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要件事実

2008年08月09日
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カテゴリ:要件事実


第6章 動産引渡請求訴訟の要件事実


あなたは,草薙氏からAパソコンを買ったところ,どういうわけか清水君がAパソコンを持っていました。
さて,あなたはどうやってAパソコンを取り戻せるでしょうか。

まず,請求の趣旨は以下の通りです。
請求の趣旨
「被告は,原告に対し,Aパソコンを引き渡せ」
(訴訟物は,「所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権」です。)

訴訟物を見ていただければ分かるとおり,所有権に基づく返還請求権としての土地引渡請求権と構造は同じですから,主張すべきことは,原告所有・被告占有です。
つまり,
原告(=あなた)はAパソコンを所有している。
被告(=清水君)はAパソコンを占有している。

ということを主張できればいいのですが,本件では,清水君はあくまでAパソコンは自分のものであり,草薙氏のことも知らないと主張していたとしましょう。ここで,草薙氏の所有権を清水君が認めてくれれば,草薙氏の所有権について自白が成立し,あなたは所有権について立証する必要がありません。しかし,今回はそうはいかないようです。

そうすると,あなたは,草薙氏がAパソコンの所有権をもっていたことを立証しなければならないのですが,どうやら,草薙氏は所有権者でなかったらしいということが分かったとします。
さて,あなたはどうしますか?
素直にAパソコンを返すというのもあるかも知れませんが,既にAパソコンをずっと使用していて返したくない場合もありますし,そもそもあなたは何も悪くありません。
何とか,返さなくていい方法ないでしょうか。

動産については,即時取得と言って,無権利者から買った場合でも,保護される場合があります。そこで,即時取得の条文を見ましょう。

(即時取得)
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。


この条文から見ると
1取引行為
2 1に基づく引渡(「占有」)
3平穏・公然・善意
4無過失
が要件事実の候補になりそうです。

しかし,3は186条によって推定されます。

 (占有の態様等に関する推定)
第百八十六条  占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
(以下省略)

さらに,4は188条で推定されます。

(占有物について行使する権利の適法の推定)
第百八十八条  占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

従って,原告所有の立証のためには,1と2だけを主張立証すれば足ります。
被告占有は,そのままです。

ということで,請求の原因として書くべきことは
「1 草薙は,原告に対し,○年○月○日,Aパソコンを代金20万円で売った。
 2 草薙は,同日,1に基づき,Aパソコンを引き渡した。
 3 被告は,Aパソコンを占有している。」

ちなみに,清水君が4の推定を覆すためには,あなたが悪意又は過失であることを立証する必要があります。
悪意とは,「知っていて」ということであり,過失とは「うっかりと」です。
もう少し過失を詳しく説明すると,調査義務の存在と調査確認義務の懈怠(さぼること)です。

要件事実編は以上です。
お疲れ様でした。


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ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月22日 20時35分16秒


2008年08月08日
カテゴリ:要件事実


第5章 賃貸借契終了に基づく不動産明渡請求権の要件事実



あなたが,清水君に土地を貸したところ,契約期間を過ぎても土地を返してくれない場合はどうしたらいいでしょうか。
やはり,最終的には裁判をするしかないので,どのように訴状を書くべきか考えてみましょう。

まず,請求の趣旨は,
「被告は,原告に対し,C土地を明渡せ」
と端的に書けばいいでしょう。
(ちなみに,訴訟物は「賃貸借契約に基づく目的物返還請求権としての土地明渡請求権」です。)
さて,請求の原因は何でしょうか。

まず,賃貸借契約が終了したことを主張するのは当然ですね。
そして,そもそもどんな契約だったのかを主張する必要もあります。

さらに,あなたは「賃貸借契約が成立し,無事に終了したのにC土地を返してくれない」と主張するのですから,C土地が賃貸借契約に基づいて引き渡されたことまで主張することが必要です。
金銭消費貸借と同じように,渡されてない物は返しようが無いというのもありますし,もし,C土地が賃貸借契約と無関係に引き渡されていたら,少なくとも契約の終了は,C土地を返せと言える根拠にならないからです。

