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家族留学奮闘記

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2023.10.11
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テーマ:海外生活(7798)
カテゴリ:その他
アメリカでの生活がスタートしてから約二ヶ月が経過した。特に秋学期が始まってからは毎日課題に追われていて一週間が瞬く間に過ぎていく。30歳を過ぎてからの留学で若い20代の学生に比べると体力面で劣るかもしれないが、そこは社会に出てから得た経験でカバーしていきたい。大学卒業後に社会経験を積んだ後にアカデミックな世界に戻ってくると大学卒業後そのまま院に進んだ人とは違う新鮮さを味わうことができる。大学4年間の後に過ごす延長期間ではなく、私にとってこの2年間は自分の今までの経験とこれからの人生を見据えるための検証期間だと捉えている。社会人の頃はただただがむしゃらに前だけを向いて頑張ってきた。定年までずっと働くだろうと思っていた会社を辞めて、転職を経験した。社会人5年目で結婚をして2人のこどもを授かった。家族を養っていくことの喜びと責任の大きさを痛感した。帰宅時の「ガチャ」という扉を開く音と共にこども達が大きな足音が聞こえてきて元気に迎えてくれる。こどもとのお風呂は騒がしいがこどもと一緒に過ごせる大事な時間だ。寝かしつけてこどもの寝顔を見ると静かな幸せと共にその日の疲れがどっと押し寄せて私もそのまま寝てしまう。
しかし、私は今「日本の日常」を捨ててアメリカにいる。こどもと妻は渡米予定だが、今はまだ日本に住んでいて離れ離れの状態だ。離れて暮らすことで自分の中で家族がいかに大きな存在であったか気付かされた。アパートに戻ってきて扉を開けても部屋は暗闇に包まれていて無音の世界が広がっている。料理は得意ではないが、生活費節約のためになるべく自炊をするようにしている。妻に下手くそな料理を笑われるような気がしてならない。この間は野菜が足りていないと思ってスーパーでアボカドを買ったのだが、全然熟しておらず硬過ぎて食べることすらできなかった。自分一人の力ではアボカドサラダも作れないのかと落ち込むと同時にこども達の面倒を見ながら料理をしてくれている妻への感謝の念が込み上げてきた。
日本にいた頃は週末にこども達を連れて車で外出することが多く、研究に打ち込めていない自分をどこか責めてしまう節があった。しかしながら、アメリカに来て週末もずっと図書館でこもって研究に励んでいるとこども達と公園で遊んでいた頃がふと恋しく思うことがある。こども達のために公園に行って昆虫探しやサッカーをしていたつもりだったが、今思うと実は外気を吸ってリフレッシュできるいい気分転換になっていた。こども達が仕事から離れる機会を週末に作ってくれていたことにもアメリカに来てから気づいた。今となっては尊い時間だったと思うのだが、当時の自分は当たり前すぎてその尊さにも気付いていなかった。「人間は失ってようやく気づく」とよく聞くが、想像力に乏しい私の場合「失わなければ気づくことができない」と表現した方が正しいのかもしれない。週末のこども達とのビデオ電話が一週間の終わりを告げる合図であり、私のアメリカでの質素な研究生活を彩るささやかな楽しみだ。
最近は定期的に手書きの手紙を書くように心がけている。アメリカから日本まで空輸で約10日間かかる分言葉選びは慎重になる。投函してからも到着するまで10日間かかるので相手の反応を想像しながら過ごす日々が生活に潤いを与えてくれる。電子メールの普及によって世界中どこにいても我々はコミュニケーションを取れるようになった。テクノロジーの発展により東京ーアメリカ間にある約10900キロ(6778マイル)の物理的距離は一気に縮まった。ただしテクノロジーによって国境の境目がなくなっても心理的距離な溝を完全に埋めることはできない。当たり前だが私はスクリーンに向かって話しかけているだけであり、ドライブやサッカーはできないしお風呂や寝かしつけも当然できない。自分が思いを込めて綴った手紙を10日後こどもが自らの手で開いた時にようやく10900キロの距離を飛び越えて家族と細い糸で繋がれた気持ちになる。
きっと完璧な生活など最初から存在しなくて何かを得ようとしたら何かを犠牲にしなくてはならなくて、我々は犠牲とその犠牲から得られるであろう成果を天秤にかけながら生活をしているのだと思う。惰性の生活を送っていたらきっと自分は家族の存在の大きさや国際郵便手紙のありがたみも気づくことなく日本でごく普通の会社員生活を送り当たり前のように電子メールやLINEに依存していただろう。社会人での留学は人生のどこかで落として忘れ去られた大事な落とし物に遭遇するようである。勇気を出して惰性を壊して再構築(reframe)することも時には必要なのかもしれない。

きたろう








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最終更新日  2023.10.11 22:33:15
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