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2010.10.13
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カテゴリ:カテゴリ未分類

 

      「もうひとつのラスト」  ・・・ひとりよがりのエピローグ

                        

                             沢田  佳

          (4) 変わらない仕草

 

クスクス、と香瑠が笑う。そしてぼくを見上げる・・・その仕草、それだけじゃない・・・

変わらない・・・二人揃ってはいるけれど、これはぼくの願望が産んだ、夢の世界での出来事? そんな不安に駆られるほど、香瑠(かおる)は変わってない!ぼくは、たぶん、不思議そうな顔をしてて・・・これは現実なんだ!そう確信したくて香瑠の顔を覗きこみ、「不思議だ!?」そう言った。

「何が?」

「君の事だよ、君はまったく変わっていない。10年も経っているのに!」

「姉から聞かなかった?」

ああ、そうだったねと、ぼくは答えた。あちらの世界で眠っている間は、すべてがゆっくりと進むんだった。・・・ぼくの頭の中で何かが働きはじめた。答えは、スーパーコンピューターで検索したかのように早く (どのくらい早いのか、本当はまるで知らないんだけれど)導き出された。

 

「お姉さんが目覚めたこと、知っていたんだね?」

「そう、あなたのお父さんが教えてくれたのよ」 ぼくは、無言で頷く。

「私を起こしてくれた後、お父さんはすぐにこう言ったわ・・・」

ぼくは、ただ頷くだけ、もうすでに目の奥が熱くなってきた。

 

「香瑠さん、どうか私のお願いを聞いて欲しい。急かせて申し訳ないが、1日も早く息子の元へ帰ってやってくれないだろうか」

もちろん、と私は答えて

「私も今、すぐにでも会いにゆきたい!修司さんの胸に飛び込んでゆきたい!・・でも、二人の想いを叶えるには、まず体調を整えなければ・・・10年も眠っていましたから」

おう、おう「それはそうだろうね」とお父さんは仰った。

「あの時、私は照れ隠しに笑っていたでしょうね・・・」と言った香瑠は一旦下を向いたが、すぐにぼくを見上げて言った。

「修司、時間はたっぷりあるわ、10年前とは違うの、つもる話は後でいくらでもできるわ・・・」

ああ、そうだね、ぼくは彼女に同意した。

 

香瑠の腕がぼくに絡まり、肩に香瑠の頭の重さを感じた。甘い香りがぼくの鼻から進入し、脳を直撃した。香瑠から送られたナノサイズのラブレターに、ぼくのすべてが反応した。

・・・またしても、ぼくは、香瑠に切っ掛けを与えられたことになる。まあ、この際それを気にしていたんじゃしょうがない。

「ぼくたちの部屋に行かないかい?」 いい年してぼくの胸はどきどきしている。

「見せたいものがあるんだ」 香瑠はぼくの下手な芝居に乗ってくれた。

「何かしら?」

「行けばわかるさ」

彼女は頷き、ぼくの手を握った。ぼくは先に立ち、彼女の手を引いて階段を上がり、自宅のドアを開けて立ち止まると、手の平を返して部屋の中へすべらせ、香瑠の方へ顔を傾けてから、”どうぞ”、と言った。

彼女は、女優のような笑みを僕にくれながら、”ありがとう”と言った。ぼくは、思わず自分のみぞおち辺りを押さえた。久しぶりのこの感覚・・・香瑠の見事なカウンターをもらって膝が折れそうになったけど、何とか踏ん張って耐えた。

フーッと、息を吐いてぼくが顔を上げるのと、香瑠がぼくを振り返るのと同時だった。彼女は、両手で鼻と口を覆っていて、その大きな目をさらに開いて大きく瞬きをしている。そこには、もう女優はいなかった。居たのはただの、しかし、ぼくにとっては世界一の女性、藤名 香瑠(ふじな かおる)だった。

 

「ついに増築したのね!すごいじゃない!」                   そう言うと彼女は、部屋中を飛ぶように視て回った。

「すごい!キッチンが広くなってる!」これなら、お料理し易いわと感想を付け足し、                                       「すごい!システムバスも大きいのに変わってる!これなら、二人で一緒に入れるわね!」と、ぼくを振り返って嬉しそうに言った。ぼくは、それはちょっと、と言ってから「無理じゃない?」と続けた。

香瑠は、口は笑ってるけれど目が細くて鋭い、例のあの表情で、つかつかとこちらへ歩み寄り、両手を腰に当てて、早口に言った。

「大丈夫、10年ぶりに目覚めた時には、ガリガリに痩せていたのよ、母の手を借りて、リハビリ頑張って、カロリーの高いもの食べて、それで何とかウエスト58センチまで増やしたのよ、だから、大丈夫、一緒に入れるわ」

「そうだね、ぼくが両足を曲げて、その間に・・・」

「私が入るの、そして修司を全部洗ってあげるわ」

思わずぼくは、ぶるっと身震いをしてしまった。”クスリ”と香瑠が笑った。僕のほうが年上なんだぞと云おうとしたが、何とか押さえ込み、丸ごと飲み込んだ。                                          

 

 






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最終更新日  2011.04.06 00:37:06
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