さて,以上をまとめると,
1土地について賃貸借契約を締結したこと
2賃貸借契約に基づいて土地を引き渡したこと
3賃貸借契約が終了したこと

1は,賃貸借契約の要件事実となります。

2について,ある疑問が生じるかも知れません。清水君の占有は主張しなくていいのでしょうか。所有権に基づく返還請求権に基づく土地明渡請求権の場合には,原告所有・被告占有が要件事実でしたから,そういう疑問をもたれるかも知れません。しかし,賃貸借契約においては,契約終了後に,目的物を返還するところまでが賃借人の義務なのです。
例えば,清水君が「もう草薙氏に又貸ししたから知らないよ」と言ったら,あなたは「私は清水君に貸したのだから,清水君が責任持って返せ」と言いたくなりますよね。

3については,終了の合意などは不要で,1で定めた終了日時が経過したことを主張すれば足ります。

では,以上を請求の原因として書くとこうなります。
「1 原告は,被告との間で,〇年○月○日,C土地を,賃料月額10万円,賃貸期間同日から×年×月×日までとの約定で賃貸するとの合意をした(以下,「本件賃貸借契約」と言う)。
 2 原告は,被告に対し,〇年○月○日,本件賃貸借契約に基づき,C土地を引き渡した。
3 ×年×月×日は経過した。」

ちなみに,借地借家法が適用される場合は,このような抗弁を提出できる場合があります。
「原告と被告は,本件賃貸借契約において,建物所有を目的とすることを合意した」



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ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月22日 20時29分45秒
2008年08月07日
カテゴリ:要件事実

第4章 3不動産登記手続請求訴訟

3 抵当権保持権原の抗弁

かつて,清水君から所有権に基づく土地明渡請求された時,あなたが賃借権の抗弁を提出する場合にはどうしたら良いかとうことをやりました。
今度は,あなたが抵当権を持っているのに,所有者の清水君から「抵当権を抹消しろ」といわれた時に,どのように反論したら良いのか考えましょう。

まず,清水君からの訴状には以下のように書いてあります。
請求の趣旨
「被告は,B建物について,別紙登記目録記載の抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ」
(ちなみに,訴訟物は,「所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権」です)
請求の原因
「1 原告は,B建物を所有している。
 2 B建物について,別紙登記目録記載の被告名義の抵当権設定登記がある」

さて,あなたはこれらの請求の原因を否認できるでしょうか。
あなたは所有権者でないので,1は否認できませんね。また,あなたは,登記を持っていたいので2を否認するわけには行きません。
ということで,請求原因を否認することは出来ません。

しかし,このままでは負けてしまうので,抗弁を提出する必要があります。
では,どのような抗弁を提出したらいいでしょうか。
抵当権を主張するのだから,賃借権の時と同じように考えて,抵当権設定契約と契約に基づく登記を主張すれば良いではないかと思うかも知れません。
もちろん,それは正しいのですが,それだけでは足りません。

抵当権というのは,借金の担保ですから,借金が無いのに抵当権だけ存在すると言うのはありえません(これを,抵当権の附従性といいます)と言うことは,借金の存在も主張する必要があります。
そして抵当権が問題になるとき,借金は抵当権に担保されている債権ということになるので,抵当権で担保された借金のことを「被担保債権」と言います。
また,抵当権設定契約は,物権の発生を目的とする物権契約なので,抵当権の目的物を設定者が所有していたことも主張する必要があります(抵当権設定契約は,物権しか発生しないので,他人の物に対する抵当権設定契約は無意味なのです。)。

従って,抵当権の抗弁を提出するのに必要な要件事実はまとめると以下の通りです。
1被担保債権の発生原因事実
2抵当権設定者が抵当権者との間で,1の債権を担保するため,抵当権設定契約を締結したこと
3抵当権設定者が,2の当時その不動産を所有していたこと
4登記が2の契約に基づくこと

さて,裁判所に提出できるような文章にしましょう。
「1 被告は,原告に対し,〇年○月○日,1000万円を,弁済期×年×月×日と定めて貸し付けた。
 2 原告と被告は,〇年○月○日,原告の1つの債権を担保するため,B建物に抵当権を設定するとの合意をした。
 3 原告は,2に抵当権設定契約当時,B建物を所有していた。
 4 2の登記は,2の抵当権設定契約に基づくものである。」

1は金銭消費貸借の要件事実と同じなことにお気づきでしょうか。要件事実の中にまた要件事実というカンジでややこしく思えるかも知れませんが,書いてみると単純ですよね。



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ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月22日 20時25分43秒
2008年08月06日
カテゴリ:要件事実



