韓国の龍の日記

次男のYよ。きみはおにいちゃんと全然違うね。たぶん、お母さんの血をより濃く継いだんだと思う。

お母さんはね、お兄ちゃんを産んでから身体の調子がすごく悪くなって、一度はお兄ちゃんと一緒に高いお空へ飛んでいこうかと思ったんだって。そんなに苦しかったんだよ。お父さんは鈍感だったから、お母さんがそんなに苦しかったって全然知らなかったよ。
だから君を産むまで４年の歳月が必要だった。お母さんはあんなに苦しい想いをするのだったら子どもは一人でいいと思っていたんだよ。

でも時はすべてを解決するね。３年たったら少し元気になって、お兄ちゃんのためにも弟がいた方がいいというので、君が生まれたんだ。

君はおにいちゃんと違って自力でこの世に出てきた。でもね、生まれて一ヶ月してね、お医者さんからお母さんとお父さんと呼ばれて病院に行ったら、きみの心臓の右心室と左心室の間に微細な穴があいていて、ひょっとしたら手術しなきゃいけないかもって話になったんだ。お父さんはね、もうあのとき生まれてから38年経っていたから、「どうして生まれたばかりの子どもがそんな目にあわなきゃいけないんだ、僕はもう十分生きたからできることなら代わってやりたい」と思ったんだよ。

そんな想いが神様に通じたのか、君はみるみる元気になってそのうち心臓の穴も塞がってしまった。

お父さんはね、自分や自分に似た人に厳しいんだ。自分の轍を踏んで欲しくないと思うから、つい転ばぬ先の杖をしてしまうんだね。お父さんは自分のもっていないものを持っている人には憧れちゃうから、そういう人は何でもOKなんだ。そういう意味で、君のお母さんはお父さんにないものを沢山もっているから、だから結婚したんだ。

人間はね、永遠の１／２といって、一人一人の人間は半分半分なんだよ。そして自分にはまるべきもう半分を探し求めている。

だから君はお父さんにとっては全然OKなんだ。お兄ちゃんと違って転ばぬ先の杖になる必要はない。お父さんが何にも言わなくても君は人生をうまく渡っていくだろう。

でも、ここで言いたいのは、世の中要領とか賢さ、頭の良さだけで渡っていけると思ったら大間違いということなんだ。君は生まれてからまだ６年しかたっていない割には聡すぎる。聡すぎると人生をなめる。人生をなめると、「自分がいちばん、他人はみんなバカ」みたいな勘違いをする。それがお父さんは恐い。

さっきも言ったように、君はお父さんにとってはOKなんだけど、きみが嘘をついたりサボろうとするとものすごく怒るだろう？あれはお兄ちゃんの手前ってのもあるんだ。お兄ちゃんにあれだけ厳しく当たって君に優しいばかりだとお兄ちゃんが「なんで自分だけ」と思うだろう？だからバランスをとってるんだ。心を鬼にして君を怒るんだ。お兄ちゃんを怒るときと同じ程度にね。

この間君が、できるくせにピアノの練習の手を抜いたろう？あの時怒ったら君は血の気が失せてがたがた震えていたね。あれはお父さんにとって想定外だった。お兄ちゃんは鈍感なせいかあれだけ怒っても君みたいに震えなかったから、君もOKかと思ったんだ。ごめんな。

人間ってのはだれでも得意不得意あるんだ。ある意味でのずぶとさは君よりお兄ちゃんの方が上だし、空気を読む力は君の方がおにいちゃんより上なんだ。

でも兄弟として生まれたからには、お互いに弱いところを補いあって生きていくのがいちばんいいんだ。兄弟の間でそれができたら、次は他人との間にそれを応用する。

君はお兄ちゃんの弟に生まれてラッキーだって知ってる？君みたいに生意気なやつは普通のお兄ちゃんだったらくらされっぞー（博多弁で「殴られるぞ」）。だけどお兄ちゃんは優しいからそんなことしないだろ？いいバランスなんだ。

逆に君が偉いなと思うのは、君は聡いけど、とろいお兄ちゃんをバカにしたりしないだろ？往々にして聡い人間はとろい人間をバカにし、踏みつけるものなんだ。でもそれをしない君はOKだよ。

今はお父さんの言っていることはわからないと思う。だけど、もっと勉強して、辛い目にもあって、人生を長く生きていけばきっとわかる。

お父さんはきみとお兄ちゃんとを子どもにもって幸せだと思っている。明日お父さんが死んでも君たちは立派な人になれると信じている。

でも、だからって、お父さんは明日は死なないと思うよ。
「きょうなのかな、小鳥さん？」byさとなお。

じゃ、そういうことで。