ラストに関連のBack numberを追加しました。
早くから天文観測が発達していた古代エジプトでは、正確な東西南北の方角を知っていた。
太陽の沈む方角であるナイル川の西に死者は埋葬され、
東から登る太陽と共に再生復活する事を願い、
決して沈む事のない星(北斗)の輝く北の方角は永遠の命を得られる所で、またそれを願う方角だった。
※ テーベの東に神殿が造営されているのに対して西岸は葬祭殿と墓所になっています。)
「死者の書」とカノプス
オシリス神の神話
古代エジプトの死生観とミイラ造り
来世によみがえる為のテキスト(古王国時代、中王国時大、新王国時代)
古王国時代(ピラミッド・テキスト)
中王国時代(コフィン・テキスト)
新王国時代(死者の書)
カノプス壺(canopic jar)
ネコのミイラ
オシリス神の神話(概略)
古代エジプト、ヘリオポリス(Heliopolis)(太陽の街)の創世神話から
ヘリオポリス創世の9柱(ちゅう)の一人であるラー (Ra)(太陽) は、そのまま太陽神であり、ヘリオポリスでも重要な神様の一人。
その太陽神ラーの後を継承したのが、その子であるオシリス(Osiris)。
オシリスは世界を統治しますが、妬んだ弟(セト)によってオシリスは二度殺害される。
最初の時は、妻のイシスが亡くなったオシリス見つけて彼を蘇らせ事無きを得るが、二度目は体をバラバラに刻まれて殺され、かつナイル川に投げ込まれたのである。
その為に2度目はイシスの力でも、オシリスの体を完全な形で蘇えりさせる事ができなかった。
※ 生殖器が既に魚に食べられてしまっていたらしい。
よって、セトに殺害されたオシリスは現世に現われることが出来なくなり、神々の審判により、現世はホルス(オシリスの息子)が統治し、冥界をオシリスが支配する事になったと言う。
古代エジプトの死生観とミイラ造り
再生復活とは冥界で蘇ることで、蘇る時に身体が完全な事が再生復活に重要となる。
それがミイラ作りの理念らしい。
※ ギザの大ピラミッドが建設される頃まで、現世の王がホルスの化身or代理人とする神王理念はこの神話からきているようです。
エジプト神話においては、人間は肉体と魂(バー)と魂魄(カー)の3つの要素から成り立っていたとされ、人が死ぬと魂(バー)は肉体から離れ冥界へ行くが、
肉体が存在していれば魂魄(カー)が、魂(バー)を肉体へ戻し、
蘇る事ができると信じられていた。
その為、肉体の保存は絶対に必要となり、ミイラ造りが行われたらしい。
最も、時代時代でその考え方も違ったらしいし、やり方もかなり違ったのは確からしい。
何しろエジプト史は3000年ですから・・
来世によみがえる為のテキスト(古王国時代、中王国時大、新王国時代)
古王国時代、中王国時大、新王国時代とかなり違いがあるのでちょっと面白いです
古王国時代(ピラミッド・テキスト)
死者(王や王族)が来世に無事な旅ができるようにと祈る文書(来世で復活)
orそのまじないの文書(お経に相当するもの)が埋葬室の壁に書かれた物。
それが古王国時代のピラミッド・テキストと呼ばれるもの。
中王国時代(コフィン・テキスト)
飢えや渇きから死者を守る。
来世に何者にも変身ができる。
来世への旅の途中の危険な事態を避けてくれる(旅の安全祈願)のようなもの。
つまり中王国時代(コフィン・テキスト)は来世の生活が豊かで幸福なものになる事を保証する内容らしい。
ちょっと古王国時代より欲張りに・・。
文書は、壁ではなく、木製の棺やその蓋に記されたので、コフィン(棺)、テキストと呼ばれる。
その風習は、王や王族だけでなく、貴族や神官などへも広がっている。
下はルーブル美術館所蔵のコフイン・テキスト?