2 短期取得時効

今回は,あなたが清水君のA土地を10年間占拠していた場合を考えましょう。
10年間と聞いてなんとなくピンと来ませんか?そうです。時効です。この場合,かつてやった時効は債権が消滅するので,消滅時効といいますが,今度は,権利を取得するので,取得時効と言います。

取得時効が成立しても,自動的には登記をもらえるわけではありませんので,裁判で登記を求めることになります。

あなたに所有権があって,相手が登記を持っているのですから,実は前回と良く似た構造です。
しかし,短期取得時効が絡むので,少し難しいかも知れません。

さて,どのような訴状を書けばいいのでしょうか。
まず,請求の趣旨は以下の通りにします。
「被告は,原告に対し,A土地について,〇年○月○日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ」
「〇年○月○日時効取得を原因とする」を書かなくてはならないのは,登記原因が分からないと登記できないからだと思われます。また,「登記手続をせよ」となっているのは,前回と同じです。
(ちなみに,訴訟物は「所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権」です)

さて,10年での取得時効は,短期取得時効ですから,短期取得時効の条文を見ましょう。

(所有権の取得時効)
第百六十二条  
2  十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。


ここから,要件事実の候補になりそうなものをピックアップすると,
1「所有の意思をもって」
2「平穏かつ公然に」
3「他人の物を」
4「十年間」「占有」
5「占有の開始の時に,善意」
6 5について無過失
となります。

一見1~6まで全部が要件事実になりそうな気がします。
しかし,下の条文をご覧下さい。

(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条  占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。


占有者であれば,1「所有の意思」,5のうちの「善意」,2「平穏かつ公然」が推定されるとなっています。推定されるということは,自らが立証する必要が無く,相手方が反対の事実を立証する必要があるということです。

これだけではありません。さらに次の条文をご覧下さい。

(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条  
2  前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。


4を文字通り解釈すると,10年間一切途切れなく占有していたことを立証する必要があるように思えますが,これは難しいです。そこで,186条2項のような条文があります。
本件で言えば,ある時点と,ある時点から10年経過時点の両時点での占有が立証されれば,10年間一切途切れなく占有していたことが推定されます。

また,3をそのまま解釈すると,他人の物であることを立証しなければならないように思えますが,これは自己の物についてわざわざ取得時効を主張する人はいないから「他人の物」とされただけであり,「他人の物」でなければ取得時効が成立しないわけではありません。ということで,3を立証する必要はありません。

それと,無過失と言うのは評価であって,事実ではありません。と言うことは,無過失を根拠付ける具体的事実が要件事実と呼ぶにふさわしいです。例えば,「あなたは,占有開始時に良く調査をした」という事実こそが無過失を根拠付ける具体的事実となります。

以上をまとめると,
1→不要
2→不要
3→不要
4→ある時点と,ある時点から10年経過した時点での占有
5→不要
6→無過失を根拠付ける具体的事実(評価根拠事実と呼びます)
と言うことになります。

さて,これだけでいいのでしょうか。何か忘れていませんか?そうです。時効と言えば援用ですね。
ですから,援用も要件事実となります。

ということで,請求原因としては以下のように書くべきです。

「1 原告は,N年〇月○日,A土地を占有していた
 2 原告は,(N+10)年○月○日経過時,A土地を占有していた
 3 無過失の評価根拠事実
 (1)…
 (2)…
 4 原告は,被告に対し,×年×月×日送達の本件訴状により,上記時効を援用するとの意思表示をした
 5 A土地について,別紙登記目録記載の被告名義所有権移転登記がある」

1~4までが,原告(=あなた)所有を示し,5が被告(=清水君)登記を示します。

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ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月22日 09時48分11秒
2008年08月05日
カテゴリ:要件事実


1 登記の請求

さて,あなたの所有している不動産を誰かが占有している場合については,かつてやりました。
では,あなたの所有している不動産になぜか他人の登記がある場合はどうでしょうか。
単なる登記とはいえ,他人の登記があれば売りたいと思う時に売れませんし,何かの紛争に巻き込まれるかもしれませんし,何よりカンジ悪いですよね。ですから,占有者を追い出すのと同じように,登記を抹消する訴えも出来ます。

