こんこんこんなに
え!?こんな格好をするんで!新助はまるで悲鳴のような声をあげた。次のがあたしの手描き図でございます。 「姐さん 勘弁してくださいヨ。おいら こっ恥ずかしい」「なに言ってんだい。いいかげにおし! 顔は隠れてるじゃないのサ、何が恥ずかしいものか」笠は虚無僧の天蓋(深編笠)の半分ほどの深さ大きさでてっぺんにはきつねの耳様のが編み付けてあって特注品。着物は新助のおっかさんの縫ったもの。赤いのはあたしが縫った六尺フンドシ、キリリとしてよく似合っているじゃないか、エ!?半泣きの新助を着替えさせ、鼻の頭に鍋墨を塗たくってチョイチョイとヒゲまで描くとやっぱり睨んだ通りの狐顔。いい感じじゃないか。ホレボレするような出来にうっとりしてしまったがこれを忘れちゃいけないとばかりおしまいにフンドシにくくり付けたのが狐の尻尾。これは袋状に縫って真綿を詰め込んだものでございます。もちろんあたしの自信作なので・・・フフッ。しおしおと出て行きかける新助を見かねたあたしは木戸まで付いてゆき、なおもためらう新助の背を思い切り突いてやりましたのサ。新助、始めは小さな声でしたが次第に売り声も大きくなり道行く新助にワッと駆け寄ってゆく子ども達の姿。かごをおろし、おもしろおかしげな身振りで飴を渡す新助。その様子がなんだかぼやけて見えたのはあたしの気のせいだったのでしょうか。 最終話