カテゴリ:読書
この間大阪出張した時に、帰りの関空の書店で見つけ、題名に惹かれて買った。こういう若者が確かにいるので、その背景を知りたいと思って読んだ。 写真のうち、「自分以外はバカ」の時代!以下の部分が全部帯。帯の長さがやたら長い。帯の下の方に引用してある漫画は、石原まこちん「THE3名様」とある。台詞が見えるかな?「オレはやるぜ・・・」「何を?」「何かを。」とあるのがおもしろい。 つまり根拠・裏付けのない「自分は他者よりも有能である」という自己認識=仮想的有能感に基づく他者卑下の心理メカニズムにつき仮説を立て、アンケート調査等を踏まえて実証し、そういう人たちが増殖している原因・背景を心理学的・社会学的に推定している。 仮想的有能感と自尊感情とのマトリックスにより、全能型、仮想型、自尊型、萎縮型の4つの型で分析をしており精緻だ。 僕が首肯した部分は、仮想的有能感をもつ若者が増えている原因として、(1)学校生活において現実には駆けっこは誰が早い、算数は誰がいちばんよくできる、リーダーシップは誰がいちばんもっっている、という序列が相対的につくのに、現代では絶対評価になっており、且つ悪いところを指摘するよりも良いところを褒めることにより序列を隠蔽していること。(2)昔のサラリーマンには当たり前だった年功序列の夢が崩れ去り、入社した時から実力主義、成果主義などと言われ、ろくに指導も受けないままいきなり実務に廻され、しかも若くてもリストラされるおそれにおびえる会社員たちは、他人が先にリストラされなければ自分の番が先に来る、と声を大にして他人の無能、自分の有能を叫ぶのが得、という風潮に陥りがちなこと。(3)ITの発達によりリアルなコミュニケーションの場が減り、人間関係が希薄化していること。面と向かってはとても言えないことも、メールだと非常にきつい表現になったりする。そうした習い性が数少ないリアルコミュニケーションの場で出てしまう。或いはその人と深くつき合ったことがないため、その人の奥深い能力や怖さが見えず、表面的に見下してしまう。 確かにそうかもしれない。僕が若いときにはまだ会社も先輩もおおらかだった。その薫陶というか、ありがたみを知っているから、僕はその恩返しを次の世代にしなきゃいけないという多少の使命感ももっているつもりだが、入社した若いときから特に先輩に世話になった覚えはないよ、という若者たちがギスギスしても、一概に責めることはできないのかもしれない。 誰もが昔の日本がそうであったような農耕社会的、相互扶助的、困った時はお互い様的考え方をしなくても、それは致し方ないことだという割り切りも必要だろう。しかし、やっぱりものには限度がある。あまりに個人主義的、自分さえよければよい、という人はチームで仕事をするような場にはそぐわない。あくまで個人の力で勝負するような道を選ぶべきだ。そこでうまくいけば賞賛は全て彼のものだし、失敗してもそれが実力だったと納得すべきなのだ。そうではなくて、甘い道を選んでおきながら、自分には甘く他人には厳しく、相対的に他者を引き下ろして自分が浮上しようなどという輩が得をする世の中ではいけない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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