放射線の発癌リスクについて
放射線の発癌リスクについて日本には、広島・長崎への原爆投下という歴史的(アメリカの戦争犯罪の)事実があるため、放射線被ばくに関して、とりわけ敏感であることは間違いないし、また、それはやむを得ないだろう。だが、放射線被ばくについての、おそらく一番の問題は、我々一般国民が、放射線というものについて、あまり良く知らないということであり、その無知や知識不足から、いたずらに恐怖心が煽られているということのほうである。これが風評被害というものの最大要因であると自覚したほうがいい。例えば、紫外線は皮膚癌を起こす可能性があり、赤外線も白内障などの目の障害を起こす可能性があることは、おそらく多くの国民が知っているが、放射線ということになると、何か得体の知れないものがあって、それがとんでもない悪さをするかのような恐怖感が、理由もなく刷り込まれているのではないだろうか。(昔映画で見たゴジラやガメラが、確か水爆実験で放射能を浴びて巨大化した怪獣だったという影響などもあるのかな(笑)。)これは、第一に、我々の放射線についての知識が決定的に不足しているからであり、無知であるが故に漠とした恐怖心を抱きがちになるということであり、第二に、その恐怖心を煽ることで、商業的に「成功する」一部ジャーナリストやマスコミなどが存在するからであり、第三に、その煽りによって、ほとんど無意識に風評を広げてしまう人々がいるからであり、第四に、福島第一原発の事故における東京電力や政府の対応の遅さ、情報の不十分さと不正確さが、多くの国民を一層不安にしているからである等々の、複合的な結果であると見てほぼ間違いないのではあるまいか。もしもそうだとしたら、放射線に関しての恐怖は、ほとんど人為的、社会的に起きている問題だと考えていいし、そのような風評をいたずらに広げないためには、徹底して正確な情報を入手し、合理的な分析を重ねて、冷静な判断と適切な警戒心を持つこと以外にはない。(この期に及んで、不必要で盲信的な恐怖を煽り続けてる学者、ジャーナリスト、政治家は、ほとんど犯罪的ですらある。)放射線の健康への影響に関しての一つの信頼しうるデータは、国立がん研究センターの「がんのリスクの大きさ」についてのデータである。これによれば、1000mSvの放射線被ばくで、甲状腺癌の発癌相対リスクが2.5倍から約10倍とされているが、これは喫煙者の肺癌リスクや毎日2合以上飲酒する人の食道癌リスクと同じレベルとなっている。そして、これらはC型肝炎やピロリ菌感染者の発癌相対リスク(10倍以上)よりも低い。また、今回、福島第一原発で作業に当たっている人々の基準被ばく量(200mSv)が該当する150-290mSvは、1.5倍から約2.5倍の甲状腺癌リスクとなっているが、これは毎日高塩分の食品をとり続けた時の胃癌リスク、運動不足による結腸癌リスク、肥満による大腸癌リスクなどと同じベルである。そして、100mSv(100,000μSv)未満では、発癌リスクの検出は不可能である、となっている。つまり、これらのことからハッキリしているのは、放射線だけが特別危ないわけではないということであり、適度に注意さえすれば、何ら健康に悪影響を及ぼすことはない、ということである。むしろ、タバコ、毎日の飲酒、高塩分食品、運動不足、肥満等々のほうが、よっぽど発癌原因となり得るということである。現在マスコミなどが騒いでいる数ミリ・シーベルト程度は、単純計算して、24時間中6日間以上にわたって持続的に浴び続けてでもいない限り、ほとんど問題になるレベルではないだろう。(極論すれば、仮に浴びてしまったとしても、発癌リスクは約10倍程度であり、タバコや毎日2合以上飲酒と同レベルである。)これが、現在のところ、合理的に判断しうる放射線の「危険性」ということである。無論、放射線はできるだけ浴びないように心掛けるべきではあるが、ヒステリックに反応すべきものではないということが分かるはずだ。また、国立がん研究センターのサイトは、チェルノブイリ原発爆破事故の影響についても、その調査結果についての報告を掲載している。それによると、「より高い線量を被ばくした群において白血病と白内障の罹患率が上昇することが示唆されているが、それ以外は放射線被ばくに起因する健康障害は見られていない。」「ソ連当時のチェルノブイリ事故では迅速な対応がとられなかったため、一般公衆の甲状腺被ばくが非常に大きくなった。これにより、被ばく時に子供または青年であったものたちに6000名を超える甲状腺がんが発生し、2005年時点で15名の死亡例」とのことである。6000人の甲状腺癌患者の20年後の死亡が15人とは、死亡率にすると0.25%であるから、決して高い値ではないのではないだろうか。そして、結論的には、「20年の追跡研究の結果、青少年期の放射性ヨウ素への暴露と大線量をあびた緊急作業者の健康問題を除けば、チェルノブイリ事故の結果として大部分の人口においては重篤な健康問題の恐れに生きる必要がない。」「生活はチェルノブイリにより障害されたが、放射線学的立場からは個々人の健康問題に対する展望は明るいものである。」ということである。つまり、放射線は、適度に注意をしていれば、やはり決して過度に恐れるような代物ではないということなのだ。むしろ、放射線への根拠なき不安を煽り、人々の気持ちを委縮させて、風評被害をいたずらに拡大することこそ、最悪かつ最大の問題なのである。経済活動を縮小させ、復興活動自体が結果的に遅れることこそ、一番の避けるべき肝心の問題だ。