天保暦十二月十日 納めの金毘羅 師走 蕗の花咲く
平成廿一年歌会始の御題は生
群馬県 佐藤克巳
ふじ棚に
巣作りをせし
きじばとの
親子と共に
生きる日日
鳥取県 土江康一
今まさに
生れくる命
救はむと
ドクターヘリは
隠岐へ飛びたつ
宮崎県 赤崎敏子
あしたにも
干上がりさうな
沼の辺に
蝌蚪ら生きをり
頭を寄せ合ひて
京都府 安久菊枝
板書する
チョークをぐつと
握りしむ
生き生きと蹴る
胎動ありて
茨城県 仲野芳蔵
初とりの
七十五箱の
そら豆を
生産台帳
添へて出荷す
京都府 五十嵐弘治
百年を
町屋大工に
生きて来し
爺さま親父
そしてわたくし
北海道 奥泉一子
帰りゆく
日のあるなれや
択捉島の
わが生れし村
トシルリの地に
東京都 小林のぶ子
アナトリアの
谷ふかく日は
沈みたり
星生るるまで
友よ待たなむ
茨城県 丹波陽子
二枚目に
渡りてクレヨン
走らせる
児は生きいきと
うなぎを描けり
栃木県 藤倉美知子
還り来し
父ありてこそ
わが生まれしと
思ふ今日の日
終戦の日は
福島県 小貫信子
ペンキ塗りは
わが生業ぞ
命綱
肩に掛けつつ
梯子をのぼる
香川県 藪内眞由美
田に水の
つぎつぎ張られ
見はるかす
讃岐平野に
空生まれたり
群馬県 高橋千恵
先生と
呼ばれた君も
好きでした
ボタンのとれた
白衣をたたむ
京都府 宮本絵佳
大丈夫と
あなたが言つて
くれたから
生きてゆけると
思つた思へた
京都府 邉本茜
気がつけば
あなたのことを
考へて
生まれてゐたのは
小さな感情
大阪府 林沙恵
人生は
まだまだ長いと
思ひつつ
とても短い
今日の一日
「大いなる秋田」東京公演
