カテゴリ:ひたすらマカロン
病室に戻っても管だらけなのに変りはありませんでした。
胸からはまだ体内から出血したものを捨てる袋と、看護室に心電図を送る装置が下がっているし、 点滴と尿道に刺さった管もまだ繋がったまま 起きて良いのか分からなかったけど、ベットに座ってクッシャクシャになった髪に手櫛かけて 束ね直す、腕を上げるのは少しも辛くは無いし、本当に不思議なことに首の傷も痛くない。 首よりも喉の奥が痛い、タンが絡みやすく咳が出るとその度に痛い 首周りを触ってみると、顎の下の正面と左右にバンドエイドが貼ってあるのに今更気付く、 切開したお肉をホチキスみたいな物で顎下にとめたのだろうか 首に触るとじんわりと熱い、それに痺れている、痺れているから痛くないのかな 傷には短く切ったテープが縦にペタペタ貼られていて、その上からガーゼで覆ってある。 ガーゼが何の為にくっ付いてるのか私が傷を見てショックを受けないようにか 手のひらで傷の大きさを測ってみる、15cmぐらいかな?想像していたより小さい、 私は承知の上で望んでしてもらった手術だけれど、 手術しか方法の無い人にはショックだろうから、ガーゼはやっぱり傷を隠すためなのかな。 そこに看護婦さん来て 「 〇山さん起きられましたね、良かった」 勝手に起きて正解だった。 手術後は歩いた方が良いと言われて、点滴を下げた棒にいっぱいぶら下げた状態でガラガラと ナースセンターまで歩く、誰かの見舞いでこんな後景見たことあるな、 頭はスッキリしているし、目眩も無く歩くのは辛くない。 最初はがっしり体を支えてくれていた看護婦さんも手を離して、歩き始めた幼児に対するように 褒めてくれる、すれ違う看護婦さん達も皆すごいすごいと褒めてくれる あんよ出来るのはそんなにすごい事なのか・・・・・ トイレには行くのは問題なさそうだけれど、尿道の管はまだ明日までは抜けないと言われて 少し凹む、トイレで倒れたりしたら看護婦さん大変だし仕方無いのかな 部屋に戻って横になるが昨夜ほとんど寝なかったにも拘らずまったく眠く無い ベットを起こしてもたれて座る・・・・・暇 暇つぶしはいっぱい持ってきたけれど、こんな時に目が疲れる作業をして良い物だろうか 迷っているとこにまた看護婦さんが薬を持ってくる。 切り取られた甲状腺は最後の悪あがきで大暴走するので、毎日飲んでいた薬は3倍に増えるが それは聞いていたので問題なし、喉は痛いけど水で流し込む。 看護婦さん 「 苦い薬ですよね、飲み込めるなら錠剤もありますよ。」 「 飲み込むとき痛いけど錠剤の方が良いな、これ苦い。」 「 あとこれを朝昼晩飲まなきゃならないんですけど・・・・・ルゴール。」 なんだか申し訳なさそうに小さなカップに入った物を手渡される 透明な赤茶色のとろみのある物、ヨードチンキみたい匂いも似てる 良い男を想像させる名前だがなにかで読んだ記憶がある・・・・・ 主人公が闘病中に飲ませれていた・・・・・なんの本だったか・・・・ その匂いからも不味さは想像できる、あの主人公も苦しんでいた。 でもこんなもんは一気にいけば良いんだ、舌に乗せるから不味いのが分かるんだ、 思い切って一気に喉の奥に抛り込む、ゴクリ・・・・ 最初に飲んだ薬は粉砂糖でした、でもそれのために水を全部飲んでしまっていた。 走って水を汲んで来てくれる看護婦さんすごく気の毒そうに私を見てる。 味覚を感じない部分に抛り込んだはずのルゴール君は喉の奥にべったりと貼り付いて、 いくら水を飲んでも消えてくれず、そこからものすごい主張をしてくる。 うがいをするように喉の奥まで水を溜めると少し和らぐが、飲んでしまうとまた ルゴール君がこんにちは ぐったりこれが朝昼晩・・・・・手術しなきゃ良かったかも もう編み物なんかする気にはなれない、疲れがいっぺんに押し寄せて来た感じ。 起きていた方が良いと言われて車椅子に乗せられるが、ルゴールのせいで吐き気に襲われる。 