カテゴリ:読書
前に書いたけれど、日経新聞が届くといのいちばんに読んでいた連載小説「甘苦上海」が終わった。
実にくだらなかった。いつも僕はこの小説をくさしながら、「ひょっとしたら最後は大団円で終わるのでは?」という一縷の望みを託していたが、くだらないままで終わった。想定どおりではあるけれど。 高樹のぶ子の小説を読むのはこれが初めて。この人はもっとまともな小説を書く人だと思っていたけれど、この程度のものしか書けないと分かった。 紅子の元から不意に去った石井京。石井は中国人女性:周ビンをはらませていた。そのことを知って紅子は煩悶するが、周ビンの父親から「娘をよろしく」との手紙を受け、石井京にそのことを知らせなければと、まず周ビンに会いに寧波まで会いに行き、周ビンと一緒に石井京に会いに行く破目になる。 石井と深い関係になったにも関わらず、周ビンの前ではそれと悟られぬように振舞う。紅子の中で悪魔と天使が行きかう。でも周ビンのおなかの子には何の罪もないことをわかっているので、紅子の中の天使が勝ち、そのまま寧波のホテルに戻る。 食欲のない紅子は青島ビールをあおり一人ベッドに入る。そこに、空耳か現実か、誰かの来訪を告げるベルが鳴り、紅子がその人を迎え入れたのかどうか余韻を残して小説は終わる。 結局、この小説では紅子の心の振り子がワッタカッタ(行ったり来たり)するだけだった。50を過ぎたいい年こいたキャリアウーマンが、経験から学ばずワッタカッタするだけで一年間の小説をもたせて高樹のぶ子さんは何を訴えたかったのだろう? まるで今の日本の政治の停滞性、或いは郵政民営化をめぐるワッタカッタを反映した小説。別にそんなこと、小説で読まされなくても現実を新聞で読めばわかるよ。くだらなさの二乗を描いてなんになるの? 高樹のぶ子という才女。「策士策におぼれる」みたいなもんで、自らの才に恃みすぎて、自身のくだらなさを露呈してしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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