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カテゴリ:ひとりよがりのエピローグ
「もうひとつのラスト」・・・ひとりよがりのエピローグ 沢田 佳 お知らせ:香藤 絵音は同姓同名の方がおいででしたので、変更すること にします。ネットでかなり時間をかけて調べても同じ名前にヒットしなかったので、これで最終変更とさせていただきます。新しい名前は、藤名 香瑠(ふじな かおる)です。それでは主人公二人の名前を改めてご紹介します。 会沢 修司(あいざわ しゅうじ) アクアショップ「ウォーターサイド」のオーナー 藤名 香瑠(ふじな かおる) 修司の恋人、元女優、モデル。
では、 (5)私のスイートルーム 始めます・・・
それでも赤面したのをさとられないようにと、彼女を抱きよせようとした。 われながら名案だと思ったのだが、香瑠(かおる)は、ぼくのその手をすり抜け、バスルームに繋がる部屋(店舗から出入りできる部屋)に戻り、立ち止まって大して広くもない部屋の隅々を何かを探している様子だけど・・・ ぼくは、彼女にむけて伸ばした手が所在無いので下ろし、とりあえず目の前の壁に寄りかかって足を交差させてみた。たぶん、ぎこちなく見えただろうけれど、あのままだと、まるで客のいないサーカスのピエロだった・・・ それどころか、香瑠はぼくを振り向きもしない。結局、ぼくの一人芝居はブーイングさえ貰えなかったのだ・・・ 「壁紙は綺麗に貼り替えられているけど・・・」 香瑠は小刻みに顔を振ったあと、ぼくを振り返り、言った。 「ベッドは?ベッドはどこなの?」 ぼくは、やっと反撃を開始したプレーヤーのように嬉々として、部屋の端に行き、新しいドアを押し開けた。香瑠と手を繋ぐことを忘れずに。 彼女はぼくに寄り添って部屋の入り口に立った。そう、その位置。ぼくは、右手を香瑠の肩に置き、彼女の後ろに移動、左手で部屋の壁にある照明のスイッチを探し当て、オンにし、部屋を明るくした。 そして、ぼくはさっき香瑠が「ただいま!」と言った時に、何故だか言いそびれていたあの言葉を、今、口にしようと思う。ひょっとしてこんな場面を想定していたのかな、あの時、ぼくは? とにかく、「お帰り、香瑠」と、ぼくは言った。そして 「ここが、ぼくたちの部屋だよ」とも言ってみた。 香瑠は何も言わず、ぼくの身体を横に押した。(もう少しそっちに寄って、ってこと?) たぶん、そうだと思いぼくは2歩ほど横歩きをしてみた。 香瑠は、無言のまま繋いでいた手を自ら放し、ぼくの前に歩み出て、そのまま全身をぼくに預けた。 香瑠は顔だけ僕を振り返り、見上げた。飴色の髪が彼女の顔半分を覆った。ぼくは利き腕でかき上げ、彼女の顔が見えるようにした。 「ありがとう、とっても素敵よ」 それって 「ぼくのこと?」 香瑠は今日一番の魅惑的な笑みを見せて 「そう、あなたが一番。それからこの部屋、ベッドもカーテンも素敵!」 そう言うと彼女は前を向いた。 ぼくは、その時いつもの事ながら余計なひとことを口にしたんだ。 「3つ星ホテルのスイートルームには、遠く及ばないけどね」 香瑠からのコメントは期待できないジョークだ・・・ 「ばかね、修司と居られたなら、そこが私のスイートルームなのよ」 またクリーンヒットだ、香瑠のカウンターパンチ、効くなあ」
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最終更新日
2010.10.18 23:47:18
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