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バリュー投資に騙されるな!

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2016.12.03
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 
長らくお待たせいたしましたが、常識を疑おうシリーズの第一回です。
(この投稿内容はもうずっと前に書いてあったものなんですが、悪い意味で現在の投資環境下で常識にとらわれている人が少ないみたいで、今まで投稿を控えていました)
 
読者からご要望のあった内容の中から抽出します。
もし興味のあるテーマなどありましたら、上の関連記事の投稿のコメント欄または今回のコメント欄でご要望下さい。

第一回は『PER』です。
PERは低い方が良いのか?
これはきほんのきであり、最も大切な部分です。

PERとは『何年で元が取れるか?』の数値です。
PERが10倍なら投下資金は10年で元が取れます。
会社の利益は株主の利益、EPSは1株あたりの株主の利益なのです。
勘違いしないでほしいのですが、配当として還元される事で初めて株主の利益になるのではありません。
会社の利益として純資産を積み重ねることが、会社の利益=株主の利益、です。

しかし、PERは取らぬ狸の皮算用。机上の空論です。『何年で元が取れるか?』という本来の意味では役に立ちません。
何故なら、会社の利益は年々変動するからです。
成長企業では利益は年々増加しますし、衰退企業では利益は年々減少します。景気によって利益が大きく変動する企業も多いです。
そのような利益の変動において、PERは有効性を失います。
その為、PERが本来の意味合いで最も役に立つのは、将来にわたって利益が変動しない、安定した利益を上げられる企業という事になります。
 
利益が変動しなければ、PERは役に立ちます。
PERが10倍なら10年で元が取れるのです。
PERが100倍なら100年、PERが3倍なら3年です。
これは定義なので、反論は一切受け付けません。
 
会社は株主みんなのものです。株式に応じて個々の株主に所有権があります。
会社の利益が株主の利益。これは株主資本主義のルールです。
このルールが永続するのであれば、『会社の利益が毎年変動しない場合に』『株価購入代金として支払ったお金は何年で元が取れるか』がPERの意味です。

いつの時代にも万年割安株という、いつまでたっても低PERで放置されている企業があります。
いつまで経っても利益成長しない。材料もないので注目されない。景気が良くなっても、景気が悪くなっても同じような株価のまま。
いつまで経っても低PERのまま、という認識が当たり前になっています。
しかし万年割安株ほどその低いPERの意味合いを持つ事になります。
利益変動がなければ、その低いPER値の年数を保有していれば、元が取れる訳です。

一応、註釈を入れると、業績が大きく変動する景気循環株のPERが低いのは別の問題です。
景気循環株は幾ら長い間PERが低くても、万年割安株とは違います。
景気循環株は景気が悪くなった時にはPERが急上昇します。株価を大きく下げながら、PER値が急上昇します。
株価が上がらないから万年割安株、ではありません。PERが低いから万年割安株、ではありません。
景気に関わらず低PERだから、万年割安株なのです。
急激な業績悪化によるPER値の急上昇がないため、そしてその逆もないため、結果として、利益変動の小さい銘柄が万年割安株になります。

低PERには理由があります。万年割安株には理由があります。
しかし、低PERの万年割安株にこそ、PERがその真価を発揮できるのです。
利益は有効活用されないでバランスシートを意味なく肥大化させるだけかもしれません。
しかし、そのバランスシートの肥大化が純資産の増加を伴います。ひいては株主の利益が増加したという事になります。

とここまで読んで、なんだ当たり前の事を言っているだけじゃないか、と読者の皆様には思われたかもしれません。
全くその通りで申し訳ありません。きほんのき、当たり前の事を書きました。
しかしここで重要な点があります。
万年割安株のPERは低いのが当たり前というのであれば、PERが本来の意味を成す企業ではPERが低くなる、ということです。
低PERが注目されるのは、PERが単体での有効性を示さない場合が多いということです。
PERが有効性を示さない場合というのは、利益が毎年変動する企業です。
その為、言い換えると低PERが注目されるのは、(PERが本来の真価を発揮できないような)利益が変動する企業であるということです。
利益が変動する企業とは、万年割安株以外になります。
成長企業然り、衰退企業然り、景気循環株然り、です。
業績変動が大きい企業です。
利益変動に伴い現在の株価で算出するPERが年々変動する企業は、PER変動により妥当と評価される株価水準が変わり、その株価変動を期待して低PERが注目される、ということです。
単体として意味を成す珍しい指標であるPERですが、このPERが注目されるには業績変動が必要です。
何故なら、資本主義社会(≒株主資本主義社会)では長期的に経済が成長することが前提だからです。
名目GDPは短期的な変動はありますが、長期的には右肩上がりになります。これは資本主義社会の必要条件です。
そのため企業は得た利益を企業活動にまわして利益成長を目論まなくてはいけないのです。
内部留保していてもその資産価値は年々減少していきます。
それは、資本主義社会(≒株主資本主義社会)ではインフレを前提としているからです。
日本は長期デフレに陥りましたが、これは例外中の例外です。
デフレ化では健全な資本主義は成り立たず、資本主義社会を成り立たせるためにはインフレが必要条件となります。
何故なら、資本主義社会では必ず金利が発生するからです。アニマルスピリッツを潤滑油にして名目GDPを成長させるためには、時間と共にお金が増殖する必要があります。お金がお金を生み、同額のお金の価値は年々下がり続ける必要があります。
利益成長を促さない株主資本は、経営が失敗したときなどの緊急時のリスク低減にしか役立ちません。(市場からの自己防衛などの理由もありますが)
 
