「火垂る(ほたる)の墓(The Grave of Fireflies)」は、野坂昭如の戦争原体験を題材した作品で、名匠高畑勲監督がアニメ映画化して、比類の無い名作となっています。
兵庫県神戸市と西宮市を舞台に、戦火の下、両親を亡くした14才の兄と4才の妹が終戦後の混乱の中を必死で生き抜こうとするが、その思いも叶わずに栄養失調で妹が死を迎え、やがて食べるものにこと欠き兄も悲劇的な死を迎えていく姿を描いた物語。
高畑勲【火垂るの墓】「 埴生の宿 Home, Sweet Home 」
栄養失調で死んで行く妹の姿が、あまりにリアルで見ているのが憚られる程です。
映画「火垂るの墓」の結末で、ガリ=クルチ(Galli-Curci)の歌唱による「埴生の宿(Home Sweet Home)」の音源が利用されていますが、100年も前の録音、SP盤からの再生にも拘わらず、抵抗無く聴けるのには吃驚します。
アメリータ・ガリ=クルチ(Amelita Galli-Curci、1882年–1963年)は、イタリアのコロラトゥーラ・ソプラノ。20世紀初頭の最も偉大な女声声楽家の一人に数えられている。旧姓はガッリ(Galli)で、結婚を機に二重姓となり、これを芸名として使い続けた。
Amelita Galli-Curci - The Last Rose of Summer (1927)
日本では「庭の千草」として、学校唱歌となって親しまれています。
しかし、クルチの魅力は咽び泣くように感情を込めて歌うことにあり、「埴生の宿」同様に、曲想にマッチしているように思えます。100年前と言いますと、第一次世界大戦と言う戦争前後の時代ですので、メランコリックな歌唱が好まれたのかも知れません。