カテゴリ:第一章 061 ~ 122 話
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翌朝、こういちが一汗かいてシャワーを浴びているころ、 4~5人の修行僧達は、食料や飲料水を荷車に載せて出発していった。 いつもの朝食後、最初の門の近くに数人の房長と修行僧達の姿が見えた。 その中に、クンナ、スンチャ、チュウランの姿もあった。 利江 「あれは何のために皆さん集まっているの?」 スウラン 「あれ、総本山に行く人の案内、立会人になる人。」 朝食と着替えを済ませた利江、スウランと一緒に建屋に出ていた。 最初の門の前には、20~30分置きに、1人~数人の人が尋ねて来る。 利江 「もしかして、あの人達が[入山証]を持っている人達・・・?」 スウラン 「そうだ。 師範から指名された者が同行する。」 利江 「立会人も武器を持っていくの?」 スウラン 「道中、危ない。 入山試合、全員礼儀知るとは限らない。 突然襲われることもある。 立会人もだ。」 利江 「それじゃ、あそこのみなさんは・・・・」 スウラン 「ここから先、腕が達つものしか立会人になれない。 あのメンバーに入れる。修行僧の目指すとこ。」 利江 「そうなんだ・・・・」 ゆうすけ 「利江ちゃ~ん♪」 手を振り、走り寄るゆうすけ。 ゆうすけ 「準備早いなぁ。。。」 利江 「手ぶらでいいんでしょ?」 ゆうすけ 「そうだけど・・・・。 スウランはお見送りか。。。」 スウラン 「スウラン、まだ未熟。まだ選ばれない。」 ゆうすけ 「姉さんのように選ばれるようにがんばろうな。」 スウラン 「ゆうすけ、いいこと言う。 スウラン、がんばる。」 ゆうすけ 「その調子で♪」 利江 「あっ、こういち君だ。。。」 灰色の胴着を肩にぶら下げ、こういちがこちらに向かって歩いてきた。 こういち 「二人とも早いなぁ。。。 おぃ、手ブラかよ、水筒ぐらい持って行った方がいい。 一時間とちょっとは歩くぜ。」 利江 「あら、じゃ取ってくるわ。。。」 慌てて駆け出す 利江。 ゆうすけ 「言うの忘れてた・・・・^ ^;;; 」 スウラン 「こういち。。。 この日を迎えても、いつもと変わらない。 凄い。 みんな気合入っているのに。」 こういち 「気合は入っているさ♪ ただ、今から入り過ぎても・・・・ね♪」 スウラン 「スウラン、まだ行った事ない。 こういち、全員と相手するのか?」 こういち 「おいらとやるのは、勝ち抜いた数組だけさ。 全員とやってもいいんだけど・・・・・ でも、参加者は、まず予選みたいなところを勝ち抜く方がいいんだろうね。 体も温まるが、何より自信に繋がるし、他流試合が出来るいいチャンスさ。」 ゆうすけ 「たまぁにその予選でボロボロになっちゃう勝者もいるけど・・・・。」 門のところでは、立会人が一人、また一人と減っていく。 そして、今、最後の一人のチュウランが門の前にいる 侯 玉穂、候 玲訓 と挨拶して 出立していった。 利江 「おまたせ~♪」 ゆうすけ 「さぁて、行くか。。。」 スウラン 「スウラン、ここまで。 帰り待つ。」 利江 「じゃ、行ってくるわね。」 三人はスウランに手を振り、門を出て行った。 ~~ ~~ ~~ 横幅 2m 程度の上り坂の道、時折大きな石が埋まっていて赤土が硬く締まった路面を、 てくてくと歩く3人。 利江 「総本山だっけ、そこまでの道はちゃんとあるのね。」 ゆうすけ 「来るときは近道・・・・というより、遠回りしないように来たからね。 道なき道みたいなところも通ったけど。。。」 こういち 「そろそろ始まりだしたな。」 利江 「えっ・・・!? 」 利江とゆうすけは、前方を注意深く見渡している。 しばらく歩いていくと、道の両脇に倒れた人がいた。 ゆうすけ 「入山試合か・・・・・」 こういち 「全然現れない時もあれば、かなり多くの試合がある時とバラバラなんだ。 利江ちゃん、介護はおろか声も掛けちゃダメだよ。 ここの通りでは情けは無用なのさ。」 利江 「は、はい・・・・。」 三人は、傷ついた格闘家の脇を静かに通り過ぎる。 利江 「今の人、かろうじて息はあったみたい・・・・・」 こういち 「力の差があった場合は、早めに『参った』を言えば命は助かることが多いさ。 無理すると・・・・・」 利江 「こういち君は襲われないの・・・?」 こういち 「一度もないよ。 立会人が付かないだろ? 関係者じゃないと思うんだろうね。」 利江 「ふぅ~ん。。。」 ゆうすけ 「おぃ、前の方で何か・・・・・」 前方では、チュウランを立会人とする 侯 玉穂、候 玲訓 の三人が、立ち止まっていた。 チュウラン 「何かいるっ」 侯 玉穂(こうぎょくすい) 「うむ。」 候 玲訓(こうれいくん) 「・・・・」 3人は左前方の茂みを見つめている。 茂みの中には2つの瞳が怪しく光っている。 すると突然、体長 2m はあろうかというドデカく黒い野生山猫が姿を現したっ 牙が少し長く、トラを思わせるほどガッチリとした体つきだ。 ガルルルルル 侯 玉穂(こうぎょくすい) 「私が相手をする。」 二人を制し、前に立つ 侯 玉穂 。 シャキン シャキーン 短い棒を伸ばし、一端から槍のような剣先を出して構える。 それを見た巨大な山猫は、目付きを変え、姿勢を低くしお尻を少し上げ、 戦闘態勢に入った。 チュウラン ( 山猫は、この 侯 玉穂 の放つ [気] に反応した。 強いやつと判断して本気で倒しにかかるようだ。 ) グァウーーー グァウーーー 侯 玉穂 をけん制する山猫、お尻をモゾモゾと動かし、まさに飛び掛ろうとした瞬間、 こういち 「ちょっと待って~♪」 と 侯 玉穂 を制し先頭に立つこういち。 チュンラン 「こ、こういちっ」 山猫はこういちを見て飛び掛るのを止めた。 こういちを見つめる山猫。 その時っ! !! チュウラン 「なっ!」 侯 玉穂 「っ!」 候 玲訓 「うっ!」 突然、同時に三人が何かに反応した。 すると、山猫も姿勢を起こし目付きが穏やかになり、一歩、また一歩と後退していく。 そして後ろに向き直ると、再び茂みの中へと走り去っていった。 こういち 「あきらめちゃったみたい ^ ^v 」 利江 「こういち君、大丈夫・・・?」 ゆうすけ 「なんてデカさなんだ・・・・」 二人が追いついてきた。 侯 玉穂 と 候 玲訓 は顔を見合わせる。 チュウラン ( い、今の一瞬のあれは・・・・ 少なくともあの山猫は、侯 玉穂 とは戦おうとしていた。 だが、こういちと対じした時には何かを感じて逃げる選択をしていた・・・・ ) -つづく- (うっ、また・・・・) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年09月14日 15時53分07秒
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