韓国の龍の日記

僕は韓国赴任前に住んでいた綱島の社宅に戻った。綱島と言っても、綱島駅からは徒歩25分。どちらかというと市営地下鉄の新羽駅の方が近くて、そこからは徒歩10分。

このあたりは韓国に行く前は準工業地帯で、町工場が多かった。僕のシンガポールの後任がこの社宅に住んでいて、僕がシンガポールから日本に戻るときにこの社宅にはいると言うと、「あそこはな、日曜日の朝から町工場がトンカントンカンいってて、そんな音の中で子どもの友達が『○○くん、あ～そぼ』って来るんだ」と言っていた。

ちょうど僕が韓国に赴任する直前に、準工業地帯から住宅街に変えるというので、たくさんのマンションができた。７年前は大きいスーパーというと綱島駅近くのイトーヨーカドーまで行く必要があったが、今はある工場をつぶしてAEON（イオン）ができたので、家から徒歩５分で行けてすごく便利になった。

このAEONがいい。１階の食料品、雑貨のフロアーは２４時間営業。２階は９時までだけど自転車まで売っている。こっちに越してきてすぐ、家内と子どもの自転車を買った。しかも安い。

１階は僕から見たら宝の山だ。とにかく、バリエーションがものすごく広くて、しかも一つ一つそれぞれにおいしくて、しかも安い。しかも、清潔、安心。日本にずっと住んでいる人にとってはこれが当たり前だと思うけど、一度外国に出てみてごらんなさい。このすごさがわかる。

韓国ももはや後進国ではないから、一通り何でもある。でも日本ほどのバリエーションは断じてないし、たとえばラップ。日本のサランラップやクレラップのような腰はないし、ラップを引き出して切るときに、スパッと切れなくて伸びるのだ。しかもふにゃふにゃ。ラップはラップだけど、日本のとは質が違う。たとえばセロテープ。これも韓国のは粘着力が弱いし、ラップ同様、セロテープケースについているカッターでは切れないからはさみで切る必要がある。日本で買ったセロテープは、最近のはコストダウンと安全性を考えてのことだろう、カッターもそのままプラスチック製だが、こちらはスパッと切れる。

こんな風でも韓国では、「まあ、しょうがないか」と思ってこれらを使うけれど、一度日本のものを知ってしまうとやっぱり日本のものはいいなあと思ってしまう。しかも日本のはそれでいて安い。

もうちょっと大きなもので言うと、銀行のキャッシュディスペンサー。日本のは記帳するとき、機械の中でページを自動的にめくってくれるが、韓国のはページが一杯になるたびに出てきて、自分の手でページをめくって入れ直さなければならない。ページめくりに手間取ると、最初からやり直し。また日本の機械は、送金を一度するとその口座番号を登録するかどうか聞いてきて、二度目、三度目には登録先がリストで出てくる。韓国の機械にはそういう気の利いた機能はついていない。

日本のイオンに売っている食料品に戻ると、たくさんのメーカーが競い合っているからこれだけのバリエーションができるのだろうけど、生産サイドから言ったらコストパフォーマンスはよくない（生産性があがらない）。しかもデフレだから売値は安く抑えざるを得ない。結局得をするのは消費者だ。一消費者としてはとてもありがたいと思う。

先ほど述べたキャッシュディスペンサー。かつてこれを輸出しようとしたけれど、「そこまでの機能は必要ないからもっと安い方がいい」ということで採用にならなかったと誰かに聞いた。でも、一度この日本の機械の利便性を知ったら安かろう、機能がなかろうの機械はつらい。

思うのだけど、日本はこれだけ気の利いた高機能製品をたくさんつくっているのに、それをアピールするのが非常に下手。それで、結局「グローバルスタンダード」という米国発のまやかしにだまされて、良い物を非常に安く輸出して、それでも中国企業に負けたりする。僕は思うけれど、日本の製品はそれだけの価値はあるのだから、他の外国製よりも２割増しくらいで売っても罰は当たらないし、たとえば韓国や中国でも富める人はそれだけの支払い余力はあるのだから買ってくれると思う。

それを良い物を中国価格で売って、売れども売れども儲からない、また、コストを下げるために生産工場を中国に移転したりして、日本国内の雇用が生まれないという錯誤的な状況に陥っている。

政治や経営にもっと哲学のある人がつくべきだと思う。

あ、それで思い出したけど、「立ち上がれ！日本」。公約だかマニフェストだかは(1)消費税率アップ、(2)改憲、(3)・・・忘れた。やっぱり古い体質の人たちが新しいことをやろうとしてもこういう発想しか出てこないのかとため息が出る。確かに、新聞や世論調査では、公約を頑なに守って消費税を４年間は上げないという鳩山氏に対して、財源もはっきりしないでばらまき的な拡張政策をとり、国債を増やすばかりの現状を懸念して消費税は上げてもいいという国民も結構多い。消費税を上げないことが次の選挙対策になると信じて疑わない鳩山さんの頭の固さも相当なものだが、「立ち上がれ！」の方も、消費税を上げるのは一部の人には受け入れられるにしても、それで何をするかがはっきりしていなければ、単に民主党とは反対の軸を打ち出しましたに過ぎない。

また、改憲など、今の時勢で国民の誰の関心にものぼっていない。国民が望んでいるのは、経済がよくなること、それと雇用が増えることだろう。ほんと、ずれまくっている。
「立ち上がれ！」を支援している石原さんもいい加減焼きが回っている。（まあ、この人は元々改憲派だから、単にぶれていないというだけのことかもしれない）

民主党も民主党だが、全く存在感のない自民党も自民党。第三の軸が出てきたと思ったら、それもずれまくっている。

ま、いいや、僕には宝の山のイオンがある。イオンに行くたびにうれしくて笑みがこぼれる。そのうちに、全てはよくなるだろう。