前門の虎、後門の狼　<年子を抱えて>

遊びに来た妹が「この家はいつもきれいだよね～」と言った。
そりゃそうさ、私は掃除や片付けが好きなんだから。

妹のアパートには一度だけ訪れたことがあるが、
事前に母から聞いていたとおり、物で溢れていた。
実家で暮らしている頃の部屋の状態と何ら変わりはなかった。
10月に家（配偶者の両親との二世帯住宅）が完成する予定だが、
これじゃ せっかくの新居が泣くのが目に見えているわ…。
子どもが生まれたらどんどん物が増えるというのに。

結婚が決まって実家からアパートに移る際、母に「指南してやって」と頼まれて、
整理整頓の重要性について力説したことがある。
物が多ければ多いほど、何がどこにあるかわからなくなるし掃除がしにくい。
「いつか使うかもしれない」の「いつか」なんて、まず到来しない。
貴重な収納スペースが使っていない物で埋め尽くされるなんて家賃の無駄。
床に物を置くな。テーブルの上に物を出しっぱなしにするな。
雑誌は最新号だけとっておいて、前の号は処分せよ。等々。

しかし、何を言っても妹の返答は一様に「まぁね」だった。
（それって答えになっていないと思うんだけど…）
「まぁね」は妹の口癖でもあるが、本当にわかっているのか。
わかっていないな。わかっていたら、少しでも改善されるはずだもの。
アレだ、妹はデモデモダッテちゃんだからダメなんだ。

快適な部屋にしたい、という気持ちはあるらしい。
とはいえ、どんなに具体的にアドバイスしても、何も変わらない。
短時間のパートを週に２、３日しているだけだから、時間が捻出できないわけではない。
他人の家を見てうらやましがっても、自分でやる気にならないということは、
口で言うほどストレスはないということかもしれない。
所詮、捨てられネーゼの妹には無理なのだろうか。

片付けと一口に言っても、部屋の隅に物を寄せただけで片づけた気になる人もいれば、
あるべき場所に物をきちんと戻して初めて片付いたと思う人がいるように、
「片づいている」という感覚には個人差がある。
大袈裟に言うなら、だらしなくても平気な人は、処方箋が出ても実行しない。
薬をもらってもまじめに飲まないのと同じである。

新居に引っ越して、今より収納スペースが増えれば片付くと思っているからタチが悪い。
物を的確に整理する習慣をつけなければ、乱雑な住まいから抜け出すことは不可能だ。
物や住まいに対する意識から改革しなければなるまい。

物は生活を支えてくれるけど、だからといって単純に、
あればいい、多ければいい、というわけにはいかない。
それが本当に自分をサポートしてくれて、心を豊かにしてくれる物でないなら、
持っている価値なんてないのだと言っても過言ではないと思う。

今の自分が、一体どれだけの物を管理できるのかを知るには、
今持っている物を少しずつ減らしていくのが近道である。
その結果、片付けが楽になったと思えるようになった地点が自分にとっての適量だろう。