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カテゴリ:考古学
およそ3000年前のヨーロッパで幻覚剤が使われていた直接の証拠が見つかった。 先史時代、新旧両世界で、幻覚作用のある植物やキノコなどが祭祀などに広く使われていた間接的な証拠はすでに得られているが、今回は3000年前の古代人の毛髪を分析し、直接、幻覚作用のある薬物が検出された。初めてのことだ。 ◎意図的に埋められた毛髪 4月7日付のオンライン科学誌『Scientific Reports』で、スペイン、バリャドリード大のエリサ・ゲラ・ドセ博士らが発表した。 バルセロナ南東の地中海に浮かぶメノルカ島にはたくさんの石灰岩洞窟が発達し、観光地となっている(写真)。 1995年にその1つのエス・カリッチ洞窟(写真)で、紀元前1600年から前800年頃の、200体以上のほぼ完全な埋葬遺体が見つかった。 この墓からは、最後の300年間に作られた木製や鹿角製の筒10点が見つかり、中には極めて保存の良い毛髪が入っていた(写真)。死者を悼んでか、切られた髪を筒の中に納め、埋葬したものと見られる。 ◎「儀式的に埋められた」髪に植物アルカロイド 髪は、赤い顔料で染色されていた。「儀式的に埋められた」毛髪の持ち主は特別の役職の者、おそらくシャーマンと見られ、研究者たちは毛髪を分析した。 するとアトロピン、スコポラミン、エフェドリンというアルカロイドの存在が確認された。アトロピンとスコポラミンは、島に自生するナス科のマンドレイク(Mandragora autumnalis)やヒヨス(Hyoscyamus albus)、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stramonium)などに、エフェドリンはジョイントパイン(Ephedra fragilis)に含まれている。 ◎幻覚剤と興奮剤 このうちアトロピンとスコポラミンには幻覚作用があり、錯乱状態や知覚の変化を引き起こす。研究者たちは、シャーマンによる儀式の際、現実世界と霊界をつなぐため意図的に摂取された可能性があるとしている。 特に強力なのが、アトロピンだ。幻覚を引き起こし、空を飛ぶような感覚や自分が肉体を離れる感覚などをもたらすことがある。 もう一方のエフェドリンは、幻覚剤ではなく興奮剤だ。咳を鎮めるなど呼吸器系の治療薬としてよく使われ、風邪薬に入っている。体への影響を抑えるなどの目的で幻覚剤として使われたのか、薬として別に使われたのかは分からないという。 ◎島の文化変容の中で伝統を保存するために行われた儀式 メノルカ島の別の洞窟にも、同じような儀式が行われた痕跡がある。髪の儀式は、近隣の島や遠い外国との力関係が変化し、島の文化が変わる中で、伝統を保存するためにおそらくは「シャーマン」が行ったものかもしれない、と論文は締めくくられている。 上の写真は、エス・カリッチ洞窟から出土した木製の櫛。髪を切ったり染めたりする複雑な儀式が行われた際に用いられたのかもしれない。
昨年の今日の日記:「日本経済の信認を失わせ、沈没させる「悪い円安」を阻止せよ;円安論者の黒田日銀総裁も姿勢を修正」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202204190000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.04.19 05:37:45
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