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カテゴリ:天文学
太陽から43億キロ以上、約29天文単位(太陽から地球までの距離が1天文単位)のも離れた宇宙空間で、1つの天体が太陽に猛スピードで突進しつつある。 ◎発見は7年前 その氷に似た天体がわずかに届く太陽光を反射した光を、チリのアタカマ砂漠のセロトロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡に取り付けられた高感度デジタルカメラが捕らえたのは、実は7年も前の2014年10月20日未明のことだった。 この時は、詳しい追跡研究はさなれず、このほどやっと天文物理学専門誌「Astrophysical Journal Letters」に投稿された。新天体については6月に報告され、「バーナーディネリ・バーンスタイン彗星」と命名された(写真=2017年10月に写した太陽から25天文単位の距離にあるバーナーディネリ・バーンスタイン彗星)。 そう新天体は、彗星だった(想像図)。太陽から43億キロ以上も離れているのに、大量の塵やガスを放出していてコマ(または尾)が確認され、しかも長周期彗星特有の極端な楕円軌道を持っているからだ(図)。 ◎公転周期は約445万年! 9月時点での計算では、バーナーディネリ・バーンスタイン彗星の公転周期は実に約445万年、遠日点距離約5万4000天文単位(約0.85光年)の超楕円軌道を取っているとされるが、太陽に接近するにつれ、その引力などによって軌道が変更され、放物線軌道に変わるかもしれないという。 バーナーディネリ・バーンスタイン彗星が注目されるのは、「オールトの雲」生まれのままの始原彗星の姿を留めていると見られるからだ。しかも核の推定直径が約150キロとこれまでに見つかっている中で最大だからだ。ちなみに欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」が2014年~2016年にかけて周回した「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」の直径はわずか4キロだった。大彗星として有名なハレー彗星も、11キロに過ぎない。 ◎太陽に最接近しても土星軌道近くまで ただ残念なことに刻々と太陽に接近しつつあるとはいえ、2031年の予測近日点は、土星軌道(9~10天文単位)のわずか外側の10.9天文単位までだ。これだけ遠いと、太陽に炙られて大量のコマと長大な尾を引くこともなく、したがって地球からは肉眼では見えない。 しかし450万年近い超長周期ということは、バーナーディネリ・バーンスタイン彗星がさほど太陽に炙られておらず、したがって細ってもいないということだ。原始のままの姿を留めた始原的彗星の顔を観測できるのだ。 ◎研究者が生涯をかけて研究できるほど 遠くても、ハワイやチリなどの巨大望遠鏡なら、よく「見える」。しかも今後10年かけて太陽に接近しながら明るさを増していく。近日点の通過は2031年1月21日で、その後は太陽系外縁部に向かって遠ざかり始めるが、少なくとも2040年代まで観測可能だろうという。 彗星の専門研究者なら、生涯付き合える絶好の研究対象だ。これによりオールトの雲の謎の解明が進むに違いない。 昨年の今日の日記:「砂漠のアラビア半島で11.5万年前のホモ・サピエンス(?)の足跡を発見、南回りの拡散ルートか」
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Last updated
2021.10.12 06:01:06
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