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「うせもの宿」3巻(最終巻)の感想です。
ネタバレ注意! ☆1巻&2巻の感想→こちら うせもの宿(1) [ 穂積 ] うせもの宿(2) [ 穂積 ] うせもの宿(3) [ 穂積 ] 「うせもの宿」完結しました。 3巻はマツウラと女将さんの過去から始まります。 どうやらマツウラは松浦篤志といい、刑務所に服役していました。 女将さんは寺島紗季という名前で、保育士をしていました。 元々二人は同じ児童養護施設で育ち、松浦が出所したときに偶然再会し会うようになりました。 松浦は紗季のことはほとんど覚えていなかったのですが、紗季はずっと松浦(通称あっちゃん)のことが好きだったので、見かけた時に強引に声をかけたのです。 紗季は女将さんとまったく雰囲気が違います。明るい女性だったんだなぁと思うとなんだか切なくなります。 この後の展開も、紗季が死んでしまうことはわかっているのでなんとも言えない気持ちになりました。 紗季が松浦を好きになったきっかけは、施設でうまく周りに溶け込めないでいるとき、みんなのお兄ちゃん的存在の松浦がかけてくれた言葉でした。 「自分の不幸に 飲まれるな」 その言葉を支えにして頑張ってきたという紗季。 だけど松浦は施設を出てからはあっという間に身を落とし、詐欺の罪で刑務所に服役していたのです。 そんな松浦はもちろん仕事にはついていないのですが、紗季は松浦が引きこもりのニートだったと勘違いしてリハビリでデートしようと言います。 もちろん紗季は松浦が好きなので下心はありましたけどね(´∀`) そんなわけでデートを重ねていく中で、どんどん紗季への気持ちが膨らむ松浦。 しかし自分は犯罪者であり、いつか紗季の元から姿を消そうと思っていました。だけどそんな時仕事でひどく落ち込んでいる紗季を抱きしめてしまい、もう紗季の元から離れないと思った松浦。 それからは紗季の気持ちに応えるようにさりげなくキスをしたりなんだかスマートだなと思いましたw でも紗季とそういう関係になって、 “紗季といれば 俺はもう一度まともな人生を歩めるかもしれない… 昼間の仕事を見つけ 頃合いを見て紗季に本当のことを話そう…” そう思えるようになった松浦の前に刑務所仲間?の柴崎が現れます。 紗季のことも突き止めた柴崎は松浦をまた犯罪の道に行かせようと脅すのです。 嫌ですねー…なんて嫌な展開なんだ…こいつが絡んで紗季が死ぬのか… そう思いながら読んでいると、松浦は柴崎に「これで犯罪は最後だ」と言います。もちろん柴崎は引く訳もなく一生つきまとってやるなどと言いやがります。 そんな柴崎に、 「だから最後の1回なんだよ 俺の最後の犯罪はさ 柴崎 お前を殺すことだよ」 おおおお…!なんとも良い展開!(そうか?) 私、基本的に偽善的な作品より物語なんだからどうせならブラックにいっちゃってほしいタイプなので、松浦やってしまえ!とか思いながら読んでましたww だけど…ナイフを持って松浦が柴崎を刺そうとしたときに現れたのは紗季…(いつの間に現れた…) なんと松浦は紗季を刺してしまいました。 紗季は松浦に殺されてしまったのです……なんという悲しすぎる展開。やってしまえとか盛り上がってた?のが嘘のように盛下がりましたw 紗季は死ぬ直前に実は松浦が刑務所にいたことも知っていて知らないふりをしていたことを告白しました。そして、松浦に重い罪を背負わせてしまったと泣くのです…自分が死にそうなのに…。そして最後に、 「私…あっちゃんと二人で… 幸せに… …あっちゃん…ごめん…」 「…好き…」 か細い声でそう言って目を閉じました…。 (´;ω;`) そして松浦はナイフを自分の首に持って行きました。 そう、今の松浦は病院でずっと寝たきりになって目を覚まさない状態なのでした。死にきれなかったんですねー…それも切ない。 そして松浦は生きているからうせもの宿の門をくぐれないけれど、紗季に会いにきたい一心で後悔をして死んだ者を見つけこの宿に案内をしていたのです。死者が伴えば何度でも宿にたどり着くことができるからです。 そして女将さんは相変わらず記憶はないものの、マツウラを見ると落ち着かなかったり、だけど見ないとそれはそれで落ち着かない、そんなふうに悶々としていると番頭さんに、 「それはまるで 恋ですね」 と言われてしまいます。 それがきっかけだったのでしょうか。少しだけ生前の記憶の断片が頭をよぎる女将さん。 それ以降少しずつ、女将さんにも変化がありました。 そんな女将さんがこの宿に来たときのことを番頭さんは話します。 この宿は大切なものを探す宿だと説明すると、大切なものなんて『彼』しかいない、救われたくない、彼をここで見つけたくないと号泣するのです。 どうすれば探し物を見つけないことが出来るか尋ね、記憶をなくせば…そう言う番頭さんの言葉どおり、宿の一番奥の部屋で一晩眠り、目覚めた時にはもう今の女将さんになっていました。 紗季がここで大切なものである松浦を見つけてしまうということは、松浦が死んだっていうことですもんね…。 それはそれで幸せなんじゃないだろうかとも思うのですが…。 結局、また門を隔てて会った二人。女将さんはまだ記憶を取り戻してはいないけどマツウラを見ると涙が止まらない。 そんな泣いている女将さんをマツウラは生前のときのように放っておくことができるはずもなく…。 生前の話をするマツウラ。そして、 「ずっと一緒にいようと約束していました その約束を 今果たします」 そう言って門を越えようとしたところで記憶をとりもどし、子どもの女将さんの姿から紗季の姿へ戻りました。 やっと会えたと抱き合う二人…しかしあくまでも門を隔ててます… 「もう離れない…これからは ずっと一緒だ…っ」 そう言う松浦ですが、紗季は、 「最後に会えてよかった」 「お願い…あなたは生きて」 そう言って、うせもの宿から出て行きました。 「生きて」がなんとも残酷な言葉に聞こえました…だけど、それが紗季の望みならばと生きる決意をする松浦はようやく現実世界で目を覚まします。 そして、世界のまぶしさに気づいたのでした。 うーん切ない…! バッドエンドにするつもりはないと言っていたマツウラですが…この結末は切ない(´;ω;`) だけど紗季に会えたことによって松浦はきっと昼の仕事を探して健全に生きていくことができたのでしょうね…。 そんなわけで3巻はまるまる二人の話でした。結末は切なかったけどよかった。とても。 そして番頭さんもずっと宿にとどまっているけれど彼は一体何者なんでしょうね。少し気になりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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