「歌謡曲の時代」(阿久悠 著)
作詞家・阿久悠が、自ら作詞した曲のタイトルを題名にしたエッセー集。 作詞家・阿久悠のヒット作の数々を眺めていると、その時代の空気や時の流れを思い出すことができます。昭和50年代、ヒット曲の多くに阿久悠の名前を目にしていた頃、その存在は作詞家の枠を越え時代の仕掛け人として燦然と輝いていました。 「林檎殺人事件」、「宇宙戦艦ヤマト」、「透明人間」、「もしもピアノが弾けたなら」・・・小~中学生の頃の私にとって、詞のユニークさや、詞のジャンルの幅広さは魅力的でした。阿久悠作詞のヒット曲の数々が存在しなかったとしたら、その時代は淡泊な、とてもつまらないものになっていたのではないかとすら思えます。 さて、この本では、阿久悠が自分の作品タイトルと向き合って、時に作詞の想い出に、時に「今」という時代に言及しています。作品の解説とも言えるエッセイもあり、魅力たっぷりの本です。 この本に限らず、阿久悠の考え方に唯一の不満を挙げれば、平成以降の「歌謡曲が衰退した時代」をやや否定的に捉えていることです。時代は変化していますが、その良さや魅力(の可能性)が尽きることはないと思うからです。***********************************************************「歌謡曲の時代」 (新潮文庫) 著者 阿久悠 発行所 株式会社新潮社 定価 本体476円+税***********************************************************