新王国時代(死者の書)
新王国時代になると、王を神聖視する風潮は薄れる。
復活再生(来世=冥界)は王だけに限らなかった。
現世で行いが正しく、手続きさえ間違わなければ誰でも(復活)できると考えられた。
つまり、この時代には財力さえあれば誰でもok? 王族や神官に限られず金持ちにも広まった。
かくして、王以外の場合の葬儀は、神聖さを装いながらも予算に合わせて行われ.
BSになる。
例えば、墓に描く絵もあらかじめパターンが幾つかあり、その中で選び、復活に必要なミイラさえ、予算で手抜きがされたらしい。
まるで現代の日本の葬儀事情に似ていますね。
墓に納めるヒエログリフの呪文も限られ、神官から買い求める事もできるようになっていたらしいから日本で言う、神社のお守りとか、般若心経のコピーのようなものに近い。
葬儀で唱えられる「死者の書」は本来は200章に近い経文のようなものがパピルスに書かれているものですが、予算方式になれば、自分の欲しい章のみ書いてもらう方式となるので、実際、全章コンプリートされたものの発見はなされていないらしい。
簡単に言えば「死者の書」は冥界へ手引き書。死後の冥界での審判と、死後の冥界での暮らしの手引き書と言える。
そしてそれは予算次第で差が付く時代となった。
それにしてもお金主義がこの時代の特徴。
パピルスの中に描かれる絵も、人気作家であれば高価になる。よって安くすませたい人の為に、あらかじめ名前の箇所だけ空欄になっていると言う出来合いの既製品もあったらしい。
また、その死者の書は直接ミイラの脇に添えられる場合もあれば神像のついた豪華な木箱に入れられる場合と何のへんてつもないただの木箱の場合に入れられると言うランク違いもあった。
本当に日本の葬儀社とのやりとりみたいです
墓には、自分の買ったお気に入りの章の挿絵が一つor東西南北に描かれ、冥界への旅の安全が祈願される。
少しでもお金をかけて無事に来世にたどり着きたいと願ったわけですね。
下はお土産屋の品ですが、おそらく「死者の書」を真似たものだと思います。
天秤で秤られ、審判を受けている図のようです。恐らく実際のものより綺麗に描かれていると思います。お土産用ですから・・。
カノプス壺(canopic jar)
カノプス壺の紹介がまだだったので少し乗せます。
ミイラの章で説明しましたが、ミイラを作る時、心臓を体に残し、4つの臓器(肝臓、肺、胃、腸)は「カノプス壺」と呼ばれる壷に入れられ大切に保管されました。(残りは捨てられる。)
肝臓を入れる 人頭のカノプスはイムセティ・・イシス(オシリスの妻)説が多いです。
肺を入れる ヒヒ頭のカノプスはハピ・・・・ネフティス(イシス妹)説も強いです。
胃を入れる ジャッカルのカノポスはドゥアムトエフorドゥアムテフ・・ネイト
腸を入れる ハヤブサのカノポスはケベフセヌエフorケベフセヌフ・・・セルケト
※ 蓋にはお守りとしてホルス神の4人の子供たちの顔がかたどられているとする説もありますが、ホルス自体のラーの息子とオシリスとイシスの息子説がありはっきりしていない。
下はカイロ考古学博物館所蔵のカノポスですが、カルトナージュで作ったか、簡単な素焼きの焼き物のようです。いずれにしろ安っぽいです。
下はカイロ考古学博物館所蔵のツタンカーメン王のアラバスターのカノプスです。
頭が人間になっているので、時代や考えで異なるのかもしれません。
ネコのミイラ
もう一つミイラでupし忘れたネコのミイラ「ミュウ」です。
死者の書の17章ではネコのミイラには聖樹を汚そうとする大蛇を斬り殺す役割があったとされる。
末期王朝ではネコは下エジプトのブバスティス(タニス~メンフィスの間)で、バステト女神として信仰がさかんになった。
多くのネコの像やミイラがバステト女神の神殿に奉納されたらしい。
Back number
リンク
古代エジプトのミイラと棺 1
リンク
古代エジプトのミイラと棺 2 (容器)
リンク
古代エジプトのミイラと棺 3 (カルトナージュ)
「死者の書」とカノプス