テーマ:皇室 二(50)
カテゴリ:歴史 傳統 文化
本日は旧暦一月二日、諸事始、初夢。睦月、鶏はじめてとやにつく。 今日は「正論」平成十八年二月号に掲載された林道義元東京女子大学教授の「『皇室典範有識者会議』とフェミニズムの共振波動が日本を揺るがす 改正報告書に仕組まれた罠とは何か」から二回目。 林道義氏は女性天皇の問題点として、 一、祭祀執り行いが出来なくなる の四点を挙げている。 このたびの「女系天皇問題」に関して政府に言いたい事のある方は左記より。 元東京女子大学教授●はやし・みちよし林道義 「皇室典範有識者会議」と 改正報告書に仕組まれた罠とは何か(続き) 女系天皇の深刻なマイナス面 女系天皇が必要だという理由がすべて決定的なものでないことを明らかにした。その反面、女性天皇の輩出が予想される「女系容認、長子優先」の皇位継承制のもとでは数々の根本的な困難や不都合が生じるのである。 男子によって行われる祭祀を女子が行っては、カリスマ的な意味が失われるからである。したがって、これまでも女性が皇位についたときには祭祀を一時中断するか、男性の代理を立てて執行した。その場合は一時的な「つなぎ」の女性天皇だったから「例外」として許されたが、女系になると天皇自身による祭祀の中止は致命的な意味を持つ。それは天皇の存在理由(レーゾン・デートル)に関わる重大な欠陥となる。女系天皇は天皇としての自己矛盾であると言わなければならない。 第二に、女帝であることを利用する者が群がる恐れがある。フェミニストはさっそく名乗りを上げて、露骨に期待感を表明し、国民の意識を変えるために利用しようとしているが、その他にもさまざまな形で、女帝であることから利益を引きだそうとする者たちが出現するであろう。女帝に影響力を持つ周囲の者たちもそのターゲットになりうる。 第三に、女性天皇の配偶者選びは困難をきわめるであろう。皇太子妃でさえなかなか決まらなかった。ましてや女性天皇の配偶者選びは難航することが十分に予想される。幸いにして夫君が決まったにしても、夫君が個人的にプライドと存在意義を一生のあいだ感じ続けることは至難の業であろう。 第四は、家族像と関係する問題である。現在、皇室は日本の家族像の模範として、国民から敬愛されている。父親を中心にまとまり、互いに愛し合う家族の姿は、日本の家族が世界の中で珍しいほど健全な姿を保っていることの一つの重要な基盤とも言える。しかし、それは「平等な家族像」ではなく、明らかに父系制に基づく、父を中心とした家族像である。 これまで機会あるごとに述べてきたように、家族は父親を大黒柱とし中心としてまとまりを持つことが必要である。 家族の模範像だと受け取られてきた天皇家において女性がトップとなることによって、フェミニズム思想が日本人の家族像に悪しき影響を与える危険性もまた増大する(この問題については最後に詳しく述べる)。 以上、皇位の女系・長子継承のマイナス面を述べた。こうして列挙してみると、推進派が強調するプラス面に比べて、マイナス面は深刻な問題が多いことが分かる。皇室存続のためと公式には言われている女系継承だが、実は皇室存続を危うくする要素の方が多いのである。 この疑問点の多い女系による皇位継承を、一体誰が積極的に進めようとしているのであろうか。 勝負に出たフェミニスト まずフェミニズムがその尖兵であることは、誰の目にも明かである。フェミニストたちはさっそく喜びと支持の声を上げている。 「有識者会議報告書」が発表された翌日には、フェミニズム機関紙とも言える新聞に、判で押したようなフェミニストの談話が踊った。 たとえば、『日本経済新聞』十一月二十五日付において、NPO法人代表・金谷千慧子氏は「女性天皇の誕生は、働く女性にとって間違いなく励みになる」と、ノンフィクション作家・吉永みち子氏は「天皇家が示してきたのは平等な家族像であり、女性が皇位を継承しても夫婦、親子の結びつきようが変わることはない」と語っている。 また『共同通信』の配信を受けた北海道新聞、中国新聞、熊本日日新聞などの地方紙の十一月二十五日付には、坂東真理子前内閣府男女共同参画局長(現昭和女子大副学長)のコメントが載った。 