カテゴリ:ヒトコトモノ
全国的に厳しい寒さが続いているが、この日はちょっとだけ頑張った
私達夫婦への“ご褒美”とも言える、快晴の心地よい一日に。 姑の体調異変の連絡を受けて数日。やっと夫婦そろって動ける時間が できたので、彼女を施設から預かり、病院に連れて行く。 リハビリの甲斐もなく今では自力歩行もままならぬ彼女を、車椅子で運ぶのも ひとりでは難しい。目的地周りの急な坂に行く手を阻まれ、すぐそばにある病院も 気合を入れないと挫けてしまいそう。私ひとりで受診に付き添った時は、結局行きも 帰りも施設のスタッフの好意に甘えてしまった。 随分前に車を手放した私達には、老いた親をそこまで連れて行くのもひと苦労。 今回も仕事で疲れてやっとの休みを介護に費やさねばならないダンナを、サポート するために私も一緒に。 介護を始めて思うのは、たとえ血が繋がろうが繋がってなかろうが、田舎だろうが 都会だろうが、医療や福祉に携わる人の言葉のニュアンスから、「女が介護するもの」 という考えがビシビシ伝わってくるということ。だから私が血の繋がらない嫁という 立場であっても、ダンナより私が動かないといけない雰囲気ができあがってて、 こうして病院や施設にふたりで付き添っても、私中心に物事が進もうとする。 まー、私が神経質なくらい細かくいろいろ聞いたり、彼女の症状等喋りすぎるから 喋りが得意でないダンナより、細々聞きやすいし頼みやすいというのもあるだろう。 でも、実母の介護に帰った時にも同じような事を言葉から感じるから、きっと世の中的に どんなに女性が才能を開花しどんどん社会進出を果たしたところで、女は家庭や家族の ために尽くすべき、という固定観念は平成から元号が変わろうとも、この先も恐らく 何も変わらない。とか、なんだか偉そうに。いやでも、実際介護に巻き込まれれば、 女性ならばきっと誰もがそう感じるはず。 相変わらずのお騒がせ姑は、やっぱり今回もパキッとした答えが出なかった。 施設の看護師から聞かされた情報をもとに本人に問診しても、記憶障害が前より 進んでいるのか、「いつごろから?」「どんな風に?」と幼児に問うように優しく 聞かれても、答えるには答えるが、以前よりももっと「考える」持続力がもたない。 2か月くらい前までは、「AかBか?」には答えられたのに、今や考える事を放棄してる。 彼女なりの訴えや希望は言うには言うが、優先順位とか相手の気持ちとかまるで無視で、 だからこちらがその度に混乱する。 認知症は失敗や暴言を吐いても、それを責めたり叱ったりしてはいけないと、 あちこちの専門家が書いているのを読んではいても、この日も私は彼女にいつも通り 説教をしてしまった。彼女が理解できなくても、身勝手すぎるから言わずにはいられない。 何も責めるな、叱るな、すべてを肯定で受け止めよ、なんて家族にとっては罰ゲーム。 何をしても許され、イヤな事はしないでいいなんて、都合のよすぎる病気だな。 その患者さん達には失礼かもしれないが、とりあえず姑だけに関して言わせてもらえば 自分の好きなモノしか受け容れず、嫌いなコト苦手なコトを全部周りに押し付けてきた 勝ち逃げの彼女には、ふさわしい病気なのかもしれない。その分、家族や介助人がどれ だけ苦労し、涙しているかも気づくことなく・・・・・・ 思ったよりも悪い症状じゃなさそうだから、薬も栄養補助剤的なモノで済んで 面倒なことにならずよかったにはよかったが。それにしても彼女に尽くした後の こちらの疲労感ったら、ハンパない。 ふたりして言葉も出ないくらい、疲れてしまう。 施設を出たらサッサと家に帰るもんだと思ってたのに、最寄駅の方とは真逆に 歩き出すダンナ。しかもどんどん歩幅を広げ、本気で歩き出す。 任務終了の解放感か、それともあまりの空の青さからか、穏やかな波の輝きのせいか とにかく彼は、海に向かいたかったようだ。 それが解ったから、私も遅れまいと必死について行く。 江の島の見える海岸でドーン!とそびえる富士山を拝みながら、大きく深呼吸。 風が夕陽の熱を孕み、ちょうどいい塩梅に暖かく。サラサラと流れる砂に 踏みしめる音を感じながら、口元も緩む。 波が穏やかすぎて、波乗り人もいない。ひたすら眺めのいいキラキラした海が広がる。 さっきまでの全部。もうどーーーーーーでもよくなった。 ここに来て、何もかも流して帰ればいい。時には地平線に向かい叫んだっていい。 ホントは絶叫して発散したいとこだったが、浜辺でムードに浸るカップルに遠慮して 体の冷えないうちに退散することに。 帰りに買った自販機の缶コーヒーの温かさに癒され、疲れも徐々に薄まる。 帰りの車内で、施設からまた留守電があり、そろって焦る。 まだまだ少しも気は休まらないが、そんな時は海がある。 何度でも、いつでも、海に行って流せばいい。 ★ ★ ★ ★ ★ 今日のひとこと。「福島から富士山見えるのか!」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|