|
全て
| カテゴリ未分類
| 欧州
| 時事問題など
| クラシック音楽
| ポピュラー音楽など
| 勤務先での自分など
| うた
| 読んだ本のこと
| 雑感
| 太田裕美ちゃん
| Lucia Popp
カテゴリ:勤務先での自分など
博識で聡明なことで知られている同僚の美女、ジーナが、僕のオフィスに現れて、こう尋ねた。
「Poppさん、なぜ、私たちは研究をするのでしょうか?」 僕は、即座に、かつ、厳かに答えたのであった。 「うむ、それは、そこに研究があるからだ」 彼女は、意味がよくわからない、という表情をした。 たしかに、答えた僕にも、意味がわからなかった。 「なぜ、研究をするのか?」 考えてみると、これは、そうとうに答えるのが難しい質問である。 ジーナがあまりにも美しい女性だから、彼女と話していると、心が乱れ、考えがまとまらない、という事情があるにしても、“そこに研究がある”に替わる説明が思い浮かばない。これは、なさけない。 うむ、おそらくこれは、十数年前に、誤って注文してしまい、しかも、あろうことか、食してしまった、あの味噌煮込みうどんによる後遺症であろう。 如何なるものかを知らずに行った、あの注文は、人生における、最大の失敗の一つと言えよう。 そうだ、失敗と言えば、実験結果が、失敗であろうが、成功であろうが、実験を行うこと自体が楽しい、という部分が、実験科学者にはある。 もちろん、好き好んで失敗する人間は、少ないだろう。失敗するとわかっていたら、実験を開始しないほうが、よいのである。そうか、だから、ジーナは、僕に実験をさせてくれないのか。うむ、今頃、気付くとは、われながら、素晴らしい。 これでも、若い頃は、実験が得意だったのだが。 いや、そもそも、さいきんは、実験をする時間が、無い。 この電子の時代に、どうしたものか、書類(テーマ提案書だとか、社内レポートであるとか、難解な医学論文などといったもの)が集まって来るので、睡魔と闘う必要が生ずる。 この書類の多さは、彼らが僕に実験をさせないために結束してしかけた陰謀の存在を疑わせるに充分な証拠ではないだろうか。いや、考えすぎかも知れない。あるいは、恋の病であるかも知れない。悩ましい。 おお、それに(紙での)書類だけでは、ない。印刷したら、とんでもない量になるであろうが、電子データだからいいと思っているのか、内容がわからないが、承認しなくてはいなくてはいけない文書などにも、時間をとられているではないか。 これでは、本来の任務である、研究に充分な時間をあてることができないではないか。 研究とは、つまり、それだけ希少で、したがって貴重なものだということになる。 だからこそ、僕たちは研究をしているのではないだろうか。 「ジーナ、この説明で、どうだろうか...?」 と話し始めた僕に向かって、超美人秘書が言った。 「Poppさんが、窓の外を眺めて、ぶつぶつおっしゃっている間に、 彼女は出て行きましたよ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年04月07日 02時12分02秒
コメント(0) | コメントを書く
[勤務先での自分など] カテゴリの最新記事
|
|