例えば,あなたの所有しているA建物に,なぜか清水君の登記があったとします。
その場合,あなたは,どのような訴状を書けばいいのでしょうか。
まず,請求の趣旨は
「被告は,A建物について別紙登記目録記載の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ」
と書きます。
今回は,登記を抹消するので,誰か登記について相手方がいるわけでは有りません。なので,「原告に対し」と書く必要はありません。
また,「登記をする・しない」と日常用語では言いますが,実際に登記をしてくれるのは登記官であり,我々は,登記の申請手続までしかできません。従って,「抹消登記をせよ」ではなく,「抹消登記手続をせよ」と書きます。
(ちなみに,訴訟物は,「所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権」です。登記で所有権を妨害していると考えているからです)

請求の原因は,単純です。不法占拠者に対するものと同じなのです。つまり,原告所有・被告登記です。ですから,以下のようになります。
「1 原告は,〇年○月○日,A建物を所有していた
 2 A建物について,別紙登記目録記載の被告名義の所有権移転登記がある」

そして,あなたが清水君に限らず,誰か他の人にA建物を売っていた場合,負けてしまうのも,不法占拠者の場合と同じです。
つまり,清水君が以下のような所有権喪失の抗弁を提出し,主張立証されてしまうと,あなたは負けます。
「原告は,草薙に対し,×年×月×日,A建物を代金800万円で売った」

ちょっと短いですが,今回はここまでにします。






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ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月22日 09時42分44秒
2008年08月04日
カテゴリ:要件事実


第3章 4所有権に基づく不動産明渡請求の要件事実

4 占有権原の抗弁

前回は,あなたが所有者である場合の抗弁をお話しました。
今度はあなたは所有者でない場合を考えましょう。例えば,あなたは,草薙氏からC土地を借りたものの,清水君から「C土地を買ったから出て行け」と訴えられたとします。

このとき,清水君からの訴状には,
請求の趣旨
「被告は,原告に対し,甲土地を明渡せ」
請求の原因
「1 原告は,C土地を所有している。
 2 被告は,C土地を占有している。」
とあります。

あなたは所有者ではないので,1は認めるしかないですね。また,あなたはC土地を借りているので,2も認めるしかありません。
と言うことは請求原因事実の全てを認めるしかなさそうです。
従って,このままでは負けてしまいますから,あなたは,自分が正当な賃借人であることを抗弁として主張して勝たなくてはなりません。あなたは法的に言うと,賃貸借契約に基づく占有者であることを主張しますので,まず条文を見ましょう。

(賃貸借)
第六百一条  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。


条文からすると,「当事者」や「ある物」の確定と,「賃料」支払の合意が必要です。そして,賃貸借契約も一定期間,ある物を使用させることに意味があります。貸した瞬間に「返せ」と言えるのでは意味がありません。そうです,貸借型理論ですね。従って,返還時期の合意が必要なのです。
一見,これだけで十分な気もしますが,あなたが賃貸借契約に基づく占有者であることを示すには,賃貸借契約に基づく引渡を受けたことまで主張立証する必要があります。ひょっとしたら,契約とは無関係に占有している場合もありうるからです。

つまり,1賃貸借契約の締結と2賃貸借契約に基づく引渡が必要です。
そこで,あなたは以下のように抗弁を提出します。
「1 原告は,被告に対し,〇年〇月〇日,C土地を,賃料1ヶ月15万円,賃貸借期間同日から×年×月×日までとの約定で賃貸した。
 2 原告は,被告に対し,〇年〇月〇日,上記賃貸借契約に基づき,C土地を引き渡した。」



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ゼミナール要件事実(2)








最終更新日  2008年09月22日 09時40分15秒
2008年08月03日
カテゴリ:要件事実


第3章 3所有権に基づく不動産明渡請求の要件事実

3抗弁

まず,所有権喪失の抗弁についてお話します。
前回,所有権に基づく返還請求権の要件事実は,原告所有と被告占有だと申し上げました。
そうすると,面白いことに,原告所有さえ潰せれば,被告が所有者でなくても被告が勝訴してしまうのです。

例えば,あなたは自分が所有者であるとして,A土地を占拠している草薙氏を訴えました。
このとき,草薙氏が「あなたは,既に,駿河学さんにA土地を売ってしまったから,あなたは所有者ではない」と主張して,立証に成功すると,たとえ草薙氏が不法占拠者であっても,あなたとの裁判では草薙氏が勝ってしまいます。もちろん草薙氏はそのまま占拠できるというわけではなく,所有者である駿河学さんに訴えられるはずなので,妥当な結論となります。
ちゃんと裁判で提出できるように抗弁を書くと以下のようになります。
「原告は,駿河学に対し,平成〇年○月○日,A土地を代金$円で売った」

