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August 28, 2009
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「失われた町」とはおそらく別の、”失われた町”のその後、が舞台の短編集。

三崎氏の小説は、架空の仕事が当たり前のように存在するので惑う。
それが自然に入ってくるので、こんな部署あるのかな?と。
すぐに架空だと分かるけれど。

最後まで読んで、また読み返すと、それぞれの人物がそれぞれの章に姿を見せていたりすることが
確認できる。また、街の作りも段々理解できる仕組み。

失われた町で新たな一歩を踏み出す人々の物語でもある。

~ネタバレメモ~

消えた街を抱えて生きる人々が、その記憶を残しながら乗り越え、新たな一歩を踏み出す。
人の記憶が、消えた街の概念が薄くなる度に消える、飛び立つ青い蝶(の絵)が幻想的。

・序章 歩く人
沙弓は記憶を無くしたかつての街に滞在することを決めた。
そこで、国土保全省 道路局 道路維持係 主任歩行技師(道路の「概念の維持」が仕事)の男と出会う。
そして、彼に頼んで一緒に街を歩かせてもらうことに。
異邦郭の住人には「道守」と呼ばれ、認められている存在の彼も、
その仕事の重要性を知らない上司らには軽んじられている。
沙弓は10年前に街の一部の三千九十五人が消え去った事件のただ一人の消え残りであり、
恐怖を押さえ込む為に事件の記憶を封じ込めてしまっていた。
彼は「歩行技師」の仕事を理解してくれた沙弓の変わる姿がみたいと
記憶がぶり返して周りが見えなくなった沙弓を守り、怪我を負いながらも
最後まで同行させてくれる。
仕事をまっとうした彼は仕事で別の街に。
ここに残り、彼とは別の場所で、違う方法で、彼と一緒に歩き続けることを誓った沙弓は再会を誓う。

・第一章 第五分館だより
不倫の果て、誰も知らぬこの街にやってきた藤森さんは図書館で働いている。
大学の友人・沙弓が偶然にもこの街にいると知り、再会。
今は無いはずの、消えた街にあった図書館・第五分館は今でも貸出記録がデータ排出されている。
それをまとめ、消えた街で貸し借りしている住人のデータを第五分館だよりと一緒に
それぞれの家族に配る"担当者"・西山係長の仕事を知るうちに彼に惹かれる。
彼の恋人は同じ図書館員で、第五分館と一緒に消えたのだった。
そして、沙弓の仕事も消えた街から届くリクエストによって成り立つラジオ局だとわかる。
第五分館の閉館が決まり、担当者としての仕事を終えた係長は図書館を辞める。
不倫を精算し、藤森は係長に向かって一歩を踏み出す。

・第二章 隔ての鐘
消えた街の鐘の音が聞こえていた駿(16歳)。彼の父も消えた一人だ。
ある日、異邦郭の少女・鈴と出会い、音を統べ、司る「共鳴士」の修行中で、
消えた街の鐘の音が一部の人に聞こえるという"音の歪み"を正す為に来た彼女に協力することに。
消えた街の鐘も最後の日が来ることが、沙弓のラジオへのハガキから判明し、
街の人に伝える為に儀式に参加し、この街に新たな鐘を響かせようと
消えた街の鐘を作った谷本に交渉。鐘の制作を駿は手伝うことに。

*駿の母と谷本は距離を縮める。

・第三章 紙ひこうき
自身の患う病気の為、他人に深入りしないようにしていた坂口さんは
マンションの屋上から紙ひこうきを飛ばす女性・持田と出会う。
バスの運転士だった彼女は、離れたところからだけ見える、
消えた街の終点に到着しないバスを、そのバスを運転しているはずのご主人のことを思っていた。
消えた街へのバスの廃止決定があのラジオから流れる。
最終バスを運転したのは持田だった。バスは幻の道を走り終点に辿り着く。
一緒にいた坂口は病と彼女に思いを告げ、転勤先である居留地に旅立つ。

*坂口は転勤前、異邦郭相手の仕事をしており、そこで居留地に帰った鈴に会おうと勉強する駿に会う。

・第四章 飛蝶
青い蝶を描き、宏至に歌と奏琴を教えてくれた女性と同じ年になった。
喉に傷を負い、歌を失った宏至に沙弓がラジオのリクエストに答えてほしいと頼んできたのは
彼女が教えてくれた「蝶」だった。
宏至が失った歌は、彼の曲を聴きに来た若菜が同じ女性から聞いて知っていた―
沙弓のラジオ局も来春で終わることが決定し、最後のリスナーへのプレゼントに二人の「蝶」が流れる。

*居留地から船便で届いた荷物を預かる倉庫番をする宏至の新たな同僚は西山本係長。
藤森さんとの関係は良好。
*若菜は駿の先輩。消えた街にあった小学校を休んでいた為、残っていた。
 そのことが原因でいじめがあり、不登校になっていた。

・第五章 光のしるべ
「失われた町」を調査・研究する国家機関に勤める黒田。
あの事件は異質化した思念が暴走(漏出)しておきていた。
被害を最小限に留めた黒田は、その反動で周囲の人に顔の記憶を残さなくなっていた。
思念の極秘貯蔵プラントは事件後、閉鎖されていた。
が、再安定化するごとに少しずつ解放されていた。
だが、再び暴走しそうになり、それを止めようとした黒田を助けたのは、彼に思いを寄せていた梨田。
彼女は黒田と同じ状態(顔を記憶してもらえなく)なるが、同じ状態の黒田は認識できるように。
黒田の”消えた”妻の葉書が、沙弓のラジオの最後の葉書。
―そして、黒田も梨田と新たな一歩を踏み出す。

*黒田の同僚に泉川瞬の母(谷本と再婚決定)がいる。
*この町の思念の再安定化には、唯一の消え残りの沙弓の思念が使われていた。
(本人にも極秘。そのため、記憶も封じられていた。)
*西山と藤森は結婚。

・新たな序章 つながる道
二年ぶりに帰ってきた幡谷(歩行技師)は街を歩き、様々な人に出会い、沙弓の元へ―

それぞれの一歩を踏み出した人々のその後が爽やかに描かれる。
喪失感を乗り越えた後に希望がある、と書いたら安易か・・・な?
それにしても、心に残るからこそ上手くまとめるのが難しい一冊でありました。





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Last updated  August 29, 2009 12:20:49 AM
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