テーマ:謎を解く(185)
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37:ゴーダの話
パガニーニの話を聞きたいのはあんたかい。そう、ウィーンに来た時の大フィーバーは歴史に残るね。わしの友達だったギャリックの話をしようかね。こいつはわしと同じ、ウィーンで馬車を走らせていたんだ。ホテル前で客を乗せたら、演奏会場まで行けって言うので、普通なら日本円で二千円もあれば行くのを十万円だって吹っ掛けたんだ。客がそんな無茶な値段があるかと言ったら、野郎すまして、 「旦那、パガニーニを聞きに行くんでしょう。あっしだって機会があれば一度聞いてみたいと思うんですよ。場所の代金がその入場料と同じなら、旦那を会場まで送って、あっしもそのまま客席に入れるってもんだ。」 高い入場料なのに、ホテルから会場まで馬車を利用する、相当金持ちの客と踏んだんだね。客だって黙っていない。 「しかしね、パガニーニは弦一本だけで演奏するそうだよ。君の馬車は片方の車輪だけで走ってくれるのかい。」 「その噂が本当かどうか見たいんでさ。そんな妙技を見たら、あっしだって帰りには片方の車輪に挑戦しまっさ。」 この客面白がって、言い値で乗ると言ったからびっくりするじゃないか。金を持って会場に行ったところでもう切符は売り切れだ。この客、会場に着くと、ついでだからと切符を一枚恵んだから、ギャリックは大喜びさ。 ところが入ってから大騒ぎを起こした。貴族ばかりが陣取った一等席に汚い御者が入り込んでいるじゃないか。切符は持っているが盗んだ物に違いないというので警備の者が取り押さえた。ところが、切符を譲ったという申し出があってこの御者は許されたんだ。 さあ、演奏が始まる。ギャリックはパガニーニが登場して演奏が始まった途端に奇声を上げた。演奏が進むと気も狂わんばかりに喚き立てて回りから顰蹙を買ったがお構いなしだ。 なぜそんなに興奮したと思う。さっき馬車に乗せた客がパガニーニ本人だったのさ。 翌日、ギャリックはパガニーニに挨拶に行き、「パガニーニ御用達の辻馬車」という看板を付けさせてくれと願い出た。お礼は昨日の馬車代全額……ギャリックも奮発したね。パガニーニは面白がって許してしまった。直筆の許可書をもらったんだ。 これから数ヶ月、この馬車はウィーン中の話題になり、予約なしでは乗れなくなった。日に十人も載せれば上々だったのに、一時間に数組、それも飛び切りの高値で商売になる。半年後にはその儲けでパガニーニが泊まったホテルを買い取って「パガニーニ御用達ホテル」と改名した。これも普通の数倍の値段で、数ヶ月先まで予約が一杯ということになった。 ところがね、パガニーニの演奏会をやると宣伝して、実際には他の奴がパガニーニの曲を演奏する……って、誰も弾けるわけがないんだ。そんな訳であっという間に人気は消えて行った。三ヶ月目にはキャンセルが出始めて、半年を待たずに潰れてしまったよ。 馬鹿のギャリックは元の御者に逆戻りという、馬鹿馬鹿しい一席で失礼するよ。 ※ ※ ※ クーラウ:ラ・カンパネラ ピアノ独奏のための編曲。リストが技巧を駆使したのに対して、こちらはピアノに移しただけの印象だが、ピアノの練習曲を多く書いている人らしい雰囲気を持っている。 演奏者不明。昔録音したもの。 グロリュー:ラ・カンパネラ 「珠玉の名曲集」に収録されている。リストの作品をバロック期のスカルラッティが編曲したもの。グロリューといえば、ビートルズをクラシックの大作曲家がピアノにアレンジした作品集で一躍人気になった。来日した折には日本のメロディを演奏しレコードも出た。アンコールでは都はるみの「北の宿」をショパンがアレンジしたもの、「待ちぼうけ」をモーツァルトからバルトークまでのメドレーで聞かせた。この録音も震災で吹っ飛んだ。残念。 ゴーテ:Paganini カレル・ゴーテの歌うバラード。ヴァイオリンのオブリガードがつく。 サイ:パガニーニの主題によるジャズ・ヴァリエーション 奇想曲第24番によるピアノ独奏曲。タイトル通り。イントロがあって主題からジャズって行く。最近人気の曲でジャズ・ピアニストがよく取り上げている。 作曲者の自作自演で所有。 ザブソン:Paganini ラップ? 何これという音楽で、パガニーニのヴァイオリンがちょろちょろと登場するのが何ともおかしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.03.08 06:54:49
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