次に,対抗要件の抗弁についてお話します。
不動産が二重売買されたとき,対抗要件である登記が無いと負けるというのが,民法でのお話でした。これを要件事実に引きなおすとどうなるでしょうか。

例えば,あなたは草薙氏からB土地を買って占有を開始したものの,登記をしていませんでした。そうしたら,草薙氏は清水君にもB土地を売ってしまい,二重売買の状態になってしまったのです。
そうしているうちに,清水君はあなたを不法占拠者として訴えてきました。
つまり,
草薙氏→清水君

あなた
というようにB土地が売られたわけです。

さて,清水君からの訴状には,
請求の趣旨
「被告(=あなた)は,原告(=清水君)に対し,B土地を明渡せ」
請求の原因
「1 草薙は,〇年○月○日当時,B土地を所有していた。
 2 草薙は,原告に対し,×年×月×日,甲土地を代金3000万円で売った。
 3 被告は,B土地を占有している」
と書いてあります。
さて,あなたはそうやって認否(請求の原因を認めるか,認めないか)をしますか。
全部否認してしまえ~!と思うかも知れませんが,あなたも草薙氏からB土地を買って所有者だと言いたいわけですから,1を否認するわけには行きません。また,あなたはB土地を占有しているのですから,3も否認できません。そして,2は売買契約書等で簡単に立証できるのですから,否認は難しそうです。
つまり,請求原因の全部について自白するしかないのです。

ここで,あなたの方が先に草薙氏から買ったのだから,もはや草薙氏は所有者ではなく,所有者出ない草薙氏から買った清水君も所有者ではないと思うかも知れません。これは,民法上もかなりの議論があるとことなのですが,二重譲渡の場合は,売主にも所有権が残っているとされています。
ですから,あなたの方が先に草薙氏から買ったとしても,草薙氏はなお所有者であり,草薙氏から買った清水君も所有者なのです。

さて,このように,請求の原因の全てを自白した以上,抗弁を提出しない限りあなたは負けてしまいます。
あなたはどのように抗弁を提出すればいいのでしょうか。
どうやら,清水君はまだ登記をしていないようです。二重譲渡では,登記が無いと負けるとされていますから,登記が無いことを攻撃しましょう。
ただ,二重譲渡の状態(=対抗関係)でないと登記が無いことを攻撃できません。あくまで,登記は二重譲渡の関係にある場合に意味があるのであって,二重譲渡の状態になければ,たとえ清水君に登記が無くてもあなたが負けてしまいます。
ということで,あなたも草薙氏から買ったことと,清水君に登記が無いことを抗弁として提出しましょう。
抗弁としては
「1 草薙は,被告に対し,〇年○月○日,B土地を代金2000万円で売った。
 2 原告が対抗要件(=登記)を具備するまで,原告の所有権取得を認めない」
2が変わった書き方ですね。「清水君に登記が無いこと」そのものを立証しようとすると,不存在の証明となるので,立証が困難なのです(特に,債権譲渡の通知承諾が対抗要件になる場合など)。
じゃあ,2自体不要ではないかと思われるかも知れませんが,必ずしも対抗要件の抗弁を提出したくない時に,対抗要件の抗弁を提出したことになるのも不都合です。
 そこで,対抗要件の抗弁を提出することを明示すると共に,立証責任を相手に課すための抗弁として考えられたのが,2の書き方なのです。
所有権喪失の抗弁と同じく,相手に問題さえあれば自分が勝てるという仕組みです。

ちなみに,あなたが既に登記を備えていれば,二重譲渡であることを示した上,登記を具備したことを抗弁として提出すればいいのです。これは一種の所有権喪失の抗弁です。

「1 草薙は,被告に対し,〇年○月○日,B土地を代金2000万円で売った。
 2 草薙は,被告に対し,〇年○月○日,上記売買契約に基づき,B土地につき所有権移転登記をした。」



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ゼミナール要件事実(2)








最終更新日  2008年09月21日 23時02分27秒
2008年08月02日
カテゴリ:要件事実



第3章 2所有権に基づく不動産明渡請求の要件事実

2所有権・占有権

さて,前回は所有権に基づく返還請求権の要件事実となりそうなのは,原告所有と,被告占有でした。
そして,要件事実となるものは,立証しなくては裁判で勝てません。
さて,あなたに所有権があることをどうやって立証しますか?

