テーマ:海外生活(7775)
カテゴリ:ドイツ生活
(昨日のつづき 10月3日から)
マンハイムに戻ると、僕はReferat(クラス内でのレポート発表)の準備にいそしむことになった。内容は日本が最初に作ったピアノの話、つまりヤマハとカワイの創設物語ということだが、何分資料が乏しいために、ネットなどで探すのに一苦労だった。それでテストの結果は気にはなるものの、気を紛らわすことはできた。とりあえず待つしかない。 それまで、面接やテストのことで頭がいっぱいでドイツ語の勉強のほうはかなりおろそかになっていた。宿題もたくさんあったがほとんどさぼっていた。それで、しばらくドイツ語の勉強のほうにも身を入れようと思った。 そして2週間ほど過ぎたある日のこと、授業が終わったときにZIVIが僕宛の手紙を持って教室に入ってきた。 一人のクラスメートは「きっとラブレターだ」などと言ってからかったが、遠目にも封筒が何となく重々しい。これはひょっとして・・・ 手紙をZIVIから受け取ると明らかに商用の封筒。(あて先部分が透明になってるもの) そして裏にはGrotrian-Steinwegの印字。 ついに来た。 この2週間かましてた余裕が一遍に吹き飛んだ。何しろ、この封筒の中に僕の運命が記されているといっても過言ではないのだ。 いつの間にかクラスメートたちがまわりに集まっていた。彼らも非常に気にしてくれていたのだ。そのうちの一人が気をきかせてカッターナイフを渡してくれた。封筒くらいきれいに開けろ、ということなのだろう。 そしてそのナイフで丁寧に開封し、中身を取り出した。また回りくどい書き方だったので人目見て合否がわかるものではなかった。 文章は次のようなものだった。 「私たちは喜んで次のことをお伝えします。私たちは貴方に職場を提供する準備ができました。つきましては書類上にて貴方の進退の意思を確認した後、追って手続きに入りたいと思います」採用、採用だ・・・!と言うと、僕が喜びを表現する前に周りのほうが沸き立った。エジプト人の友人からはハグされ、筋肉隆々の台湾人の友人にはひょいと持ち上げられ、胴上げされる始末だった。当の本人はなかなか実感が沸いてこなかった。しかし、何度も「おめでとう」という言葉を聞いているうちに「ああ、受かったんだ・・・」と思えるようになった。 さっそく日本にも電話した。M社に、友人に、家族に・・・ 「こちらもたった今グロトリアンのほうから朗報お聞きしたところです。おめでとうございます」 「もう言わなくても声の感じでわかるよ。おめでとう」 そして母は、 「そう・・・残念だったねえ。でもまた頑張ればいいじゃない」と最初勘違いしていた。お断りの返事に聞きなれていたから無理もない。 「ちがうよ、受かったんだよ、採用だよ!」そう言うと電話の向こうで腰を抜かしてるんじゃないかと思うほど驚いていた。 ともあれ、この時から夢が現実に変わった。その後もビザの問題、卒業後の進路などさまざまな問題はあったが、この5年間は夢に見ていた以上のものだったと思う。でもこれで僕の夢が終わったと言うわけではなく、懲りずにまた別の夢をみている。そしてその夢がかなってまたこのような日記が書けるようになるのはいつの日のことだろう・・・ (とりあえず、おわり) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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おお!感動のフィナーレ!
でもコーダに何やら、新たな扉を探しに旅立つような予感が・・・ きっと又、神に導かれて行かれるのだと思います。 これからも楽しみにしています。 失敗や挫折もひとつのプロセスですよね (・・・と自分にいつも言い聞かせています^^) (2005.10.15 19:49:50)
おめでとうございます!!
