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カテゴリ:アクション
「ボーン・アルティメイタム」 The Bourne Ultimatum 2007年 アメリカ映画 監督 ポール・グリーングラス 出演 マット・デイモン ジョアン・アレン ジュリア・スタイルズ デヴィッド・ストラザーン 第1作、第2作を紹介しましたので、やはり、この第3作・完結編を紹介しなければならないでしょう。この3作、しっかりと繋がったお話なので、「ボーン・アイデンティティ」が第1話、「ボーン・スプレマシー」と、本作が、第2話の前後編といった方がしっくりくると思います。(しかし、この3作の題名って、何とかならんかったのですかね。1・2・3という数字が入っていないので、英語の苦手なぼくは、どの順番かよくわからないです。ちなみに、“アルティメイタム”というのは、“最後通牒”という意味らしいです。) マリーを殺した男への復讐を果たしてから半年後、ロシアでの傷を癒したジェイソン・ボーン(マット・デイモン)は、トレッド・ストーン計画の首謀者を捜し出し、決着をつけようと動き出します。 その手始めとして、新聞にトレッド・ストーン計画と、ジェイソン・ボーンについての記事を書いた、イギリスの新聞記者、サイモン・ロスとの接触を試みたところ、すでにトレッド・ストーン計画は終了しており、新たにブラック・ブライアー作戦が進行していて、そうなったのはボーン自身がきっかけとなった事を聞かされます。 ブラック・ブライアー作戦は、トップシークレットであり、その存在を知っているサイモン・ロスを、CIAのニューヨーク支局が危険人物と判断し、逮捕の指示を出していて、ボーンと接触したところへ、CIAの局員が、サイモン・ロスを逮捕しようと現れます。 それを悟ったボーンは、彼を守りながら逃走しようとするが、パニックを起こしてしまったロスは、ボーンの指示に従わなかった為、ついにブラック・ブライアーによって生み出された暗殺者に殺害されてしまいます。 手がかりを失ったボーンは、ロスの遺留品から糸をたぐり始めて行くが、その先で思わぬ協力者を得ることとなるのです。 やっぱりいいですね、このシリーズ。アクションだけでなく、知的好奇心をくすぐられるボーンとCIAと知恵比べの醍醐味を十二分に味わうことができる、完成度の高い3部作です。 とりわけ、本作は、前2作と比べ、アクション(追いかけっこという言い方もある。)が、際立って面白いです。 冒頭のロンドン・ウォータールー駅での、新聞記者を守りながら、CIAの追っ手を次々と倒していくボーンのアクション、中盤の、モロッコ・タンジールでの、新たな相棒ニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)を守るための、“ブラック・ブライアー”の殺し屋との追っかけっこ(ニッキーは、第1作で“トレッド・ストーン”で、ボーンたちの後方支援を担当していた女性です。第2作でも、ボーンの指名により、交渉役として登場しており、本作では、ボーンの標的、“トレッド・ストーン”の中心的役割を担っていながら、新聞記者ロスに情報を売った男、マドリード支局長ダニエルズのもとで働いていました。実はボーン以外に全3作出演しているのは彼女だけです。)、そして、クライマックスのニューヨークでのカーチェイス、グリーングラス監督お得意の短いカットをつないだ、スピード感あふれるアクションが冴えわたっています。 このように、非常に完成度の高い本作ですが、僕は、2点気になったことがあります。 ひとつめは、新聞記者サイモン・ロスの非常に空気の読めない行動についてです。 彼は、アメリカCIAの、あまりにも人権を無視した恐ろしい作戦、“トレッド・ストーン計画”について、スクープ記事を書いたのにもかかわらず、警戒心が、あまりにもなさすぎではないでしょうか。 あんなトップ・シークレットを暴露する記事を、実名・顔写真付きで、万人注視の新聞というメディアに載せておきながら、自らの命に危険が及ぶということを考えなかったのでしょうか。 しかも、いざ命の危険にさらされた途端、パニックになって、せっかくボーンが教えてくれた監視カメラの死角から外れて、自身の姿をさらしてしまい、結局始末されてしまったという体たらく、あまりにも情けなさすぎて、悲しくなってしまいました。 もうひとつは、“トレッド・ストーン計画”の改良版として、全世界の監視カメラや電話回線などに自由にアクセスでき、危険人物をワシントンの判断を仰ぐことなく即座に抹殺できるという、恐ろしい“ブラック・ブライアー計画”の全権を握っている、現場指揮官、ノア・ヴォーゼン(デヴィッド・ストラザーン)の行動が、あまりにも感情的すぎるということです。 冒頭のウォータールー駅での攻防の後、ボーンの行先を見失ったヴォーゼンは、前作でボーンと相対した、CIAのパメラ・ランディ(ジョアン・アレン)に、協力を求めます。そして、やってきたランディが、新聞記者サイモン・ロスの記事の情報源(つまり、ボーンの次の行先)について、部下たちに指示を与え、あっという間に、マドリード支局長ニック・ダニエルズであるという特定をしたことで、ヴォーゼンは非常に感情的に対抗心を燃やしていました。 また、ニューヨークでは、ランディとボーンのやり取りを盗聴し、ボーンと接触するであろうランディをおとりにして、ボーンをとらえようとするのですが、はやる気持ちを抑えられず、指揮官自ら現地に赴いたことで、やすやすとボーンにCIA本部への進入を許し、あろうことか、トップ・シークレットである“ブラック・ブライアー計画”の資料を簡単に盗まれているのです。(この時のヴォーゼンとボーンの電話でのやり取りも好きですね。「どこにいるんだ。」というボーンに対し、「自分のオフィスにいるよ。」とうそをつくヴォーゼン、それに対し、「オフィスにいるなら自分の前にいるはずだ。」と答えるボーン、そこで初めて、ボーンに裏をかかれたことに気がつきます。) こんな一時の感情に行動が左右される男に、“ブラック・ブライアー計画”の全権を任せていいのでしょうか。国家に対し、驚異を与えそうな人物を、未然に判断し、抹殺するという“ブラック・ブライアー計画”です。その判断をする人物が、こんなに感情的な性格では、はっきり言って、怖くてたまりません。 という風に、若干気になる部分がありつつも、ハラハラドキドキの繰り返しの中、いつの間にかジェイソン・ボーンに感情移入し、ラストは、ニッキーの笑顔とともに、すっきりした気持ちになれる、頭脳戦もアクションも見ごたえのある、完成度の高いシリーズの完結編を、今回は紹介しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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