登記があるから立証できるとお考えかもしれません。
しかし,登記というのは所有権があることを公に示すだけであり,登記=所有権ではないのです。せいぜい,二重売買されたときの対抗力しかありません。
ということで,登記があることは所有権の立証になりません。

では,前の所有者から買った事を示す売買契約書はどうでしょうか。
一見所有権の立証に成功したかのように見えます。しかし,今度は前の所有者が本当に所有者だったのかを立証する必要が出てきます。前の所有者の所有権の立証に成功したら…前の前の所有者…と,どんどん遡らざるをえません。
このように,所有権を直接立証することは実は困難なのです。

そこで,別の発想が必要です。そういえば,自白が成立する場合には立証が不要でした。
ということは,被告ですら争いの無い段階においては自白が成立するものとして,原告の負担を立証を緩和させればいいのです。
(厳密に言うと,ここで権利自白の話をするべきですが,割愛します)

例えば,あなたは三島さんからA土地を買ったところ,占有している草薙氏も三島さんから土地を買ったと主張していたとすれば,草薙氏も少なくとも三島さんが所有者だったことは認めていることになります。三島さんの所有については自白が成立するので,あなたは三島さんの所有まで立証する必要はありません。

つまり,あなたとしては,三島さん所有と三島さんからの買受けを主張立証すれば,あなたの所有権が立証されたことになります。

ちなみに,占有については,被告が現在の占有していることを主張立証することが必要です。実際には,自白が成立することが多いとは思いますが。

ということで,あなたが請求の原因として書くべきことは
「1 三島は〇年〇月○日当時,A土地を所有していた。
 2 三島は,原告に対し,×年×月×日,A土地を代金$円で売った。
 3 被告は,A土地を占有している」
1・2が原告たるあなたの所有の要件事実で,3が被告たる草薙氏の占有の要件事実です。

今回はここまでにしましょう。



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ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月21日 22時46分32秒
2008年08月01日
カテゴリ:要件事実



第3章 所有権に基づく不動産明渡請求の要件事実

1物権的請求権

前回までで,売買・金銭消費貸借の要件事実をお話しました。
今度は,不動産明渡請求のお話をしましょう。

売買や金銭消費貸借と違って,あまりメジャーではありませんが,万一こういうことが有ったらどうしますか。

あなたは,念願の一戸建てを建てるためA土地を買ったところ,何と草薙氏があなたのA土地を占拠していたのです。しかも,草薙氏はA土地を出て行ってくれません。

草薙氏を追い出すには,裁判しかなさそうですね。
さて,訴状を書きましょう。

まず,請求の趣旨は,
「被告は,原告に対し,A土地を明渡せ」
です。(ちなみに,訴訟物は,「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」です)
まさにあなたの求めることを端的に表していますね。

さて,請求原因は何でしょう。
そもそも,あなたはどうして草薙氏に出て行けといえるのでしょうか。
第1章は,売買契約があったから,代金を請求できました。第2章では,消費貸借契約があったから,お金を請求できました。つまり,契約が根拠でした。
しかし,本件では,あなたと草薙氏には何の契約もありません。
契約も無いのに,何か請求できるのでしょうか。
ここで,ヒントとなるのは,占有訴権(せんゆうそけん)です。
まず,「物に対する事実上の支配」を占有といい,占有している人には占有権が認められ,一定の保護があります。そして,占有権を侵害されそうになった人には占有訴権が認められるのです。

(占有保持の訴え)
第百九十八条  占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
(占有保全の訴え)
第百九十九条  占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
(占有回収の訴え)
第二百条  占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2  占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。


このように,占有権を侵害されそうになったら,占有訴権という,占有権に基づく請求権が認められます。
ということは,単なる事実上の支配にとどまらず,物に対する全面的な支配が認められる所有権にも,所有権に基づく請求権が認められて良いはずです。
これを,物権的請求権といいます。
あなたは,土地を明渡して欲しいのですから,物権的請求権のうちの所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権を行使することになります。

