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カテゴリ:現代史
「裸の王様」プーチンの権威とロシアの威勢が、いかに低下していることを世界に見せつけた一幕だった。 ◎30年以上続いたナゴルノカラバフ紛争 旧ソ連の構成共和国だったアゼルバイジャンとアルメニアの領土争いは、ソ連の権威が急落していた1989年以来の懸案で、その間、アゼルバイジャン国内のナゴルノカラバフをめぐって、両国は何度も戦火を交えた(地図)。 ナゴルノカラバフは、国際的にはアゼルバイジャン領と認められているが、複雑なのは領内のナゴルノカラバフ自治共和国には隣国のアルメニア系住民が多数派で、彼らはアゼルバイジャン支配を認めず、「独立共和国」を樹立していたことだ。 一方、自民族の独立共和国を援助するアルメニアは、ナゴルノカラバフのアルメニア系「独立共和国」を支援し、両国は戦火を交えた。 ◎2020年のアゼルバイジャンとアルメニアの戦闘で前者が勝利、停戦へ 2020年には、ナゴルノカラバフの戦争で、同民族のトルコからドローン供与の支援を受けたアゼルバイジャン軍がアルメニア軍を圧倒、第2次世界大戦後初めてのドローンが戦局を決めた戦争となった(22年1月19日付日記:「アフリカ、中東などの新興国、途上国の内戦・紛争に猛威を振るうドローン(無人機)、地域紛争を一変させる『貧者の先端兵器』」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202201190000/、及び16年4月6日付日記:「旧ソ連のアゼルバイジャンで内戦が再燃、再び果てしない泥沼内戦か」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201604060000/を参照=写真はナゴルノカラバフでの戦闘)。 20年11月、両国はロシアの仲介で停戦し、ナゴルノカラバフでロシア軍の停戦維持部隊が展開されていた。 ◎アゼルバイジャン軍が先端を開き、一方的経過に しかし今回、再び両国は衝突した(写真)。しかし戦いは一方的、かつ短時間で終わった。それでも戦死者は200人以上に達したとみられる。 まず19日、アゼルバイジャン軍がナゴルノカラバフで「対テロ作戦」だとする軍事行動を開始すると、アルメニア側は翌日の20日、ナゴルノカラバフでの完全な武装解除などを受け入れて完敗した。 この間、プーチンのロシアは何の仲介の手も差し伸べられなかったし、平和維持部隊のロシア軍も全く動けなかった。 ◎プーチンの介入の暇を与えずアゼルバイジャンが完勝 豊富な石油と天然ガスで国力が上のアゼルバイジャンが、プーチンが介入してくる前にと早期決着を目指し、ナゴルノカラバフのアルメニア軍側を圧倒し、「アルメニア軍を降伏」させてしまったのだ。 20年の戦争で、アルメニアとナゴルノカラバフ共和国は、プーチンの仲介でアゼルバイジャンに領土を割譲する屈辱を味わわされたが、今回は完膚なきまでにアゼルバイジャンに叩きのめされた。 ウクライナ侵略戦争前だったら、プーチンの権威はまだ旧ソ連圏諸国(独立国家共同体諸国)には大きかったから、アゼルバイジャンによるナゴルノカラバフの一方的な制圧など起こらなかっただろう。 ◎もはやCISはプーチンとロシアの権威を認めず 今後、ナゴルノカラバフ共和国のアルメニア系支配は終焉し、全土にアゼルバイジャンの支配が及ぶことになるだろう。 何のことはない。力の強いアゼルバイジャンが長年の紛争を武力で解決し、力の弱いアルメニアが涙を飲んだのだ。まさにプーチンが進めるウクライナ侵略戦争と同じ図式だ。 ただしプーチンの計算が狂ったのは、ウクライナ側の全国民的抵抗の強さと西側民主主義陣営の一致した支援で、今ではジリジリと占領地を剥ぎ取られていることだ。 5月にモスクワで開かれたロシア主導の旧ソ連圏の地域首脳会議で、プーチンの面前で、アゼルバイジャンとアルメニアの首脳が公然と口げんかを始めるという醜態が演じられた。 もう旧ソ連圏の独立国家共同体(CIS)首脳は、ベラルーシのルカシェンコ以外は誰もがプーチンをバカにすることだろう。
昨年の今日の日記:「ドイツの過去の首相、シュレーダーとメルケルの対ロシア無能・無策のツケが世界に回っている秋」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202209220000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.09.22 03:51:16
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