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カテゴリ:銀英伝二次創作
それからというもの、ラインハルトはヒルダの温もりを度々求めるようになった。 元々皇帝近くに配置される近侍達は、口が堅い者が選ばれているので、彼らから噂が洩れるような事はない。皇帝が幕僚総監に花束を贈ったらしいという噂も、その後続報がなかったせいか将官らから忘れられている。 二人は穏やかな時間の中、秘密の逢瀬を重ねることが出来た。 「皇帝陛下、フロイライン・マリーンドルフがおみえです」 「通せ」 先日、補給担当の下士官が物資を不正に横流ししている事が発覚した。ヒルダはその報告書を提出する為に皇帝に目通りを願ったのである。 重厚な机の前でヒルダは挨拶をする。 「お忙しいところ申し訳ございません、陛下」 よどみなく事情説明をするヒルダを見て、ラインハルトは彼女の知性にも惹かれていると実感する。彼は昔、貴族の令嬢達は頭がバターで出来ていると思っていた。しかしヒルダは違った。ある日突然ラインハルトの前に現れ、貴族の娘に対する思い込みをひっくり返した。あの頃を懐かしく思う。 この様な下らない不正について語るより、政戦両略について語る時のヒルダの瞳の輝きを見たいな、と思った。 「では、この報告書の写しを当該部署にまわします」 「うむ」 開けていた窓から風が通る。 「気持ちいい風だな・・・」 「ええ。そろそろ秋が近いのでしょうね・・・・」 その時一陣の風が吹き、ラインハルトのデスクの上の書類が部屋に舞った。 ヒルダがそれを拾い手渡した時、二人の手が触れる。 「・・・・・・・!!!」 「!!!!」 二人とも赤くなって手を引っ込める。 「フロイライン、顔が赤いぞ」 ラインハルトがからかう。 「陛下こそ」 ヒルダも赤い顔で果敢に反論した。 「夜の貴女はもっと素直だったが」 「陛下・・・・・!」 常に冷静な幕僚総監の慌てぶりに、ラインハルトは声を上げて笑ったのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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