小難しく話してしまいましたが,所有権がある人は,「出て行け」と言える権利があるというわけであり,結論としてはご納得頂けると思います。

では,所有権に基づく返還請求権の要件事実ははなんでしょうか。
とりあえず,要件事実の候補となりそうな事柄を挙げましょう。
まず,「所有権に基づく」と言っている以上,1目的物を所有していることが必要ですね。次に,誰かが目的物を占有していなければ,訴える必要がありませんから,2相手方が,目的物を占有し,所有者の占有を妨げていることも必要です。
一見これだけで十分な気もしますが,これだけだと,誰かから借りている場合のように合法的な占有している場合も,所有権に基づく返還請求権を行使できることになります。これでは困るので,3相手方が目的物に対する正当な占有権原(=占有する根拠)を有していないことも要件事実の候補になりそうです。

ただし,3は所有者が立証するより占有者が立証した方が簡単です。例えば,所有者が占有者に占有権原が無いことを立証するより,占有者が賃貸借契約書などで占有権原を立証する方が簡単です。
なので,結局のところ,3は要件事実にはなりません。

ということで,1と2が所有権に基づく返還請求権の要件事実となります。
つまり,原告所有と被告占有が要件事実になります。

こう書くと,一見単純そうですが,所有権と占有権はなかなか難しいものです。
次回に続くとしましょう。



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【参考本】


ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年09月21日 22時43分54秒
2008年03月08日
カテゴリ:要件事実



第2章 金銭消費貸借契約

2 弁済の抗弁

さて,前回はあなたが清水君に2000万円を貸したという事例で,あなたが清水君に裁判する場合の「請求の趣旨」および「請求の原因」をお話しました。

では,清水君はどう反論することが考えられるでしょうか。
もちろん,請求原因について否認することもあるでしょう。「返還の合意は無く,贈与だった」と主張する場合もありえます。
ただ,やはり一番よくある反論は,契約成立は認めたうえで,弁済があったかなかったかですよね。
そこで,清水君が既に弁済したと思っている場合,清水君はどのように主張すればいいのでしょうか。

まず,契約成立は認めるのですから,否認ではありませんね。抗弁です。
そして,弁済と言うのは,一旦は契約が成立して,その契約の当初は問題が無かったが,お金を支払ったので,お金を貸した人の権利は消滅したというものですから,消滅の抗弁です。
抗弁は,原告の請求原因事実と同じように,要件事実に基づいて主張しなくてはなりません。
そこで,早速条文を見ましょう。

…ところが,弁済を直接定めた条文はありません。つまり,「この要件を満たせば弁済だ」とする条文が無いのです(民法474条は,第三者弁済を定めた条文であって,普通の弁済ではありません)。

そうなると,解釈で考えるしかありません。
まず,少なくとも弁済によって債権(=「お金などを支払え」と言える権利)が消滅するというのは当然と考えていいでしょう。消滅しなかったら,誰も弁済しません。
では,何故消滅するのでしょうか,それは債務(=お金などを支払う義務)の内容に見合ったものが,お金を貸した人に入るからですね。2000万円を貸したあなたの債権が消えるのは,2000万円の債務(=お金などを支払う義務)を負った清水君が2000万円をあなたに渡したからです。

突然,債権・債務と出てきましたが,大丈夫ですよね。あなたが清水君に2000万円支払えと言える権利(=債権)がある以上,清水君はあなたに2000万円を支払う義務(=債務)があります。
債権と債務は表裏一体です。

このように,1「債務の本旨に従った給付がある」と表現します。
そうすると,まず,債務の本旨に従った給付をしたという事実が,弁済の要件事実と言うことになります。

では,これだけで十分でしょうか。本問では,「被告は,原告に対し,△年△月△日,2000万円を支払った」と言うだけでいいのでしょうか。
これだけだと,単に2000万円を支払ったということしか分からず,別口債権に対する弁済をしたという可能性を否定できません。

つまり,2000万円を支払ったことは事実だが,それは2年前に貸したお金を弁済してもらっただけで,今回請求しているのは1年前に貸したお金だと言う場合もありえます。
ですから,清水君は弁済した2000万円が,今回請求された債権についてされたものであることまで主張する必要があります。これを,2「なされた給付がその債権についてされた(給付と債権の結びつき)」と言います。

清水君にしてみれば,面倒臭いなと思うところでしょうが,1も2も領収書さえあれば立証できますので,あまり面倒ではありません。
ということで,清水君が弁済の抗弁をだすには,
「被告は,原告に対し,平成〇年○月○日,本件消費貸借に基づく債務の履行として2000万円を支払った」
という事実を主張する必要があります。

ということで,弁済の抗弁は以上です。



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【参考本】


ゼミナール要件事実(2)






最終更新日  2008年04月15日 17時42分51秒

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