カテゴリ:ピアノ雑感
ピアノ調律師にとって欠かせない道具の一つに音叉がある。
普通は440ヘルツの音叉を鳴らして、これにピアノのAの音を合わせるのである。(ちなみに440以外、例えば443ヘルツに合わせたいときは、音叉との間に秒間3回の唸りを上につける。下につければ437ヘルツとなる) 絶対音感があろうとなかろうと、音叉なしに自分の感覚で「このAは○○ヘルツだ」などと判断して調律をすすめてはいけないのである。(このことはフランツ・モア著「ピアノの巨匠たちとともに」で力説されている)それほど音叉とは調律師にとって神聖なもの・・・なのだが、実を言えば現在、音叉を使う調律師は減少傾向にある。 ちなみにグロトリアンで調律するときに音叉を使う人は僕ひとりであった。小型のチューニングメーターでAを取る人がほとんどである。(なぜAだけとるかと言えば、機械的な平均率とピアノの上の平均率では違いがあるためである) さて、僕は調律をはじめて15年ほど、ずっと音叉を使ってきた。別にアナログ好きなのではなく、単に習慣上そうしていたのである。 しかし、音叉というのは意外に使いにくい。なぜなら調律は右手でハンマーを操作し、左手で鍵盤を押さえるため、音叉を持つ手が空いていないのである。それで、今まではピアノの穴を探してそこに挿したり、右手でハンマーと一緒に持って耳を近づけたりと、いろいろ工夫していた。 それが最近、同僚からチューナーを借りてやってみた。なんとやりやすいんだろう。というより、今までなんて面倒くさい方法でやっていたのか。もっとも、僕はチューナーの針を見て調律する、というのはやはりできないので、発信音に合わせる、つまり“電子音叉”として使った。 もっとも調律しているとき、まわりから見れば音叉で音取りしている姿は神秘的で重みを感じさせることもあるかもしれない。しかし、それはパフォーマンス以上の何ものでもないのである。 というわけで長年使い込んできた音叉は手厚く(?)しまいこまれ、代わりに新しくチューニングメーターが活躍することになる・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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えええ、音叉とお別れですか?
調律の時に音叉が活躍する姿って、すごく憧れなんですが・・・(笑) 確かに音叉のために猫の手も借りたいだろうな、と 思わないでもなかったけれど。 時代の流れですね~。 (2005.11.22 08:02:43)
poco a pocoさん
完全にお別れするのは難しいです。やはり能率悪いとはいえ、音叉に慣れてしまってます。外勤ではこれからも音叉でやってくつもりです。 でも工場内ではチューナーが楽ですね~。 (2005.11.23 00:19:23)
そう言えば、音叉って最近見ないですね~。
昔は音楽家の家には、メトロノームと同じ位 見掛けましたけど。。。 私のワイマールの時の調律師のおじさんって、 (レンタルしたピアノの持ち主)すんごく下手な 調律師さんで(失礼!でも、素人の私にも分かっちゃうんです。彼が帰った直後もくるっていた)、 デッカ~い針式チューナー使って、1オクターブづつ 最初に合わせていました。 話が反れますが、ワンルームの一人暮らしだったので、私は、居場所に困りました。 ソファに座り、本を読んでいるフリをしながら、 彼の作業を見ていたり、なんと、調律やっている間、シャワーを浴びていた事もあります。(笑) 一人暮らしの女性、男性調律師さん、っていうシュチュエーション、そういう時って、どうなさるのかしら?普通。 (2005.11.23 01:51:32)
ayaya!さん
ドイツの調律師はピンキリです。それにしてもオクターブづつチューナーで取っていくと言うのは面白いです。 一人暮らしの女性のお客さんの調律、というのは確かに少なからずありました。しかし大体その場合は学生寮だったので、調律の間お友達のところへ行って待ってる、というパターンが多かったです。でも、女性の一人暮らしと分かれば、女性担当者に交代してもらってました。 (2005.11.23 04:58:54)
なっなっなるほど!勉強になるぜ~。ねなし草
(2005.12.02 05:29:00)
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