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カテゴリ:ベリルのドタバタ冒険記~五宝石編~(完)
「ベリル君!!」
ルシファーの支配から解き放たれ自由となったナディールは急いでベリルの元へとかけより、大粒の涙を零しながら今にも息を引き取りそうな状態のベリルを抱きかかえた。 「ベリル君・・・ベリル君・・・ごめんね、ごめんね・・・・・」 強く彼を抱きしめ、ボロボロと涙を零しながら、搾り出すように言葉をつむぐナディール。 「私のせいで・・・私のせいで……」 必死になって搾り出すナディールの言葉はその言葉以上に強い悲愴の念に彩られているように感じられる。 「な・・・なんだというのだ‥‥何故、何故このようなことが・・・ありえん、ありえんぞ……」 ポロポロと涙を零すナディール。そこから離れた場所で、ルシファーは理解できない、そんな感情がはっきりと見える表情を浮かべ困惑していたが、じきに何がおかしいのか、ルシファーは頭を押さえながら大きく笑い始めた。 「ふ、ふふふ・・・ふははははは。まさか器が自らの意思で我を拒絶し、分離してしまうとはな」 笑いながらルシファーはナディー・ジル・エリーをゆっくりと舐めるように眺めだし、そのルシファーに剣を握り構え見据えるジルと、キッとルシファーを強く睨みつけるエリーの姿。 「ルシファー!よくも、よくもベリルを!絶対に許さないんだからね!」 「あんたはこのあたしが倒してやるわよ、覚悟なさい!」 「くくく、いいぞ。いいぞ!その憎悪。もっと我を憎め、我へ怒りを燃やせ。その感情こそが我の原動力となるのだ」 「そう言ってられるのも今のうちだよ!すぐに引導を渡してあげるよ」 「かつて我を封じ込めた勇者、カリナン=トーマスならいざ知らず。どこの馬の骨とも知らぬ小娘どもに我が遅れを取るはずがない。かかってくるがよい」 「むかつくわね!いいわよ、そんな言うんだったらやってやるわよ!行くわよ!!フリーズアロー!」 超巨大な氷の矢がルシファーめがけ一気に飛び出していく。 「いくよ!!」 そして、そのエリーのフリーズアローを合図にルシファーの方へ飛び込んでいくジル。 「ふ、そんな初級魔法など我に効かぬ」 マントを自身の前に出しそれで身を隠すようにしたルシファーだったが、エリーの放ったフリーズアローはそのマントを貫いた。 「な、馬鹿な!?」 とっさに身を翻しフリーズアローの直撃を避けたルシファーへ更にジルの攻撃が襲い掛かる。 「くらぇええええええ!」 ジルの全力の横薙ぎ攻撃はルシファーの胸に大きな傷を作り、そこから血がポタポタと滴り落ちていく。 「ぐぅ・・・一度ならず二度までも我に傷を・・・許さん、許さんぞ!」 怒りに身を震わせるルシファー。 「死ね!バーンエクスプロージョン!」 右手を前に突き出すと同時にエリーを飲み込むように爆発が起きた。 「げ、マジックバリア!」 エリーが爆発に飲み込まれている間に、ルシファーは一気にジルとの間合いを詰め、右手に魔法の刃を宿らせその刃をジルの方へ振り下ろした。 「そんな遅い攻撃、喰らわないよ!」 ルシファーの刃をセイブ・ザ・クイーンで受けたジルだったが、その攻撃はフェイクだったようで、剣でルシファーの攻撃を受けた瞬間ジルの胸にルシファーの左ストレートが突き刺さっていた。 「がはっ・・・・」 そこへ更に前蹴りがジルの腹部へと襲い掛かり、それを受けたジルはエリーの方まで吹き飛ばされてしまった。 そのジル横には、直撃を免れたとはいえ、ルシファーのバーンエクスプロージョンを喰らい、ボロボロとなったエリーの姿。 「はぁ・・はぁ・・・なんて威力なのよ。直撃を防いだのにこんなにも・・・」 「げほっ・・・げほっ。う、くぅ・・・」 「くくく、さぁトドメだ!」 ルシファーが両手を広げ、魔法の詠唱を始めようとした時だった。 まばゆい光が広間を覆い尽くしていく。 「な、何だこの光は!?」 「な、何々!?」 「あっち!!ベリル、ベリルが!」 その光を放っているモノの方へと体ごと向けてみると、そこには光に包まれたベリルの姿があったのだった。 第54話 奇跡は2度起こる その1.終わり その2.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年11月25日 00時15分54秒
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