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カテゴリ:ベリルのドタバタ冒険記~五宝石編~(完)
エリーと初めて出会ってからどれくらいの日にちが経ったんだろう。まぁ、かなりの長い期間を共に過ごしてきたわけだが、そんな日ももう終わりをつけようとしてる。
ぶっちゃけ、コイツと出会い一緒に旅が出来たのは無茶苦茶だけど楽しかったと胸を張って言えるし、アイツも同じ気持ちならすげぇ嬉しい。 そうか・・・でも、もうエリーと一緒にいるのもこれで終わりなのか。 うん、マルトを出てから数日。俺達は途中ナハトという町を経由してやっとの思いでエリーの目的地である世界最強の大魔導師オルロフのいるプロイセンへとたどり着いたんだ。 「何だか思ったよりも静かな町なんだな」 うん、オルロフってヤツがいるくらいだし、もうちょっと魔法研究が盛んな賑やかな場所を想像してたんだが、俺達の目の前に広がるのは本当静かな町並み。 「そうだねぇ、のどかって言葉が似合うとこだよね」 「ここに世界最強って言われてる魔導師、オルロフってヤツがいるのね」 「あぁ、何はともあれココまできたんだ。無事弟子入りできるといいよな」 「うんうん、エリーなら彼の元で修行すればすぐに最強の魔導師の一角になれるっしょ」 「当たり前じゃない。あたしを誰だと思ってんのよ」 「あぁ、世界最強(笑)のエリーだったな」 「あ゛?何?あんた死にたいの?」 「へへっ、冗談だって。冗談」 とりあえずプロイセンの町をブラブラしてみたんだが、あれ?オルロフの家ってどこなんだ? 「オルロフの家ないねぇ。ここから外に出たっていう話は聞かないけど、家が見当たらないねぇ。どこなんだろう」 「町の一等地にでも家をおっ建ててんじゃねぇかと思ったが、違うっぽいな。どっか店に入って聞いてみるか」 近くにあった道具屋に入って店主に聞いてみたんだがな? どうやらオルロフは町の外れでひっそりと暮らしてるらしい。 道具屋でオルロフの家の地図を描いてもらってそれを頼りに彼の住む家へと向かっていき、そしてすぐにその場所へとたどり着いた。 そこは周りに何もない本当町の外れ。そして俺達の今目の前にはレンガ造りの平屋建ての小さな家。 さて、前にジルがまだオルロフは若いって言ってたがどんなヤツなんだろうな。まぁ、若くして最強の魔導師なんて言われてるくらいだ、きっと偏屈なヤツなんだろうが。 コンコン ノックしてから戸を開けて中を覗いてみると、そこには白いフード付のローブを着た薄い緑色の長髪のパッと見では優男にしか見えない男が1人。テーブルに魔導書を手に腰掛けていた。 「すんません」 声をかけると、その男は魔導書を閉じこっちに振り返ると無言で俺達を手招きしてきたんだ。 「あ、お邪魔します」 「邪魔するよ~」 俺とジルはテーブルに腰掛ける魔導師と対面になるように静かに腰掛けたんだが、エリーだけは何故かすんげぇ鋭く刺さるような視線で威嚇するかの如く男を見据えた。 「何だか見た感じ冴えない優男って感じだけど、あんたがあの世界最強の魔導師だって名高いオルロフなの?」 「世間ではそう呼ばれてますね。それで、僕に何か用ですか?お嬢さん」 「あたしはグリフォン大陸のハスデアっていう港町から遠いところ、わざっわざあんたの弟子になってやろうって来たエカ=テリーナって言うわ」 「ちょ、おま!?何そんな上から目線で言ってんだよ。普通に頼めよな」 「はぁ・・・僕の所に弟子入り、ですか」 まぁ、エリーのこの態度みりゃそんな反応するわなw てかな?ぶっちゃけ、普通に考えれば。何だその態度は!!って怒鳴られて家を即行で追い出されても何も言えないくらいなんだが。彼はそうしなかった。 「う~ん‥‥僕の所に弟子入りしたい、そう言ってココにやってくる人は沢山いますが、僕は弟子をとらない主義なんですよ。わざわざハスデアという遠いところから来てもらって申し訳ないのですが、お引取り願っても宜しいですかね」 「はぁ?弟子を取らない?そんなわざわざこんな辺境の地までやってきたのに、はいそうですか、って帰れるわけないでしょ!?あたしは子供の使いできてんじゃないのよ!」 バンッ! 思いっきりテーブルを叩いて身を乗り出すエリーをすげぇ困ったように見てくるオルロフさん。 てか、俺がオルロフさんの立場だったら間違いなくこんな奴即行で追い出してるわ。 ん、でもまてよ? 「あれ?なぁオルロフさん。俺のダチでデビって奴がいるんだけどよ。そいつと一緒に行動してるティムールはあんたの弟子だって言ってたはずだが」 「うちのティムールと知り合いでしたか・・・」 そこまで言ってからオルロフさんはポリポリと頭を軽く掻いて軽くため息を一つ。 「あの子も困ったものですね‥‥自分の事を弟子だなんて言うなんて」 「え?ティムールは弟子じゃないのか?」 「ん~・・・厳密に言うとちょこっと違いますが、彼女は僕の娘なんですよ」 娘?ティムールがオルロフさんの娘?いやいやいや、ティムールがいくつか歳はしらねぇが、一体いくつの時の子だよ。 まぁ、そんなことはどうだっていいか。 「オルロフさんに娘さんがいたなんて、うち初めて聞いたよぉ」 「娘でも弟子でもそんな細かいことはどっちでもいいわ。ティムールには魔法の事を教えて、あたしにだけ教えないとか不公平よ」 「いやぁ・・・不公平と言われましても。娘が望んだのだから教えるのは当然の事ですし。見ての通り僕は今引退して、ひっそりと暮らしてる身分ですからね。それに僕なんかのような若輩者が人様に教えを乞うとか、そんな大層な事出来ませんよ」 「なぁオルロフさん。俺からもこの通り、コイツを弟子にしてやってくれ。ちょっと我の強い部分もあるが、根は良い奴なんだ」 「うちからもお願いするよ。ねぇオルロフさん、エリーを弟子にしてあげて」 俺とジルが両手をテーブルに置いてお願いするとエリーも同じように頭を下げた。 「あたしもこのまま家に帰るわけにはいかないの!あんたが弟子にしてくれる、そう言ってくれるまであたしは梃子でも動かないわよ」 オルロフさんの口からは、はぁ・・・・観念したのか、特大のため息が一つ。 「わかりました。とりあえず頭を上げてください」 「やった!ということは、弟子にしてくれるってことよね!?ね!」 「いえ、今すぐ弟子にするというわけではありません」 「は?どういう意味よ」 「1つテストをさせて下さい」 「テスト?一体どんなテストよ」 彼は勿体つけるように大きく言葉を溜め、そしてゆっくりと口を開いた。 第27話 大魔導師オルロフ その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年05月20日 00時11分27秒
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