日蓮聖人の涙
HOME > 今日のことば 10/15 Wed日蓮聖人の涙 日蓮聖人が佐渡流罪の地で著わされた『諸法実相鈔』に、「鳥と虫とは鳴けどもなみだおちず。日蓮はなかねどもなみだひまなし」というお言葉があります。鳥や虫はいつも鳴き続けているけれども、涙は流さない。日蓮は泣くことはないが、涙の絶える間がないとおっしゃられるのです。佐渡の塚原三昧堂の日々は、雪深く、衣うすく食乏しく、飢え死にせずに過ごせるのが不思議というような生活でした。しかしご聖人の涙は、ほかのことではなく、ただただ法華経のゆえであるといわれます。「現在の大難を思ひつづくるにもなみだ、未来の成仏を思ふて喜ぶにもなみだせきあへず」と、いま自分が受けている法難によって法華経を身をもって読むことができて、将来、必ず仏道を成就することができる、という感激の涙なのです。「南無とは帰命のこと、帰命とは仏に命を奉ること」と、ご聖人は思い定めておられました。仏さまが自分を生かしてくださっているのを信じきって、疑われることがありませんでした。そこから、考えられないような力がわき上がってきて、次々に不思議が起こってくるのです。私たちも、法華経に遇いえた感激を、いつも心に刻みつけておきたいものです。 庭野日敬著『開祖随感』より