景気悪化の際に倒産や悪条件での資金調達に迫られる状況を回避する役には立つでしょう。
利益が出ていない時にも企業経営の幅が狭まりません。利益以上の設備投資を行う事が出来るでしょう。業績の悪い時にリスクを取ることができます。
しかし多くの場合、企業は業績を向上させなければいけません。
業績向上が健全な資本主義社会での企業命題なのです。
 
 
 
それでは、利益が大きく変動する場合でもPERは低い方が良いのでしょうか。
その問いに対する答えを導くには幾つか考え方がありますが、少なくてもそうではないパターンがある、というのが模範解答でしょう。

成長企業。これは年々利益が成長する企業です。その成長が確実視されているのであれば、投資家からの評価は高くなっています。成長の度合いが高ければ高いほど、確実であればあるほど、そして情報が周知徹底されていればいるほど、PERは高いでしょう。
成長企業が高PERになるには、投資家に評価されるまでのタイムラグが生じます。
成長企業が高PERになる前、投資家に評価される前の低PERの段階で買うことが出来るなら、それは最もリターンの大きい投資になるでしょう。会社が強気の業績予想を出す前、四季報が強気の予想をする前、そしてその企業にとって好ましい材料が出る前です。その時点では低PERでの投資も可能でしょう。しかし、PER算出の元となるパラメータであるEPS予想も低くなります。その為、矛盾してきます。その矛盾を解決する為には、EPS予想を他の投資家と変える必要があります。自ら算出したEPS予想となります。PERが低い時に成長銘柄を買うのは周知されていないデータや思惑が必要になります。
 

景気循環企業。これは業績が大きく変動します。大赤字にもなります。景気転換点では業績修正が多くなります。投資家は景気動向に敏感になります。株価は業績の先回りをします。上場企業の中で最も早く暴騰し、最も早く暴落します。業績変動はその変動に追いつきません。上方修正前に株価は暴騰します。下方修正前に株価は暴落します。PER算出の元となるパラメータであるEPSが修正される前に、株価は劇的に変動します。その為、高PERの時に株価は底を打ち、低PERの時に株価は天井を打ちます。低PERの時に景気循環企業の株を買うのはリスクが高い投資になります。
 
 
衰退企業。年々利益を低下させている企業です。場合によっては赤字が続きます。衰退がいつまで続くのかの見極めが重要になります。業績を反転させるのが先か、倒産や100%減資されるのが先か、それとも悪条件下で大規模増資するのか。座して死を待つ企業はありませんから、企業側も必死です。業績を見事V字回復させることが出来れば再生銘柄となります。再生銘柄は業績急上昇に伴い、株価も急上昇します。多くの場合は業績V字回復見込みを会社が発表してから、株価が急上昇します。この時期が、最も低PERになります。しかしその後業績が会社の思惑通りV字回復するかどうかは分かりません。財務諸表から判断するのは非常に困難です。業績が回復する前の財務諸表はとても見れたものではありません。場合によっては債務超過であったりします。あらゆる指標は見れたものではありません。目を覆うばかりです。バランスシートに載らない無形資産が業績回復の鍵を握っている事が多いです。そのような状況下での殆ど唯一の買い材料が、会社の業績回復見込予想の利益を基に算出したPERです。この低PERの時には思うようなファンダメンタル分析が出来ず、結果としてリスクが高い投資になります。
 
 
 
 
さてどうでしょうか。
「PERは低い方が良いのか?」という問いにはこれらを考慮した上で答えなければいけません。
きっと投資歴の長い人であれば、
「PERが低い方が良い場合も、そうでない場合もある」
と言うでしょう。
そして、それが何の面白みもないですが模範解答です。
 
 

以上で常識を疑えシリーズ第一回『PER』を終わります。
ここから先は余談ですので聞き流して下さい。
 

PERは低い方が良いです。
そうでない場合がある事を確り分かっていれば、それ以外の時についてはPERが低い事が良いのです。
そして、それはぶれてはいけません。
先の事は分からないのです。明日の株価は分からないのです。
そうであるなら、リスクを減らすべきです。
PERが効力を発揮しない場合を避けて投資をすればいいのです。
 
 
以上 





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Last updated  2016.12.03 11:26:23
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