「ことば」こそ
紅梅の花「先生!、痛みだけは止めて下さい!。でも、話が出来るようにして欲しいんです。そしてお願いですから最後には『どうもお世話になりました。ありがとう!』という言葉を残して死にたいんです。だから、口の中に管なんか入れるのはやめて下さい」ある患者の切ない最後のお願いだった医師は、患者の意思を尊重し、望むようにしてあげることにした強烈な睡眠剤や痛み止めは夜だけ使うことにして昼間は意識を障害させずに、痛みだけを止めるモルヒネを頻繁に投与したこうして患者は望み通りの死を遂げたこの臨終の姿を見ていてつくづく考えさせられたのは人間は言葉を使う生き物だということだった人生の最後に何をしたいかといえば美味しい物を食べたいとか 冷たい物を飲んで喉を潤したいとかいう欲求もあるが何よりも愛する人々に言葉が喋れる状態で最後までいたいという欲求が強いのではないだろうかホスピスにおいて上手なモルヒネの使用による痛みのコントロールと共にもう一つ重要なのは素晴らしい音楽である静かな音楽も又 痛みを和らげ 心を安らげるのに役立つのではないだろうかゲーテは「もっと光を」といって死んだといわれるが私は「もっと音楽を!」といって死にたいと望みたい親しい人の言葉を聞き それらの人々の言葉を残し素晴らしい音楽に身を包まれて死んでゆきたいと願ってやまない