カテゴリ:story
彼がファインダーをとおして切り取った世界は
とてもシュールで もちろんその中に 私の写真も含まれていたのだけれど 彼の作品は彼の愛情で 彼の眼差しそのものだ。 そこにいる私は 歪んだ感情の塊そのものだった。 何百枚もの写真を彼のベットの上でひろげながら 一枚 とても可愛い女の子の写真を見つけた。 ちょこんとあたまに帽子をのっけて 本当に愛らしい、笑顔。 言葉にできない絶望感が私を襲った。 嗚呼、この人には、愛されない。 後に その写真の女性が彼の奥さんになったことを知る。 10年後 私は二十歳の頃の写真を眺めていた。 まったく垢抜けない自分に呆れる。 あの頃 カタチにできなかった美意識を追求したくて ホステスという仕事を初めてもう一年半が経つ。 今年初めての雪が降った。 初めての彼氏からもらったフリースのジャケットを ひっぱりだして袖を通してみた。 ぼろぼろになって捨ててしまうのが哀しくて 10年もの間 大切にしまっていたのに。 身体も心も冷たくて仕方がなかった。 想い出という暖かな毛布に包まれて ただ安らかに眠ることだけを 夢に見る 夜。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年04月19日 04時29分28秒
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