朝から冷たい雨。今年は秋をあまり感じないうちに『冬』が来た
ようだ。十数年前師走に父を亡くしてから、秋から冬へと向か
うこの時季は、とても気が滅入る。明日から久々に仕事が始まる
ので、なんとしても気合いを入れなければならないのだが・・・
ネットニュースのある見出しを見た瞬間、大きな声が出た。
私を音楽業界に向かわせるきっかけとなった人達のうちの
ひとり、ミュージシャンのKANが亡くなった。
珍しい癌の闘病を公表したのは、今年の春だったか。その
時もファンを心配させないように、“前向きで明るい”いつも
のお茶目なKANちゃん節で。
それからずっと気になっていたけど、私がSNSをやって
ないから“近況”が分からないまま。ただ、急に彼の作品を
浴びたい日がやってくるので、夜中にYouTubeで動画を
漁りまくって、勝手に満たされていた。その度に彼が必ず
“復活”して、得意のダジャレを効かせたコメントを発して、
ファンをほっこり笑顔にするものだと・・・彼があの時
「楽観して」と言った通り、“いいイメージ”だけを思い描い
てきた。
だから、どんなに事務所の公式発表を読んでも各エンタメ
ニュースの下に書かれた一般人の追悼コメントを次々読ん
でも全くピンとこない。でもTVの全国ニュースで流れた
彼の演奏シーンを観て、「ああ・・・死んでしまったんだ」
と思ったら、涙が溢れてきて、ひとりでひとしきり泣いた。
一度退院した後、先月にはかつて音楽留学していたパリを
訪れていたようだ。久しぶりに大好きな町の空気に触れ、
新たな音作りの意欲も膨らんでいたことだろう。パーソナ
リティを務めるラジオの新コーナーも、決まっていたそう。
ビートルズの“新曲”リリースにも、即感想を発信したくら
い、音楽への熱は高まり続けていた。もうすぐ大好きなビ
リー・ジョエルも来日するというのに、逝ってしまうなんて。
やはりどうしても世間は、レコード大賞も獲った大ヒット
曲「愛は勝つ」を挙げたり褒めたりしがちだけれど。KANの
音楽の魅力は、実はあの曲以外にあると言っていい。ああ
いうTV番組コラボもののようなキャッチーな作品も器用に
作ってしまう人ではあるが、もっと上質で素晴らしい作品が
アルバムの中に山ほどある。しかもそれらをLIVEでは、ファ
ンサービスたっぷりの楽しいステージで、さらに魅力的に
披露してくれる。彼は本当に日本を代表する『チャーミング
なエンターテイナー』のひとりだった。そして最高の『ピア
ノマン』だった。間違いなく、和製エルトン・ジョンであり
ビリー・ジョエルだと思ってる。
※余談だが。「愛は勝つ」を共に編曲した小林さんも2020年に
お亡くなりに🙏
私は彼がデビューして直ぐにファンになった。ジャズっぽい
ピアノアレンジとピアノの椅子から落ちそうなほど躍動して
唄う姿に、一発で心奪われた。一時期はFCに入るほど夢中に
なった。
そうこうしてるうち編集者として、仕事で彼のLIVEを観るよう
にもなった。一度だけ、『楽屋見舞い』に呼ばれて会ったこと
がある。でも彼を前にして舞い上がり、肩書きと名前を口に
するので精一杯。彼とただ見つめ合った沈黙の時間が、今も
忘れられない。
あの時、喉まで出かけていたのだ。「私はずっとあなたの大ファ
ンです!」と。こんなことになるのなら、ドン引き覚悟で私がど
れだけKANの音楽に支えられてきたか、思いの丈を打ち明けれ
ば良かった。
ほんとうに、さみしくなるよ。今も信じたくない。
あなたとその新作が、この先もう手に届かないなんて🙏
彼が遺した言葉を胸に刻んで生きてゆく。
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今日のふたこと。「今年一番の衝撃。PRINCE死去以来のダメージ。」