冷や汗まで出てくる、起きてるの無理 激烈な不味さ、喉を消毒するのが目的だから飲みやすくしたら意味がないものなのか こんな物を飲まなきゃならない患者がこの病院には私以外にもいっぱい居るのだろね、 小児病棟にも居るだろうかいくら治療でも子供にこんな物飲ませたくない。 次のルゴールは私の赤ちゃん達が将来飲むかもしれない分を代わりに飲んでやると思えば いけるかもしれない・・・・・もしくは捨てるか・・・・捨てるかな・・・・ ぐったりしてるとこに息子が見舞いに来てくれる。 傷とか血とかはまったく平気な息子、管人間となってぐったりしている私を見ても 普段と同じトーンで話かけてくる 「 暇つぶし持ってきたよ」 ノートPC充電してゲームが出来るようにしてくれた。 上げ膳据え膳の病院でベットでゲーム、ルゴールさえ居なければ天国 しかしこの時はまだ後3日で退院できると信じていた私、退院の日は皆仕事だから1人で 帰らなければならない、荷物が増えるのは嫌 も~~~~~のすごく迷うが持って帰って貰う事にする。 息子 「 退院しても暫く寝てなきゃいけないだろうからその時遊べば良いね、俺昨日ママーンが改造手術してる頃スロが大爆発でさ、今月もかなり勝ってるから退院祝い期待して良いよ。」 息子よ有難う、言いたい事はいっぱいあるがとりあえず有難う すぐ退院だからもう見舞いには来なくて良いと言って、帰ってもらう。 息子も娘も私が入院したぐらいでは困ることも無い様子、家のことは心配いらないな。 だとしたら、管が抜けてルゴールと会わずに済めばここは快適だ 気分が良くなって、ベットを起こして編み物出す。 窓際の場所だから明るくて照明は要らない ずっと水だけでなにも食べていないのになぜか空腹は辛くない、点滴のおかげかな 付け襟はすぐに完成してしまい、次の暇つぶしグッツを出すべきか悩んでいると、 看護婦さん達がぞろぞろとやってきて、夜勤と交代します夜勤の〇〇ですと挨拶 看護婦さんって正看とか準看とかいるはずだけど、この病院は名札がすべて看護部となっていて 誰が婦長なのかも分からない。 昔お産で入院した病院では担当の看護婦さん以外に質問や頼みごとをすると、 担当さんがやたら機嫌を悪くしたけど、ここはそれも無い。 看護婦さん達がいつも声を掛け合って、担当が忙しければ違う人が来てくれる。良い感じ 夜になり静かになると他の病室から声が聞こえて来る 年配の女性の声で抑揚なくお経みたいに唸る声、歌っているようにも聞こえる。 それに合わせて、めいちゃんごめんね~~~と連呼する男性の声が聞こえる。 お経の唸りが止まると、めいちゃんへの謝罪も止まる。 お経が聞こえて来るとまためいちゃんごめんね~~~~ めいちゃんにどんだけ悪さしたのか知らないが、あのお経はめいちゃんじゃねぇよと誰か 教えてやったらどうなのか・・・・・ 消灯時間が近づいた頃、夜のルゴールが運ばれて来る。 夜勤の看護婦さんも申し訳なさそうに私にルゴールを手渡して、今度は少し水で薄めてくれる。 先に水も用意してくれてそばで見守る看護婦さん・・・捨てたい捨てたい~~ 待て、これを飲むのは自分のためだ、看護婦さんだって辛そうにしてるじゃないか 量が増えたが飲みやすくなったかもしれない、こんな物にビビってたまるか すぐに飲み干してやる、見ていて頂戴私の赤ちゃん達、ルゴールなんかに負けない また一気に喉の奥に抛り込むが、量が増えているので半分しか飲み込めず、 残りが口内に広がる ブハァー・・・コントみたいに吐き出してしまう、同時に吐き気オエ~ これまともに飲むの無理、なさけないけどルゴールに完敗 その夜は口内に広がったルゴールの味が消えず、いつまでもムカムカ吐き気がする、 2時間おきに看護婦さんが体温と血圧を測りに来るのでそれも気になって眠れない。 明日からルゴールとどう戦ったら良いのか、これほどの強敵がかつて居ただろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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