とうとう最終章まで来てしまいましたね。 読み終わって思わず、感涙!! 夢がかなった瞬間って、そう巡り合える事ではないので、すばらしいと思います。 そこからが、中島さんの新しい人生の歴史が始まったんですよね。 結果が分かったときの友人、知人の祝福はきっと忘れることの出来ないものでしょう。 これからも楽しみにしています♪♪ (2005.10.15 22:12:22)
判っていてもとっても嬉しいことですね。
今更ながらですが、おめでとうございます! 人生紆余曲折、っていうか意外と真っ直ぐな人生??? 一つ一つの歩みに手ごたえがあって これからも一層楽しみですね! 頑張って! (2005.10.15 23:50:51)
良かった良かった。
サクセスストーリの一つだと思うけど 苦労が良くわかります。 だれも努力せずに夢はかなわないよね。 わたしはのんきに毎日を過ごしているので 中島さんのように頑張って活躍している方が 大好きです。 憧れてもしまいます。 次の別の夢の待ってるわ~~。 (2005.10.16 06:00:55)
あら、いやだ。。読んでて涙が出て来たわよ。
今の夢もほんと、いつか叶うと良いね~。 (2005.10.16 06:02:54)
祝!!!おめでとうございます。
本当、封書を開けて、独語を解読して (日本語だったらすぐにきっと目に飛び込むのでしょうが・・・) 合格通知だって分かる瞬間!嬉しいですねぇ~~~! 次の夢ってなんでしょう?? また叶えて下さいね! (2005.10.16 23:27:13)
といいますが、ブランスウィックさんの体験もまさしくそんな感じだったのですねぇ(笑)
ずっと読んでいて、「深く望む」ことがどれほど大切なのか、つくづく思わされました。 次の夢もかなうといいですよね^^ 応援してま~す。 (2005.10.17 23:00:21)
Inaい~なさん
こんにちは。最後まで読んでいただいてありがとうございます。まだ今のところどういう方向へ進むのかはわかりませんが、たしかに神の導きたもうままに、ですね。 失敗や挫折もひとつのプロセス・・・と思います。むしろ不可欠かもしれませんね。でないと話として面白くないです・・・そう言う問題じゃないか・・・。 今回の日記、僕自身自分に何か言い聞かせていました。これからも宜しくです。 (2005.10.18 00:00:55)
rusfさん
>おめでとうございます!! ありがとうございます。5年前の僕に代わって・・・笑 夢がかなう嬉しさはじわじわとやってくるものですね。 >そこからが、中島さんの新しい人生の・・・ その通りで合格までが夢、後は現実・・・でも僕は夢見ることも好きですが、結構現実が好きです。でも現実感に埋没してしまった時、この一連の日記に書いたようなことを思い出してみるのはいいことだなあ、と思いました。 (2005.10.18 00:09:07)
poco a pocoさん
こんにちは。 こうして書いてみるとやはり嬉しさがよみがえってくる気持ちです。紆余曲折・・・と思ったら意外にまっすぐだったというのは後で思うこと、多いですね。僕は枝葉のことに惑わされて一喜一憂しやすいですが、こうした何か一連の流れを振り返ると気持ちがしっかりもてそうです。 (2005.10.18 00:15:27)
Pontonさん
こんにちは。サクセスストーリー・・・はオーバーかもしれませんが、皆さんが読んで何か感じることがあったのであれば大変嬉しいです。 でも、僕も案外のんきにやってた気がします。「モーレツ」っていうの、苦手なんです(笑)それが逆にドイツへ来るモチベーションにもなってたりして・・・ (2005.10.18 00:20:06)
caeliさん
こんにちは。 この物語は実話をもとにした・・・実話です(笑) もちろん本当はその間につまらないいショートストーリーがつまってますが・・・ でも、みなさんに感動と言っていただいて、書いてよかったと思いました。 (2005.10.18 00:28:05)
ayaya!さん
>祝!!!おめでとうございます。 ありがとうございます。 ドイツ語で回りくどく書いてたのですぐ分からなかった、ということもありますが、なにより「お断り」の手紙に慣れてしまったことがあります。母が最初に勘違いしたのもそのせいでした。 次の夢・・・色々ありますが、動くにはもう少し具体的にならないとなあ、と思います。 (2005.10.18 00:31:14)
さいちゃんさん
こんにちは。事実と小説の違いは小説だと作者が書いた話という前提があるので何があっても「面白いオチ」があると思いますが、現実は先が全く不明。信仰とはそのあたりで働くものなのかな、とか思ったりします。 (2005.10.18 00:36:10)
信仰…そうですねぇ。私のストーリーはブランスウィックさんよりももっと「奇」なんですが、そこに信仰がどう働いていたのかな(笑)
勤続10周年を記念して、私も自分のストーリーの連載を始めました。トラバしておきますので、よろしければ見に来てくださいね! (2005.10.24 08:58:34)
信仰…そうですねぇ。私のストーリーはブランスウィックさんよりももっと「奇」なんですが、そこに信仰がどう働いていたのかな(笑)
勤続10周年を記念して、私も自分のストーリーの連載を始めました。トラバしておきますので、よろしければ見に来てくださいね! (2005.10.24 08:59:35) |
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