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2005年05月02日

思想戦に就いて

テーマ：国防・軍事(168)

カテゴリ：國防軍事

平成十六年十一月二日、香田証生さん殺害ビデオがインターネットを駆け巡った。

僕はこの時の wmv ファイルを落としていまだに保存している。僕と同じようにこの映像を保存している人は世界中で数多いと思う。恐らく今から誰が何をしようとこの映像を歴史から抹殺することは不可能だ。

その気になれば僕だって今からでもこの映像を世界中に流すことが出来るのだ。

これがインターネットの威力である。これを「デマ宣伝」「虚偽宣伝」「不正な宣伝」に使ったらどうなるか？インターネットは今、思想戦という名の戦場なのである。

昭和十三年二月、東京・日本橋高島屋で行われた内閣情報部主催「武器なき戦ひ、世界に渦巻く思想戦展覧会」の開催日前日に内閣情報部長であった横溝光曙氏がラジオ放送で述べた『思想戦に就ついて』(昭和十三年二月八日午後七時半、東京中央放送局)

『今まで「戦いくさ」と申しますと、それは武力と武力との戦、即すなわちいわゆる武力戦はほとんど全部であったといっても過言ではありません。

　ところが近代になりましてからは、平時戦時の明確な区別が次第になくなって参りまして、戦は平時から経済、外交、思想などあらゆる方向において行われている様な状態であります。

　そこで私は思想戦というものの重大さを広く皆様に認識して頂きたいのであります。

　思想戦という言葉はお解り難いと思いますが、思想戦は平時とは言わず、戦時事変と言わず、常に絶えず行われている「武器無き戦い」であります。

　これを戦時事変で申しますならば、思想戟は相手方にわが正義の存する所を伝え、我が威力を識しらせてその戟意を失わせ遂には我に帰一させ、また第三者の認識を是正しその態度を有利に展開させて戦争目的を達成するために用いられる手段であります。

　即ち戦場に在っては戦線の崩壊を促進させ、敵国内に対しては戦争遂行の意思を挫折させ、第三国に働きかけては戦争を有利に終結へ導く為に用いられるのであります。

　さて思想戟は世界大戦の時に盛んに行われました。

　世界大戦は武力戦から経済戦へ、経済戦から思想戦へと移った、しかも思想戦が大いなる威力を発揮して武力戦をさえ圧したと言われる位であります。

　今回の支那事変におきましても、思想戦は盛んに行われているのであります。

　それでは平時における思想我とは何かと申しますと、それは我が方の正しいと信ずる考えを彼に伝えて彼の迷蒙を解き、彼をして我に帰一し同一の理想実現に向かわしめる為の手段であります。

　平時の思想戦に敗れた国家は、武力戦を待たずして敵に屈服せねばなりません。

　世界いずれの国においても、夫々それぞれその国が正しいと確信する国是、或いはその国が利益と信ずる政策をもって世界の全人類を自国の主義に融合させ様として思想戦の手段を用いております。

　以上は主として攻撃・攻勢の観点から思想戦を観みたものでありますが、同じく「思想戦」と申しましても、武力戦と同様にその裏には防御・防衛という作用のあることはもちろんであります。

　相手国の我に対する思想攻撃に対して自国の国民精神を総動員して以って自国の国家意思、その国是、国策の至るは自国の国民生活を防衛することは思想戟における顕著なる防衛の一部面であります。

　よく「謀略」という言葉が一般に使用せらるるに至りましたが、思想謀略とは思想戦における邪道の方面を指すものであって、これに対しては正道とも言うべき戦の本道が存することを忘れてはなりません。

　国によっては思想戦をもっぱら陰険、隠密、悪辣なる謀略を主として展開するものがありますが、我が国の主とする思想戟は正々堂々俯仰天地に愧はじざる底の正道を堅持するのは茲ここに私の申し上げるまでもない事と存じます。

　今まで共産主義が如何に我が国に押し寄せて来ているでしょうか、又如何に我々は之と戦いつつあるでしょうか、皆様の既に御承知の通りであります。

　我々は日本精神という弾丸を以って之を打ち返さねばならぬのであります。

　防共協定の堅い握手もコミンテルンの攻勢に対する防衛の共同戦線であります。今回の支那事変の大きな原因として私達は赤い手の動きをまざまざと見たのであります。

　思想戦は平時から世界に渦巻いて居るのであります。世に宣伝戦と申しますのは、此の思想戦の中の技術的な部門を担当するものであります。

　しかもこれは極めて大きな部門でありまするが故に、動ややもすれば思想戦即すなわち宣伝戦とさえ考えられる程であります。

　まことに宣伝の威力というものは驚くべきものでありまして、宣伝というものが、如何に戦争の勝敗を決する重大原因であったかは、世界大戦が之を如実に示しました。

「金」と「鉄」と「紙」とは国防の三大要素だと言った人があります。「金」は財力、「鉄」は武力、「紙」は即ち「宣伝」の力を表現したものであります。

　近代の戦はまことに国家の全ての力を以ってするものでありまして、今やいわゆる国家総力戦の時代というべきであります。

　その中で思想戦は重大な役割を演ずるものでありまして、宣伝は国家の運命にさえ関与するところの機能を持つことになったのであります。

　印刷技術の素晴らしい進歩に依りまして宣伝の威力を表徴するのに「紙」を以ってすることはまことにもっともなことでありますが、併しかし最近ではいささか物足らぬ感が致します。

　それは思想戦におどる無電の目覚しい活躍があるからであります。

　今回の事変では南京から宋美齢が行った対米放送は、米国はもちろん全世界に異常な反響を与えたといわれております。

　しからば宣伝とは何ぞやと申しますならば、宣伝の本義は決して偽りを伝えたり誇大に吹聴したりする邪道的なものではありません。

　支那のやっているのは、あれは「デマ宣伝」とか「虚偽の宣伝」とかいうべきものでありまして、宣伝はあくまで「ある目的達成のために正しい事をそのままにあまねく伝えて共鳴と理解とを求める」ことであらねばなりません。

　今や支那事変は新しい段階に入りました。これから思想戦は一層大切になって参ります。思想戦における宣伝の威力は益々発揚されなければなりません。

　しかも国民の一人一人は日々の思想戦の戦士であります。

　それほどうすることかと申しますと、国民の各自が夫々の仕事の中で、正義日本の真意を、躍進日本の真の姿を海外に知らせることも出来ますし、日本精神の発揚に貢献することも出来るのであります。

　それは平素の心構え、ちょっとした工夫で出来るはずであります。

　私は今後挙国一致して長期戦に対処するために、武力戦の戦場に立たぬ国民各自も思想戦の戦士としてご活躍を願いたいと存ずるものであります。

　内閣情報部主催の下に思想戦展覧会を催すことに致しました所以ゆえんのものも、思想戦のかような重大性をよく認識して頂きたいための一端であります。

　私も皆様と共にこの重大な思想戦の一兵卒として御奉公致しております。

　皆様のご協力によりまして使命の達成に遺憾なきを期しておる次第であります』

プロパガンダ戦「南京事件」光人社より

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