思い出に会える場所
高3の卒塾生が自習室を占領して勉強している。大学受験の最後の追い込みをかけるためだ。当然彼は大学受験の予備校にも通っている。それでも、ラストスパートをかけるために選んだ場所は、彼が3年前にも戦ったこの塾の自習室だった。去年卒業した高1の卒塾生も、塾に顔を出しに来た。近況報告など、たわいもない話しかしていないのだけれども、ボソッと「この塾に来たら、なんか頑張ろうって思えるんだよね。不思議だけど。」とつぶやいた。卒塾生が来るたびに思う。高校受験までしか指導していないこの塾に何をしに来るのだろうと。そして、なぜ彼らが卒塾してからも頻繁に塾を訪れるのだろうと。ここからは僕の勝手な推測。多分、卒塾生たちは僕ら講師に会いに来ているのではないと思う。高校受験の時、この塾で一生懸命勉強した思い出に、会いに来ているんだと思う。志望校目指して一生懸命勉強したこと。冬期合宿で死ぬほど勉強させられたこと。僕にめちゃくちゃ怒られたこと。再試が溜まって大変だったこと。もっと早くから頑張っておけばよかったと後悔したこと。自分に悔しくて泣いたことなどなど。この塾に一歩足を踏み入れたら、そんな思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡るのだろう。そして、頑張った頃の思い出に勇気をもらえたり、自分を奮い立たせたりしているんだろう。一生懸命頑張った自分に会える場所、そしてその頃の自分に勇気を貰ったり喝を入れられたりする場所が、卒塾生にとってのうちの塾なんだと思う。自画自賛になってしまうけれど、素敵じゃないか。そういう場所があることって。