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近年、19~20世紀に於ける植民地からの文化財持ち出しの返還運動、植民地主義(コロニアリズム)の清算が盛んになっていて、文化財ナショナリズムがエスカレートしています。
文化財に関しては1970年のユネスコ条約が根幹な規定ではありますが、1980年代までは「国際主義」と「ナショナリズム」と言う2方向の考え方があり、「危険な状態の遺物を安全な場所に輸出する方が原産国で粗末にされ壊されるより望ましい」とし、他方では「不適切な管理による文化財の破損は残念だが輸出による喪失よりも益し」とするのだが、私はバーミヤンの大仏爆破等を考えると「国際主義」に与したいのです。 永く植民地支配責任を究明しつつ、衆議院外務委員会で文化財に関する日韓協定の審議に参加した著者が、広く私的見解を発信すべく、結果として公的発言を問うたものです。 コロニアリズムと文化財-荒井信一著(岩波新書1376) 1970年のユネスコ条約は、文化財を「宗教的理由によるかどうかを問わず、各国が考古学上、先史学上、歴史上、文学上、美術上又は科学上重要なものとして特に指定した物件」と定義し、文化財の不法な輸出入や所蔵権譲渡を取り締まることを目的としている。 植民地支配の清算に直接拘わるのは「外国による国土占領に直接又は間接に起因する強制的な輸出及び所有権譲渡は不法であると見做す」と規定するのだが、文化財の返還・回復は締結国が外交機関を通じて要請するものとするだけなのである。 そこで、1995年にユニドロワ(UNIDROIT)条約「盗取され又は不法輸出された文化財に関する条約」として、「善意の第3者として所有していた個人・団体に対する補償をどうするべきか法的基準」を明らかにし、50年間の時効を定めつつ原産国への復帰を容易にした。 最近の返還交渉では、原産国での劣悪な環境は著しい改善が見られ、公共物として大きな注意が払われるようになり、文化財返還とポストコロニアルな和解の緊密な関係を示唆するものとして注目しなければならない。 大英博物館でエルジンマーブル、ロゼッタストーンを、ルーブル美術館でミロのヴィーナスを、シカゴ美術館で源氏物語絵巻を、ボストン美術館で種々日本美術品を、見るにつけ文化財は人類共有のもので過去の経緯は兎に角、大事に維持保管されて展示されることで「国際主義」で良いのではと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.04.03 15:34:47
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