世界最大の民主主義国インドで5年に1度行われる総選挙の結果は、予想外のモディ首相率いる与党連合の勝利で終わった。
◎下馬評覆しモディ首相の与党連合が大勝
あまりにも広大で人口も多いために、総選挙は州をいくつかまとめ7回に分けて行われた。そのため結果がなかなか出なかったが、このほどほぼ勢力図が固まり、モディ首相の人民党を中心とする与党連合が、定数545議席の下院の3分の2に迫る353議席を獲得した。
選挙前は劣勢を伝えられ、野党の国民会議派(左派)に政権を奪われるか、勝っても僅差の勝利かと言われていたが、ふたを開ければ人民党など与党連合の圧勝だった。
これは、インドで圧倒的多数を占める農村部(写真)でトイレや電気の普及といった地道な生活基盤の改善策だった。
◎農村部でのトイレの圧倒的普及
トイレのない家庭など、今の日本で暮らす人たちには想像もつかないだろうが、少なくとも高度成長前の1960年代の日本には、そんな家庭は少なからず存在したし、今でもアフリカなど途上国ではそうである。
僕は、今年初め、ネパールを訪れた際、トランジットで1泊だけデリーに泊まっただけで、インドを1度も訪れていない。だから本当は、インドでその実情を見たかったのだが、もう時既に遅しのようだ。
モディ政権は、政権成立以来これまでに累計200億ドルもの予算を投じ、9500万世帯にトイレを新設したのだという。トイレ不使用人口は、5億5000万人から500万人にまで激減させたのだ。
◎エチオピアでは普通だった
僕は前にその一端を、映画『スラムドッグ$ミリオネア』で垣間見た。主人公の育ったスラムは、不潔の代名詞であり、まさに貧困とも一体だった(写真)。むろん各家庭にトイレなどなかった。
ただトイレ無しは、2016年にエチオピアを訪れた時に経験している(16年2月26日付日記:「エチオピア紀行(19):国際標準にとても達しないトイレ事情、世界最貧国の一断面」参照)。観光地でも完備しておらず、たまに設けられたトイレは汚いので、むしろ青空トイレの方が快適だった。エチオピアは、乾燥しているのでモンスーン気候帯のインドと同一視できないが、アフリカには、少なくとも農村部ではトイレ無しが普通なのだ。
◎成長軌道に乗せる道
インドは、今年になって成長率が6%台に鈍化している。この国のアキレス腱は、労働市場と小売市場が閉鎖的で、州の権力が強く、強力な構造改革ができないことだ。それもあり、数学に優れた人材が多いのに、工業が発展していない。
今後、再選されたモディ政権のもとでインドが工業力を発展させられれば、偉大な大国に成長していくだろう。
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