が広がってた。 だって、な?アマンダラは確かに悲鳴をあげてた。だが、それは怒り狂うエリーに対して脅えたものじゃなかったんだから。 「ったく・・・何であたしがこんな下賤な事をしないといけないのよ……あ~、もぉ。何でこんなのが良いのよ!とんだ変態だわ、この豚!」 「あ、あぁ、エリー様!も、もっとぉおお!もっとこの卑しい豚めに、鞭を愛の鞭を下さい」 目隠しに両手両足を縛られたアマンダラが床に転がり、それをすんげぇめんどくさそうに見下ろしながら足で転がすエリーの姿。 なぁ、もしかして全身にある傷ってよ、こういったプレイで出来た傷・・・だったのか? 「よ、よぉ・・・エリー」 「あ、ベリル!ジル!!やっときてくれたのね」 「ふふ、もうクリソプレズは盗り終わったから、ちゃちゃっとココから出ようか」 「はぁ・・・やっと解放されるのね。このド変態の相手するの本当疲れたわ」 呟きながら最後にアマンダラを思いっきり踏みつけてからこっちにやってきたエリー。 「しっかし、心配して損したな」 「何?あたしのこと心配してくれたの?」 「まぁ、一応な」 「ふ~ん、まぁ。心配してくれてありがと」 「さ、いこうか」 屋敷を出ると既に日は昇りきっていた。 アマンダラの屋敷を後にして、早速俺達は裏ギルドへとやってきていた。 「ふむ・・・確かにこれは本物のようだな。ご苦労だった。報酬金だ。受け取れ」 「ありがとうございます!」 「しかし、まさかこうもアマンダラの所から簡単にクリソプレズを盗ってくるとはな。お前達相当腕が立つようだな」 「あったり前よ!あたしにかかればこんなのちょちょいのちょいよ」 「そうだ、お前達の腕を見込んで他のモノがどれだけ挑んでも倒せなかった魔族の討伐依頼をしたいのだが」 「いや、俺達は先を急いでるんで、ちとパスさせて貰うよ」 「そうか、それは残念だ。だが、もし気が変わったらいつでも来るがいい」 「ま、そん時は宜しく頼むわ」 裏ギルドを後にして酒場に上がって外を見てみたら、な? 何だこりゃ・・・・ 「うわぁ・・・凄い数だよ」 「対応が早いわね」 うん、窓から外を見ると沢山の傭兵達がゾロゾロと町中を闊歩してたんだ。 「まさか、あいつら全員俺達を探してるのか?」 「かもねぇ・・・ま、うち達は傍から見たらアマンダラの所からクリソプレズを盗み出した極悪人だしねぇ。きっと賞金も掛けられてると思うよ」 「一体いくらの賞金がかけられたのかしら・・」 そういいながら、何故か俺とジルを見てくるエリー。 「なぁ、もしかして俺とジルを売ろうとしてねぇか?」 「さ、さすがにそれはない・・・・よね?」 「当たり前よ。仲間を売るなんて、あたしは絶対にしないわ。それよりも、こんな町にはもう用もないし、さっさとおさらばするわよ」 「んだな、金も手に入ったしさっさと出てプロイセンいくかぁ」 逃げるように俺達はマルトを後にして南はプロイセン目指して歩き出したのだった。 第26話 クリソプレズ奪還大作戦 その3.終わり 第27話 大魔導師オルロフ その1.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年05月13日 00時50分25秒
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