「戦後六十年を過ぎても一般の家庭にもまだ、『跡取りは息子』『女の子にはあまり教育は必要ない』と考えるような『家制度』の残澤がある。皇室が変わることで、こうした意識にもよい変化が出ることを期待する」 女帝・女系の実現はフェミニズムの最終勝利を完全に保障するものである。それは単に「働く女性の励みになる」とか「国民の意識がフェミニズムに都合のよい方向に変わる」というだけに留まらない。その効果はそのように部分的なものではなく、より包括的かつ全面的である。それは女性支配の完全な正当性の獲得であり、まさしくフェミニズムにとって錦の御旗の奪取なのである。 フェミニストたちは今が彼女・彼らにとっての天王山であることを敏感に感じ取っているのであろう。フェミニズムは「バックラッシュ」に遭遇して行き詰まりを見せ、世間の目も厳しく不利になっている。 たとえば、「日本人の幸福感」についての最近のアンケート調査によれば、「最も幸せな日本人像」は「三十代、都会暮らし、専業主婦」である(大阪大学社会経済学研究所筒井義郎教授による。『産経新聞』平成十七年十一月十八日付)。 これだけ専業主婦を攻撃し、税制などで締め上げて撲滅を図り、「働け」イデオロギーを宣伝してもなおこの結果である。それどころか今や全国的に嫌フェミ現象が現われている。すでにフェミニズムの後退・凋落傾向が始まっている。この凋落に歯止めをかけるために、絶対的な錦の御旗である女帝・女系天皇を実現しようという作戦である。 危機にあるフェミニズムにとっては、巻き返しの絶好の機会、これを全面的に利用しない手はないとばかりに、進んで一翼を担っているのであろう。 男女共同参画社会基本法に加えて女系継承が実現すれば、フェミニズムのクーデターが成功し、長期独裁政権に等しいフェミニズム支配が定着してしまうだろう。 じつは有識者会議の座長の吉川弘之氏は、かねてよりフェミニズムと密接な関係にあった。「日本学術会議の会長」だったときに、「学術会議叢書 三」として『男女共同参画社会─キーワードはジェンダー』(二〇〇一年二月発行)を刊行している。「はじめに」を吉川氏が書き、以下「第一部 ジェンダー」「第二部 新しい社会の男と女」「第三部 男女共同参画社会に向けて」の執筆者には原ひろ子、上野千鶴子、名取はにわ等のフェミニストが並んでいる。 ロボット工学の専門家である吉川氏は「独立行政法人 産業技術総合研究所理事長」でもある。当然産業界とも関係があるだろうし、フェミニズムを利用した経済界の女性労働力化政策についても賛成していることだろう。 この吉川氏を座長とし、フェミニストの重鎮である岩尾寿美子氏や緒方貞子氏を委員に据えた有識者会議は、完全にフェミニズムの主導下にあると言わなければならない。 (続く) 平成十八年 一月三十日 尋常小學校唱歌「ガクカウ」を聴きながら コメント・トラックバックは予告無しに削除する場合があります。あらかじめご了承下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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こんばんは、TB有難うございました。
たとえ女性天皇擁立になっても、祭祀の問題で、またしてもフェミニストがヒステリー声を上げるのは目に見えていますね。同性として彼女らの「近視眼」をお詫びいたします。(悲しむべき存在です) 私の拙ブログ中こちらの記事にリンクをさせて頂きました。勉強させて頂き有難うございます。 (2006年02月04日 20時38分49秒)
有識者会議の第2回会合では、宮内庁が女性天皇の時も新嘗祭、大嘗祭を行っていたと説明しています。
私も女性天皇で宮中祭祀が本当に出来るのかと思います。 (2006年02月04日 20時47分39秒) |
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